第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P29

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-MT-29-2] 脊椎疾患術後患者が隣接椎間障害に至る因子の検討

江森亮1, 伊藤貴史1,3, 朝重信吾1, 古谷久美子1, 吉川俊介1, 児島満理奈1, 大坂祐樹1, 向坂愛理1, 星野雅洋2, 大森圭太2, 五十嵐秀俊2, 鶴田尚志2, 山﨑浩司2 (1.苑田第三病院, 2.東京脊椎脊髄病センター, 3.苑田会リハビリテーション病院)

Keywords:脊椎疾患術後, 隣接椎間障害, 術前評価

【はじめに,目的】

近年,脊椎疾患に対する手術療法は多岐にわたり,良好な結果が得られているとの報告が多い。当院でも,脊椎疾患術後は早期に離床を促し,ADLを自立して退院する患者が多い。しかし,退院後に隣接椎間障害(Adjacent Segment Disease:以下ASD)や椎体骨折により,再手術に至る症例も経験する。先行研究では脊椎術後にASD・椎体骨折に至る症例のアライメント評価の報告が多い中,術前のADLや心理的側面,臨床評価などの因子を含んだ報告は少ない。そこで本研究では,当院での脊椎疾患術後の患者がASD・椎体骨折に至る症例の術前因子を検討し,術前術後の理学療法介入戦略の一助にすることを目的とした。

【方法】

対象は2012年1月から2015年10月までに当院で脊椎変性疾患に対する手術を施行し,2年以上経過した者(以下非ASD群)と主治医より2年未満にASDまた椎体骨折と診断された者(以下ASD群)のうち評価可能であった155名とした。除外基準は,術前歩行困難な者,中枢神経疾患を有する者,骨関節疾患の手術既往を有する者,術後に重篤な合併症が生じた者,質問形式の評価表の理解が困難な者とした。対象者の内訳は男性61名,女性94名,平均年齢(標準偏差)67.2(11.8)歳であった。疾患の内訳は脊柱管狭窄症99例,脊椎後側弯症19例,脊椎すべり症15例,圧迫骨折11例,椎間板ヘルニア10例,その他1例であった。術式は椎体間固定術96例,矯正固定術24例,後方固定術5例,除圧術14例,椎体形成術8例,その他8例であった。評価項目は年齢,BMI,性別,同居人の有無,パーキンソンの有無,骨折歴の有無,術前のFunctional Reach Test(以下FRT),術前のTimed Up &Go(以下TUG)を後方視的に調査し,術前のOswestry Disability lndex(以下ODI),術前のPain Catastrophizing Scale(以下PCS)を自己記入式の質問紙で調査した。なお,ODIは腰痛疾患の特異的評価法であり,PCSは破局的思考を評価する代表的な指標である。統計解析は非ASD群とASD群の2群に分類し,各評価項目を対応のないt検定・Mann-WhitneyのU検定・カイ二乗検定を用いて検討した。また,有意水準は5%とした。



【結果】

2群間の比較については,FRT(p<0.05)とTUG(p<0.05)に有意な差が認められた。それぞれの平均(標準偏差)は非ASD群のFRT20.3(6.6),TUG12.4(4.8),ASD群のFRT16.3(7.5),TUG14.1(4.2)であった。

【結論】

本研究では,脊椎術後患者がASDとなる術前因子を明確にするため非ASD群とASD群でt検定・Mann-WhitneyのU検定・カイ二乗検定を用いて比較検討し,FRTとTUGに差が認められた。FRT・TUGはバランス能力と体幹,股関節,足関節などの様々な機能が関与している。そのため術前からの機能低下を術部周囲が代償することで,術後早期より負荷がかかるのではないかと考えられた。これらのことから,バランス能力に関わる機能改善を目的とした理学療法介入を術前から行うことで術後2年以内のASDや椎体骨折の発生を予防できると示唆された。