[P-MT-14-4] 歩行時の動揺は腰椎骨密度に影響を与える
変形性股関節症患者での検討
キーワード:骨粗鬆症, 骨密度, 歩行動揺性
【はじめに】
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版では,運動介入により,骨密度の上昇(グレードA)と骨折の抑制(グレードB)に繋がるとされており,特に衝撃荷重運動や抵抗荷重運動が有効とされている。先行研究では,歩行運動を継続している中年および高齢女性では,継続していない女性に比べ腰椎および大腿骨の骨密度が有意に高値を示すと報告している(Ikeda, 2012)。このように,骨密度と身体活動量および歩行との関連を示した報告は散見されるが,歩行時の動揺との関連を調査した報告は少ない。そこで本研究では,歩行時の動揺と骨密度との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
変形性股関節症に対し人工股関節全置換術を施行予定で入院となった女性14例(年齢:67.1±11.5歳,T-score:-0.78±1.54)を対象とした。骨密度測定にはDual Energy X-ray Absorption(DEXA)を用い,第2-4腰椎骨密度の平均値を使用した。また,MicroStone社製3軸加速度計を使用し歩行分析を行った。サンプリング周波数は200Hzで,加速度センサーは第3腰椎棘突起部付近に接するように装着した。得られた加速度データから10歩行周期を無作為に選択し,歩行動揺性の指標であるRoot Mean Square(RMS)を算出した。RMSについては左右・前後・鉛直方向(以下RMSx,RMSy,RMSz)をそれぞれ算出した。RMSは歩行速度の影響を受けるため,歩行速度の2乗値で除すことで調整した。また,求めたRMSから合成RMS(RMSt)とRoot Mean Square ratio(RMSR)を求めた。統計処理では,各項目の関係を確認するためSpermannの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした(SPSS version 22.0)。
【結果】
骨密度はRMSx(r=0.644,p<0.05),RMSy(r=0.560,p<0.05),RMSz(r=0.684,p<0.01),RMSt(r=0.688,p<0.01)と有意な正の相関を示した。しかし,年齢やBMI,RMSRとの相関は認められなかった。
【結論】
骨細胞は重力やメカノセンサーとして働き,力学的刺激を化学的反応に変換して骨量調整に重要な働きをしていると推測されている。そのため適度なメカニカルストレスは骨密度を増加させる。一方,ヒトの正常歩行は動力の一部に位置エネルギーを利用するため,重心移動は必要不可欠である。そのため,腰椎にもメカニカルストレスが加わり,骨密度の増加に繋がることが考えられる。閉経後女性の腰椎骨密度は衝撃荷重運動により1.6%,衝撃非荷重運動でも1.0%上昇するとされている(Wallace BA, 2000)。さらに,腰椎骨密度はエアロビクスと抵抗荷重運動により1.79%,歩行で1.31%上昇するとされている(Bonaiuti D, 2002)。本研究により,歩行時の動揺が大きいほど骨密度の上昇に繋がり,特に鉛直方向の動揺が重要であることが示唆された。このことから,骨粗鬆症に対する理学療法は運動指導のみでなく,歩容への評価・介入も有効である可能性が考えられる。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版では,運動介入により,骨密度の上昇(グレードA)と骨折の抑制(グレードB)に繋がるとされており,特に衝撃荷重運動や抵抗荷重運動が有効とされている。先行研究では,歩行運動を継続している中年および高齢女性では,継続していない女性に比べ腰椎および大腿骨の骨密度が有意に高値を示すと報告している(Ikeda, 2012)。このように,骨密度と身体活動量および歩行との関連を示した報告は散見されるが,歩行時の動揺との関連を調査した報告は少ない。そこで本研究では,歩行時の動揺と骨密度との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
変形性股関節症に対し人工股関節全置換術を施行予定で入院となった女性14例(年齢:67.1±11.5歳,T-score:-0.78±1.54)を対象とした。骨密度測定にはDual Energy X-ray Absorption(DEXA)を用い,第2-4腰椎骨密度の平均値を使用した。また,MicroStone社製3軸加速度計を使用し歩行分析を行った。サンプリング周波数は200Hzで,加速度センサーは第3腰椎棘突起部付近に接するように装着した。得られた加速度データから10歩行周期を無作為に選択し,歩行動揺性の指標であるRoot Mean Square(RMS)を算出した。RMSについては左右・前後・鉛直方向(以下RMSx,RMSy,RMSz)をそれぞれ算出した。RMSは歩行速度の影響を受けるため,歩行速度の2乗値で除すことで調整した。また,求めたRMSから合成RMS(RMSt)とRoot Mean Square ratio(RMSR)を求めた。統計処理では,各項目の関係を確認するためSpermannの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした(SPSS version 22.0)。
【結果】
骨密度はRMSx(r=0.644,p<0.05),RMSy(r=0.560,p<0.05),RMSz(r=0.684,p<0.01),RMSt(r=0.688,p<0.01)と有意な正の相関を示した。しかし,年齢やBMI,RMSRとの相関は認められなかった。
【結論】
骨細胞は重力やメカノセンサーとして働き,力学的刺激を化学的反応に変換して骨量調整に重要な働きをしていると推測されている。そのため適度なメカニカルストレスは骨密度を増加させる。一方,ヒトの正常歩行は動力の一部に位置エネルギーを利用するため,重心移動は必要不可欠である。そのため,腰椎にもメカニカルストレスが加わり,骨密度の増加に繋がることが考えられる。閉経後女性の腰椎骨密度は衝撃荷重運動により1.6%,衝撃非荷重運動でも1.0%上昇するとされている(Wallace BA, 2000)。さらに,腰椎骨密度はエアロビクスと抵抗荷重運動により1.79%,歩行で1.31%上昇するとされている(Bonaiuti D, 2002)。本研究により,歩行時の動揺が大きいほど骨密度の上昇に繋がり,特に鉛直方向の動揺が重要であることが示唆された。このことから,骨粗鬆症に対する理学療法は運動指導のみでなく,歩容への評価・介入も有効である可能性が考えられる。