第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P09

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-09-4] スポーツ中に生じた坐骨結節剥離骨折に対し手術療法を行った一症例

湯本翔平1, 中島彩1, 高橋佑介1, 中川智之2, 恩田啓1,2, 木村雅史2, 立石智彦3 (1.医療法人社団善衆会善衆会病院リハビリテーション部, 2.医療法人社団善衆会善衆会病院整形外科, 3.社会福祉法人同愛記念病院財団同愛記念病院整形外科)

Keywords:ハムストリングス, 骨折, 骨盤

【はじめに,目的】

坐骨結節剥離骨折は成長期のスポーツ選手にしばしば認められる。受傷メカニズムは,骨端線閉鎖前の脆弱な骨に対し,スポーツ動作等で強力な筋収縮が生じることで受傷に至るとされている。坐骨神経症状のあるものや骨片の転位が大きいものは手術適応であるとされているが,その報告は非常に少ない。今回,スポーツ中に坐骨結節剥離骨折を受傷し手術療法を行った症例に対し,スポーツ復帰を目指して術後介入を行い,良好な結果が得られたので報告する。


【方法】

症例は15歳男性。サッカーの試合中,ボールをトラップしようと股関節屈曲,膝関節伸展位となった際,殿部から大腿後面に疼痛が出現し,プレー困難となった。他院での単純X線像,CT所見にて,骨折部の転位が大きく当院紹介となった。術前評価ではジョギング,股関節内旋時に殿部から大腿後面に疼痛を訴え,SLRは110度/60度であった。受傷後6週にて,観血的骨接合術を行った。手術は腹臥位にて坐骨結節から長軸に10cm切開,大殿筋を下縁から持ち上げ,腹側へ落ち込んでいた骨片を確認した。骨片はcannulated cancellous screw3本で固定した。術後3週はシーネによる膝関節45度屈曲位固定を行い,それ以降シーネを外しROM開始となった。術後5週より1/2荷重,ハムストリングスのストレッチを開始し,術後6週で全荷重となった。術後9週のCTにて骨癒合を認めたためジョギング開始となり,術後13週で競技復帰に至った。


【結果】

術後3週での評価にて股関節屈曲85度/120度,内旋15度/30度と左右差を認め,最終域では坐骨結節に疼痛が出現した。MMTでは大殿筋,ハムストリングス共に3レベルであった。競技復帰時の評価では股関節にROM制限はなく,最終域での疼痛も消失した。SLRは80度/60度で,ジョギングや競技動作での疼痛はなかった。MMTでは大殿筋,ハムストリングス共に4レベルと改善がみられ,CYBEXを用いた膝屈曲等速性筋力(角速度60度/秒)では健患比68%と術前の48%と比較し改善を認めた。


【結論】

術中所見にて骨片が腹側へ転位していたことは,ハムストリングスの中でも腹側に付着部を持つ半膜様筋が骨片へ伸張ストレスを加えていたことを推察させた。そのため術後の介入においては殿筋群や内旋筋へのトレーニングを行い,筋の不均衡改善を図った。更にスクワットやジャンプなど,瞬発的なハムストリングスの伸張が生じるトレーニングを段階的に進めた。筋の不均衡に対する介入と骨癒合に応じて段階的にハムストリングスへの伸張ストレスを高めていったことにより円滑な競技復帰が可能になったものと考える。坐骨結節剥離骨折に対する手術療法及び,術後リハビリテーションに関しての報告は稀であるが,手術療法に併せ,坐骨結節への伸張ストレス軽減を踏まえたリハビリテーション介入により良好な成績を得られる可能性がある。