第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P09

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-09-5] 線維筋痛症の体性感覚と認知的側面について

薦田昭宏, 橋本聡子, 窪内郁恵, 黒田祐子 (だいいちリハビリテーション病院)

キーワード:線維筋痛症, 2点識別覚, Neglect-like symptoms

【はじめに,目的】

Neglect-like symptoms(NLS)は,痛みに伴い自肢がどうなっているのかわからない,自肢を動かすのに過剰な努力を要する状態であり,身体の一部から欠落している感覚である。先行文献では,痛みの強さと相関ならびに知覚能力の低下と関連があるといわれている。そこで今回,線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)例の体性感覚とNLSとの関連について検討したので報告する。

【方法】

対象は,当院外来通院可能なFM例で足部に痛みおよび不快感を呈する10例,全例整形外科的・神経学的問題がなく歩行自立レベルである。平均年齢50.3±17.8歳,線維筋痛症活動性評価票Fibromyalgia activity scale 31(FAS31),平均20±6.5点である。また体性感覚は健常者24例をコントロール群として比較検討した。なお年齢ならびに身体組成においては両群間に有意差はなかった。方法は,体性感覚評価では足底部の二点識別覚距離(Two-points discrimination test:2PD)を測定した。ノギス使用にて踵・母趾球・小趾球をup-down法にて測定した。なおFM群は全例,症状が両側であるため両側評価,コントロール群は片脚起立困難側を評価した。痛み評価は,Numerical Rating Scale(NRS),広範囲疼痛指数(wide-spread pain:WPI),神経障害性疼痛重症度評価ツール(Neuropathic Pain Symtpom Inventory:NPSI)を用いた。情動的評価として痛みの破局的思考(Pain catastrophizing scale:PCS),不安・抑うつ(Hospital Anxiety and Depression scale:HADS)を評価した。認知的評価としてNLSを評価した。統計処理は,群間比較をt検定,2PDと各因子の関係をSpearmanの順位相関係数を用い有意水準5%未満とした。

【結果】

2PDでは,踵,母趾球,小趾球ともにFM群に有意な距離の増大を認めた。2PDとNRS,WPI,NPSI(総得点),PCSならびにHADSでは,相関は認めなかったがNPSIの下位項目の誘発痛では強い相関(r=0.73)を認めた。2PDとNLS(総得点)では,母趾球で中等度の相関(r=0.48)を認めた。

【結論】

痛みが慢性化すると末梢の原因よりも,脳の機能不全が強くなると言われている。FM群では,患肢の不使用による感覚入力や運動入力が減少,それに伴う脳内体部位再現領域の狭小化が2PDの増大に繋がったと考える。また2PD,NPSI,NLSとの関係では,複数の身体部位を統合する頭頂葉の機能不全にて,身体所有感や運動主体感などの欠如に至ったと考える。ヒトが運動を行うとき知覚―運動協応が重要であり,身体認知能力の向上を図るリハビリテーションの提供が必要と考える。