第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P28

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-28-2] 人工膝関節置換術後の屋内歩行自立時期の違いにより,退院時の歩行能力の検討

山上拓, 倉持右京, 上村洋充 (大阪鉄道病院)

キーワード:人工膝関節, 屋内歩行自立時期, 歩行能力

【はじめに,目的】

近年,人工膝関節全置換術(以下,TKA)後に,早期社会復帰を目指した理学療法が実施されている。当院においても,術後2~3週での退院に向けた介入を目指している。今回,自宅復帰可能である最低限の活動として屋内杖または独歩自立時期の違いにより,退院時の身体機能や在院日数,歩行機能等の特性を検討したので報告する。

【方法】

対象は,平成27年3月~10月までに当院にてTKAを施行した35症例のうち,自立歩行を獲得し,かつ術前と経時的変化,退院時の評価が可能であった29症例(男性12名,女性17名,平均年齢74.9±8.6歳)とした。在院日数は,17.4±3.4日であった。屋内歩行自立度の設定として,各担当の理学療法士が主観的判定を実施した。屋内歩行自立までのリハビリ実施回数を算出,その平均回数を基準とし,平均リハビリ回数未満で屋内歩行自立した群を早期自立群,平均リハビリ回数以上で屋内歩行自立した自立遅延群の2群間に分けた。各2群間の退院時の身体機能と歩行能力を比較した。更に,各群での術前から退院時の身体機能と歩行能力の改善率を比較検討した。評価項目は,在院日数,身体機能として膝関節屈曲・伸展の可動域,歩行能力として10m歩行速度,ケイデンス,Timed Up&Go Test(以下TUG),とした。統計解析はMann-WhitneyU-Test,t検定を用い検討し,有意水準を5%未満とした。

【結果】

早期自立群と自立遅延群の退院時の身体機能と歩行能力の比較では,在院日数,に有意な差を認められなかった。しかし,術前と退院時の歩行能力の改善率では,早期自立群において10m歩行速度144±47%(P<0,01)ケイデンス117±23%(P<0,01)と改善として有意な差が認められた。TUG76±21%(P<0,05)と有意な低下が認められた。自立遅延群においては,術前と退院時の歩行能力の改善率では有意な差は認められなかった。

【結論】

早期自立群と自立遅延群では,屋内自立時期の違いから活動性の変化が起こり,在院日数や退院時の身体機能と歩行能力に影響すると考えたが有意な差は認められなかった。両群ともに,術後一時的に低下し,その後改善率が100%を超え,変動が少なく推移する傾向にあった。そのため,屋内歩行自立時期に差があったとしても,退院までの期間に身体機能や歩行能力では自立遅延群が早期自立群と同様な改善をすることが分かった。

又,術前と退院時の歩行能力の比較では,早期自立群が10m歩行速度,ケイデンスで有意に改善したが,TUGでは有意に低値を示した。自立遅延群では,術前から退院時の改善率の変動が大く,早期自立群では安定して改善したため有意な差が認められたと考えられる。TUGの改善率が低値を示したことでは立ち上がり機能やバランス能力の要素も含まれるため,改善がしなかったと考える。

今回の結果では早期に屋内自立することにより,歩行量の増加から歩行機能の改善に繋がることが示された。今後は在院日数やTUGの影響をリハビリの質において検討していきたい。