[P-MT-18-5] 腰椎変性辷り症術後患者の歩行動態
Keywords:腰椎変性すべり症, 腰部脊柱管狭窄症, 歩行分析
【はじめに,目的】
腰部脊柱管狭窄症(LSS)は椎間板や椎間関節変性,黄色靭帯肥厚,変性すべり症(DS)等の加齢変性や歪みの組み合わせにより脊柱管や椎間孔が狭窄し,馬尾や腰椎神経根が圧迫される疾患である。本疾患は姿勢により神経症状が変化し,神経性間歇跛行を主症状とする。保存療法で改善の得られない症例では除圧術やDS合併時には脊椎固定術等の観血的治療が必要となる。DSの術後長期例には隣接椎間障害が生じ,非固定椎間でDSを呈することがある。また術後成績は身体機能や歩行に関連し,定量的な歩行分析が治療アウトカムになることも報告されているが,LSS患者の術後の歩容変化について,DSの有無による違いを明らかにした報告はない。よって本研究の目的はLSS患者の歩行を分析し,DSの有無による術後変化の違いを明らかにすることとした。
【方法】
対象は手術適応と診断された高齢LSS患者142名(DS有り群(DS群);77名,DS無し群(LS群);65名)とした。独歩困難,下肢麻痺,脊椎/下肢骨折手術既往歴例は除外対象とした。対象者の身体に反射マーカを43箇所に貼付し間欠性跛行出現前の歩行を術前と術後3週に3次元動作解析装置(VICON MX)を用いて記録した。計測データのサンプリング周波数は100Hzとした。得られたデータから,歩行速度,歩幅,左右立脚期の体幹前傾最大角度,骨盤前傾および回旋最大角度,股関節最大屈曲/伸展角度を求め,2試行の平均値を解析に用いた。統計解析はDSの有無(疾患;DS群/LS群)と治療前後(期間;術前/術後)における歩行動態の違いを明らかにするため線形混合モデル二元配置分散分析を用いて比較した(p<.05)。
【結果】
歩幅と歩行速度は有意な交互作用を認めなかったが,期間に主効果を認めた。骨盤前傾/回旋,股関節屈曲角度/モーメントは有意な交互作用,主効果ともに認められなかった。体幹前傾角度は有意な交互作用,期間の主効果を認めた。股関節伸展角度は有意な交互作用を認めなかったが,期間と疾患に主効果を認めた。股関節伸展モーメントは有意な交互作用と,二要因に主効果を認めた。
【結論】
LSS患者の歩行は健常者と比較し体幹前傾の増大や歩幅,歩行速度,股関節伸展角度の低下が報告されている。それらの項目は期間に主効果を示し,術後に有意に改善したことから治療アウトカムとして用いることが可能だと考えられる。股関節伸展運動は腰椎前弯を増大させるため脊柱管狭搾は助長される。除圧術による狭搾改善により股関節伸展角度が改善され,歩幅や歩行速度が改善したと考えられる。またLS群に比べDS群は股関節伸展とともに体幹前傾角度も改善し,姿勢が直立化した。この姿勢方略には大腰筋の伸張性増大が必要であることが考えられるため,大腰筋作用が有する椎体前方剪断力の増大は術後DS群の隣接関節障害発症リスクを高める可能性がある。そのため,DS群の術後理学療法には大腰筋の剛性改善に注目する必要があることが示唆された。
腰部脊柱管狭窄症(LSS)は椎間板や椎間関節変性,黄色靭帯肥厚,変性すべり症(DS)等の加齢変性や歪みの組み合わせにより脊柱管や椎間孔が狭窄し,馬尾や腰椎神経根が圧迫される疾患である。本疾患は姿勢により神経症状が変化し,神経性間歇跛行を主症状とする。保存療法で改善の得られない症例では除圧術やDS合併時には脊椎固定術等の観血的治療が必要となる。DSの術後長期例には隣接椎間障害が生じ,非固定椎間でDSを呈することがある。また術後成績は身体機能や歩行に関連し,定量的な歩行分析が治療アウトカムになることも報告されているが,LSS患者の術後の歩容変化について,DSの有無による違いを明らかにした報告はない。よって本研究の目的はLSS患者の歩行を分析し,DSの有無による術後変化の違いを明らかにすることとした。
【方法】
対象は手術適応と診断された高齢LSS患者142名(DS有り群(DS群);77名,DS無し群(LS群);65名)とした。独歩困難,下肢麻痺,脊椎/下肢骨折手術既往歴例は除外対象とした。対象者の身体に反射マーカを43箇所に貼付し間欠性跛行出現前の歩行を術前と術後3週に3次元動作解析装置(VICON MX)を用いて記録した。計測データのサンプリング周波数は100Hzとした。得られたデータから,歩行速度,歩幅,左右立脚期の体幹前傾最大角度,骨盤前傾および回旋最大角度,股関節最大屈曲/伸展角度を求め,2試行の平均値を解析に用いた。統計解析はDSの有無(疾患;DS群/LS群)と治療前後(期間;術前/術後)における歩行動態の違いを明らかにするため線形混合モデル二元配置分散分析を用いて比較した(p<.05)。
【結果】
歩幅と歩行速度は有意な交互作用を認めなかったが,期間に主効果を認めた。骨盤前傾/回旋,股関節屈曲角度/モーメントは有意な交互作用,主効果ともに認められなかった。体幹前傾角度は有意な交互作用,期間の主効果を認めた。股関節伸展角度は有意な交互作用を認めなかったが,期間と疾患に主効果を認めた。股関節伸展モーメントは有意な交互作用と,二要因に主効果を認めた。
【結論】
LSS患者の歩行は健常者と比較し体幹前傾の増大や歩幅,歩行速度,股関節伸展角度の低下が報告されている。それらの項目は期間に主効果を示し,術後に有意に改善したことから治療アウトカムとして用いることが可能だと考えられる。股関節伸展運動は腰椎前弯を増大させるため脊柱管狭搾は助長される。除圧術による狭搾改善により股関節伸展角度が改善され,歩幅や歩行速度が改善したと考えられる。またLS群に比べDS群は股関節伸展とともに体幹前傾角度も改善し,姿勢が直立化した。この姿勢方略には大腰筋の伸張性増大が必要であることが考えられるため,大腰筋作用が有する椎体前方剪断力の増大は術後DS群の隣接関節障害発症リスクを高める可能性がある。そのため,DS群の術後理学療法には大腰筋の剛性改善に注目する必要があることが示唆された。