[P-MT-03-5] 腰椎変性後弯症に対する運動効果
―3か月間の外来理学療法と自主運動の併用プログラムで何が変化するのか―
キーワード:脊柱後弯, 運動療法, 筋輝度
【はじめに,目的】
脊柱の後弯化は加齢と共に進行し,歩行能力やバランス能力を低下させる要因とされている。脊柱後弯変形は,高齢者の7割近くに認められるとされ,治療期間が長期化するケースも少なくない。深刻化するわが国の高齢化は,医学的治療の長期化を招き,医療費の高騰と診療報酬低下の一要因となっている。脊柱後弯に対する治療は運動療法が中心であり,腰背部筋の強化によりアライメントの是正や可動域が向上すると報告されている。しかし,いずれの報告も1年以上の長期介入であり,診療報酬の枠組みである150日以内に効果が得られるプログラム作成が必要であると考える。
本研究では腰椎変性後弯症と診断された1症例に対して,3か月間の運動療法と自主運動併用プログラムを実施し,長距離歩行距離の大幅な改善が得られたため,ここに報告する。
【方法】
症例は,腰椎変性後弯症と診断された高齢女性である。介入内容は運動療法と自主運動の併用プログラムとし,介入期間は3か月とした。介入効果を検証するために,介入前後で各種評価を行った。評価項目は疼痛レベル,体幹伸展・屈曲筋力,股関節屈曲・伸展・外転筋力,体幹伸展保持時間,6分間歩行距離,片脚立位時間,Timed Up and Go test(以下,TUG),10m努力歩行とした。その他,超音波エコー(以下,エコー)による筋厚・筋輝度測定と全脊柱CT撮影によるアライメント評価,日本整形外科学会腰痛疾患質問票(以下,JOABPEQ)とSF-36による主観的評価を実施した。
【結果】
3か月間の介入において,体調に大きな変化はなく,疼痛は6から4に軽減した。改善した項目では,体幹伸展保持時間が15秒から35秒となり,6分間歩行距離は200mから435mへと大きな変化を示した。エコー所見では,多裂筋の筋厚が右1.75cm,左1.89cmから右2.45cm,左2.28cmに増大した。また,多裂筋の筋輝度は右56.3pixel,左55.4pixelから右56.7pixel,左50.0pixelとなった。一方,筋力や片脚立位,腰椎の可動性,JOABPEQ,SF-36,10m努力歩行はほぼ不変であった。
【結論】
本症例は,3か月間の外来理学療法と自主運動併用プログラムにより,連続歩行距離が大きく向上した。距離延長の要因としては,疼痛の軽減,体幹伸展筋持久力の向上などが挙げられる。さらに,エコー所見からも,多裂筋の筋厚増加と脂肪変性の改善が得られた。本プログラムでは,多裂筋の低強度の収縮と弛緩を繰り返し,筋内循環の改善を図った。このことから,3か月間の運動療法と自主運動併用プログラムにより,筋の質的変化に基づく持久性向上が得られることが示唆された。一方,QOLには改善効果が認められなかった。これらの主観的評価では,満足度に対する医療者側と患者側に隔たりが生じると報告されているが,患者満足度は治療効果における重要なアウトカムと考えられる。そのため,今後は患者満足度を向上できるプログラムを作成していきたい。
脊柱の後弯化は加齢と共に進行し,歩行能力やバランス能力を低下させる要因とされている。脊柱後弯変形は,高齢者の7割近くに認められるとされ,治療期間が長期化するケースも少なくない。深刻化するわが国の高齢化は,医学的治療の長期化を招き,医療費の高騰と診療報酬低下の一要因となっている。脊柱後弯に対する治療は運動療法が中心であり,腰背部筋の強化によりアライメントの是正や可動域が向上すると報告されている。しかし,いずれの報告も1年以上の長期介入であり,診療報酬の枠組みである150日以内に効果が得られるプログラム作成が必要であると考える。
本研究では腰椎変性後弯症と診断された1症例に対して,3か月間の運動療法と自主運動併用プログラムを実施し,長距離歩行距離の大幅な改善が得られたため,ここに報告する。
【方法】
症例は,腰椎変性後弯症と診断された高齢女性である。介入内容は運動療法と自主運動の併用プログラムとし,介入期間は3か月とした。介入効果を検証するために,介入前後で各種評価を行った。評価項目は疼痛レベル,体幹伸展・屈曲筋力,股関節屈曲・伸展・外転筋力,体幹伸展保持時間,6分間歩行距離,片脚立位時間,Timed Up and Go test(以下,TUG),10m努力歩行とした。その他,超音波エコー(以下,エコー)による筋厚・筋輝度測定と全脊柱CT撮影によるアライメント評価,日本整形外科学会腰痛疾患質問票(以下,JOABPEQ)とSF-36による主観的評価を実施した。
【結果】
3か月間の介入において,体調に大きな変化はなく,疼痛は6から4に軽減した。改善した項目では,体幹伸展保持時間が15秒から35秒となり,6分間歩行距離は200mから435mへと大きな変化を示した。エコー所見では,多裂筋の筋厚が右1.75cm,左1.89cmから右2.45cm,左2.28cmに増大した。また,多裂筋の筋輝度は右56.3pixel,左55.4pixelから右56.7pixel,左50.0pixelとなった。一方,筋力や片脚立位,腰椎の可動性,JOABPEQ,SF-36,10m努力歩行はほぼ不変であった。
【結論】
本症例は,3か月間の外来理学療法と自主運動併用プログラムにより,連続歩行距離が大きく向上した。距離延長の要因としては,疼痛の軽減,体幹伸展筋持久力の向上などが挙げられる。さらに,エコー所見からも,多裂筋の筋厚増加と脂肪変性の改善が得られた。本プログラムでは,多裂筋の低強度の収縮と弛緩を繰り返し,筋内循環の改善を図った。このことから,3か月間の運動療法と自主運動併用プログラムにより,筋の質的変化に基づく持久性向上が得られることが示唆された。一方,QOLには改善効果が認められなかった。これらの主観的評価では,満足度に対する医療者側と患者側に隔たりが生じると報告されているが,患者満足度は治療効果における重要なアウトカムと考えられる。そのため,今後は患者満足度を向上できるプログラムを作成していきたい。