[P-MT-17-5] メンタルローテーション課題の実施により治療した左肘関節術後の1例
キーワード:メンタルローテーション, 肘関節滑膜ヒダ障害, 関節鏡視下デブリードマン
【はじめに,目的】
術後,症状が改善せず慢性化し,治療に難渋する患者を経験する事がある。今回,肘関節術後に可動域制限及び疼痛が改善せず,肩関節の可動域制限及び疼痛が続発した患者に対して,メンタルローテーション(以下MR)課題の実施による治療を行った1例を報告する。
【方法】
MRについて:身体運動は思い浮かべたイメージを自由に操作する能力が必要であり,MRの能力が関与している。MRはShepardとMetzlerによって提唱され,基本図形を回転させた図形から,基本図形をイメージする心的活動の事であり,Moseleyらにより臨床応用された。症例:45歳女性。現病歴:平成25年2月,左肘関節滑膜ヒダ障害に対し関節鏡視下デブリードマンを施行後,可動域制限及び肘関節痛が残存し,ヒアルロン酸の関節内注射及び理学療法を行うも症状は軽減せず,左肩関節の可動域制限と動作時痛が続発した。平成26年7月,心療内科的治療を目的に当院を紹介され,治療を行ったが症状が持続したため,平成27年7月,MR課題の実施による治療を開始した。既往歴:平成15年9月,原因不明の右足部の腫脹と疼痛が出現し,以後,右足部の随意運動困難となり,当院にて転換性障害の診断を受けた。MR課題:左右手部,左右手部と前腕,左右上肢全体の前後の写真を時計回りに90°毎に回転させた写真を144枚用意し,それぞれ左右どちらの部位かを解答する。治療内容:B-A-Bデザインを用い,各期間を4週間に設定した。B期は理学療法とMR課題を自宅で毎日15分間実施し,A期は理学療法のみを実施した。来院は4週間毎とし,来院時を除き理学療法は他院で実施した。部位と運動方向は①左肘関節屈曲,②左肩関節屈曲,③左肩関節外転とし,自動関節可動域(以下ROM)と運動時痛の指標としてNumerical Rating Scale(以下NRS)を測定した。
【結果】
①左肘関節屈曲:ROM;治療前95°→B1期125°→A期100°→B2期125°,NRS;治療前8→B1期7→A期9→B2期6,②左肩関節屈曲:ROM;治療前105°→B1期115°→A期85°→B2期120°,NRS;治療前5→B1期7→A期8→B2期8,③左肩関節外転:ROM;治療前70°→B1期65°→A期50°→B2期70°,NRS;治療前8→B1期8→A期9→B2期9であった。
【結論】
肘関節術後に可動域制限及び疼痛が慢性化し,肩関節の可動域制限及び疼痛が続発した患者に対して,MR課題の実施による治療を行い,左肘関節屈曲及び左肩関節屈曲のROMが改善した。MR課題は,仮想的に身体運動を生成し,身体像のイメージが変換されると考えられており,運動を行わなくとも実際の運動と類似した脳内処理過程を得る事ができると考えられている。今回の症例は,器質的病因に加えて内的病因の関与が大きいと推察されたため,MR課題の実施による治療により症状は改善したと考えた。
術後,症状が改善せず慢性化し,治療に難渋する患者を経験する事がある。今回,肘関節術後に可動域制限及び疼痛が改善せず,肩関節の可動域制限及び疼痛が続発した患者に対して,メンタルローテーション(以下MR)課題の実施による治療を行った1例を報告する。
【方法】
MRについて:身体運動は思い浮かべたイメージを自由に操作する能力が必要であり,MRの能力が関与している。MRはShepardとMetzlerによって提唱され,基本図形を回転させた図形から,基本図形をイメージする心的活動の事であり,Moseleyらにより臨床応用された。症例:45歳女性。現病歴:平成25年2月,左肘関節滑膜ヒダ障害に対し関節鏡視下デブリードマンを施行後,可動域制限及び肘関節痛が残存し,ヒアルロン酸の関節内注射及び理学療法を行うも症状は軽減せず,左肩関節の可動域制限と動作時痛が続発した。平成26年7月,心療内科的治療を目的に当院を紹介され,治療を行ったが症状が持続したため,平成27年7月,MR課題の実施による治療を開始した。既往歴:平成15年9月,原因不明の右足部の腫脹と疼痛が出現し,以後,右足部の随意運動困難となり,当院にて転換性障害の診断を受けた。MR課題:左右手部,左右手部と前腕,左右上肢全体の前後の写真を時計回りに90°毎に回転させた写真を144枚用意し,それぞれ左右どちらの部位かを解答する。治療内容:B-A-Bデザインを用い,各期間を4週間に設定した。B期は理学療法とMR課題を自宅で毎日15分間実施し,A期は理学療法のみを実施した。来院は4週間毎とし,来院時を除き理学療法は他院で実施した。部位と運動方向は①左肘関節屈曲,②左肩関節屈曲,③左肩関節外転とし,自動関節可動域(以下ROM)と運動時痛の指標としてNumerical Rating Scale(以下NRS)を測定した。
【結果】
①左肘関節屈曲:ROM;治療前95°→B1期125°→A期100°→B2期125°,NRS;治療前8→B1期7→A期9→B2期6,②左肩関節屈曲:ROM;治療前105°→B1期115°→A期85°→B2期120°,NRS;治療前5→B1期7→A期8→B2期8,③左肩関節外転:ROM;治療前70°→B1期65°→A期50°→B2期70°,NRS;治療前8→B1期8→A期9→B2期9であった。
【結論】
肘関節術後に可動域制限及び疼痛が慢性化し,肩関節の可動域制限及び疼痛が続発した患者に対して,MR課題の実施による治療を行い,左肘関節屈曲及び左肩関節屈曲のROMが改善した。MR課題は,仮想的に身体運動を生成し,身体像のイメージが変換されると考えられており,運動を行わなくとも実際の運動と類似した脳内処理過程を得る事ができると考えられている。今回の症例は,器質的病因に加えて内的病因の関与が大きいと推察されたため,MR課題の実施による治療により症状は改善したと考えた。