第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P09

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-09-2] 股関節骨切り術の既往が末期変形性股関節症患者の身体機能に及ぼす影響

高木優衣1, 加古誠人1, 鈴木謙太郎1, 鄭伃廷1, 佐藤克成1, 佐藤幸治1, 門野泉2,3, 長谷川幸治4 (1.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科, 3.名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学, 4.名古屋大学大学院医学系研究科下肢関節再建学)

Keywords:変形性股関節症, 股関節骨切り術, 身体機能

【はじめに,目的】

変形性股関節症(以下,股OA)患者の外科的治療は,主として骨切り術などの関節温存手術と人工関節置換術(以下,THA)が挙げられる。骨切り術は関節裂隙狭小化や骨頭変形が進んでいない初期股OA患者に適応され良好な成績を挙げている。しかし,骨切り術後にOAが進行し,数年後にTHAを施行される患者を経験することも多い。骨切り術後の身体機能について,術後1年間における筋力回復率など短期における報告は多く認められるが,長期的にみた身体機能についての報告は認められない。本研究は,骨切り術の既往がある末期股OA患者を対象とし,身体機能面での特徴を検討することを目的とした。

【方法】

対象は2014年4月から2015年9月においてTHA目的で当院に入院した患者47名のうち,大腿骨頭壊死3名,再置換術予定4名を除く40名(年齢64.4±12.7歳,身長153.8±10.4cm,体重64.4±12.7kg)とした。対象者を骨切り術の既往の有無で,骨切り群11名(骨切り後人工関節置換術まで22.3±10.1年),初回手術群29名の2群に分類した。身体機能に関する測定項目は手術前の疼痛,下肢関節可動域(以下,ROM),下肢筋力,歩行速度とした。疼痛は,最大の疼痛をVisual Analog Scale(以下,VAS)で評価した。下肢関節ROMは,術側股関節屈曲,伸展,内転,外転,内旋,外旋ROM,膝関節屈曲,伸展ROM,足関節底屈,背屈ROMを測定した。下肢筋力は,ハンドヘルドダイナモメーターμ-tas(アニマ社製)を使用し,術側の等尺性股関節外転筋力,伸展筋力,膝関節伸展筋力を測定した。各筋力は2回測定したうちの最大値を使用し,トルクを算出し体重で除した値を使用した。歩行速度は快適速度での10m歩行テストを2回実施し,その最大値を使用し算出した。統計には,Wilcoxonの符号付順位和検定を使用し,各測定項目について2群間で比較した。なお,有意水準は5%とした。

【結果】

骨切り群11名,初回手術群29名の身体組成に2群間での有意差は認められなかった。初回手術群と比較し,骨切り群は,股関節屈曲ROMが18.9°(p<0.05),股関節伸展ROMが7.24°(p<0.05),股関節内旋ROMが13.7°(p<0.01),それぞれ有意に低値を示した。その他のROM,最大疼痛,下肢筋力,歩行速度には両群間の差は認められなかった。

【結論】

本研究は,末期股OA患者における骨切り術の既往の有無が身体機能に及ぼす影響について検討した。骨切り術の既往がある患者は,既往がない患者と比較し,股関節屈曲,伸展,内旋ROMが有意に低値を示した。しかし,疼痛,下肢筋力,歩行速度には差が認められなかった。本研究結果より,骨切り術は,疼痛,下肢筋力,歩行速度において,長期的予後が良好であることが明らかになった。また,骨切り術の既往がある末期股OA患者は,より著明なROM制限が生じることが明らかになり,長期的なリハビリテーションにおいて可動域獲得の必要性が示唆された。