[P-MT-29-1] 端座位における靴下着脱動作時の腰椎屈曲角度と各関節可動域の関連
~脊椎固定術術後患者を想定した健常者に対する三次元動作解析装置による分析~
キーワード:靴下着脱動作, 腰椎屈曲角度, 脊椎固定術術後
【はじめに,目的】
当院では,脊椎疾患に対して固定術などの観血的治療を積極的に施行している。脊椎固定術後は体幹の過度な屈曲・伸展・側屈・回旋は禁忌となる。我々は,術後早期から禁忌動作に留意して理学療法を施行しているが,靴下の着脱を自立させるのに難渋する症例を多く経験する。先行研究として,人工股関節全置換術術後の靴下着脱動作に必要な体幹及び股関節可動域の関連性についての報告は散見される。しかし,脊椎術後の禁忌動作を想定した研究報告は少ない。そこで本研究は,端座位での靴下着脱動作が腰椎に与える各関節の影響を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,健常成人37名(男性21名,女性16名,平均年齢(標準偏差):27.4(5.7)歳)の計74脚とした。全対象者に対して,足底接地の端座位で左右ともに靴下着脱動作を施行させた。開始肢位は,昇降台ベッドに浅く腰をかけ,膝関節屈曲90°,下腿が床と垂直になるように調節した。矢状面は肩峰,上前腸骨棘,大転子が垂直になるように設定した。測定には三次元動作解析装置(酒井医療株式会社製,マイオモーション)を用いた。キャリブレーションはモーションセンサーを第7頸椎棘突起,第12胸椎棘突起,仙骨後面,大腿前面,下腿前面に装着し対象者ごとに実施した。なお,対象者には,体幹前屈,骨盤後傾を極力行わずに,足部を一側上肢で把持し,もう一側の上肢で靴下を履くように指示をした。各関節可動域の測定値は,靴下着脱動作中における腰椎屈曲角度の最大値算出時点の変化量とした。測定した関節可動域は,胸椎屈曲,骨盤後傾,股関節屈曲,股関節外転,股関節外旋,膝関節屈曲とした。また,メジャーにて上肢長,下肢長を測定した。統計解析は,従属変数を腰椎屈曲角度,独立変数を各関節可動域,上肢長,下肢長とし,重回帰分析(ステップワイズ法)を行い腰椎屈曲に影響を及ぼす因子を抽出した(有意水準20%)。
【結果】
腰椎屈曲角度が増加する因子として骨盤後傾角度の増加,胸椎屈曲,股関節屈曲,股関節外旋の減少,上肢の短さ,下肢の長さが抽出された(標準化係数が昇順に記載,調整済みR2=0.587)。
【結論】
先行研究では,腰椎屈曲角度と骨盤後傾には正の相関,腰椎屈曲角度と股関節可動域には負の相関があると報告されている。そのため,抽出された骨盤後傾の増加は,股関節屈曲,外旋可動域の減少に伴い増加したと考えられる。また,股関節外旋よりも股関節屈曲において標準化係数が高い理由としては,体幹の前屈,骨盤の後傾を生じさせないという指示のもとで行う靴下着脱動作には,股関節外旋による骨盤後傾に伴う腰椎の屈曲,及び腸腰筋の筋出力低下が関与したと考えられる。上下肢長においては上肢長が短く,下肢長が長いことで足部との距離が延長し,腰椎屈曲角度が増加したと考えられる。
当院では,脊椎疾患に対して固定術などの観血的治療を積極的に施行している。脊椎固定術後は体幹の過度な屈曲・伸展・側屈・回旋は禁忌となる。我々は,術後早期から禁忌動作に留意して理学療法を施行しているが,靴下の着脱を自立させるのに難渋する症例を多く経験する。先行研究として,人工股関節全置換術術後の靴下着脱動作に必要な体幹及び股関節可動域の関連性についての報告は散見される。しかし,脊椎術後の禁忌動作を想定した研究報告は少ない。そこで本研究は,端座位での靴下着脱動作が腰椎に与える各関節の影響を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,健常成人37名(男性21名,女性16名,平均年齢(標準偏差):27.4(5.7)歳)の計74脚とした。全対象者に対して,足底接地の端座位で左右ともに靴下着脱動作を施行させた。開始肢位は,昇降台ベッドに浅く腰をかけ,膝関節屈曲90°,下腿が床と垂直になるように調節した。矢状面は肩峰,上前腸骨棘,大転子が垂直になるように設定した。測定には三次元動作解析装置(酒井医療株式会社製,マイオモーション)を用いた。キャリブレーションはモーションセンサーを第7頸椎棘突起,第12胸椎棘突起,仙骨後面,大腿前面,下腿前面に装着し対象者ごとに実施した。なお,対象者には,体幹前屈,骨盤後傾を極力行わずに,足部を一側上肢で把持し,もう一側の上肢で靴下を履くように指示をした。各関節可動域の測定値は,靴下着脱動作中における腰椎屈曲角度の最大値算出時点の変化量とした。測定した関節可動域は,胸椎屈曲,骨盤後傾,股関節屈曲,股関節外転,股関節外旋,膝関節屈曲とした。また,メジャーにて上肢長,下肢長を測定した。統計解析は,従属変数を腰椎屈曲角度,独立変数を各関節可動域,上肢長,下肢長とし,重回帰分析(ステップワイズ法)を行い腰椎屈曲に影響を及ぼす因子を抽出した(有意水準20%)。
【結果】
腰椎屈曲角度が増加する因子として骨盤後傾角度の増加,胸椎屈曲,股関節屈曲,股関節外旋の減少,上肢の短さ,下肢の長さが抽出された(標準化係数が昇順に記載,調整済みR2=0.587)。
【結論】
先行研究では,腰椎屈曲角度と骨盤後傾には正の相関,腰椎屈曲角度と股関節可動域には負の相関があると報告されている。そのため,抽出された骨盤後傾の増加は,股関節屈曲,外旋可動域の減少に伴い増加したと考えられる。また,股関節外旋よりも股関節屈曲において標準化係数が高い理由としては,体幹の前屈,骨盤の後傾を生じさせないという指示のもとで行う靴下着脱動作には,股関節外旋による骨盤後傾に伴う腰椎の屈曲,及び腸腰筋の筋出力低下が関与したと考えられる。上下肢長においては上肢長が短く,下肢長が長いことで足部との距離が延長し,腰椎屈曲角度が増加したと考えられる。