第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P29

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-MT-29-5] 腰椎変性疾患症例における矢状面アライメントと下肢筋力低下の関係

石津克人, 中山裕子, 保地真紀子, 渡邊直樹, 袴田暢 (新潟中央病院リハビリテーション部)

Keywords:腰椎変性疾患, 脊柱矢状面アライメント, 腰椎前弯角

【はじめに,目的】

腰椎変性疾患は脊柱のアライメント異常を呈し,様々な神経症状を生じる。特に矢状面アライメントは腰痛や姿勢異常の原因となることが報告されているものの,その相互関係や下肢筋力低下との関連については不明な点が多い。本研究の目的は,腰椎変性疾患症例における脊柱矢状面アライメントと疼痛および下肢筋力低下との関連について調査し,検討することである。

【方法】

対象は,2015年7月から10月に当院で評価を実施し,立位保持が可能であった腰椎変性疾患症例63例(男性34例,女性29例,平均年齢67.5±12.8歳)とした。検討項目は,立位全脊柱X線側面像より測定したSagittal Vertical Axis(以下SVA),胸椎後弯角(以下TK),腰椎前弯角(以下LL),仙骨傾斜角(以下SS),骨盤回旋角(以下PT),骨盤形態角(以下PI),腰痛・下肢痛のVASとした。腰痛の部位は第2腰椎棘突起高位から仙骨までの範囲で殿筋部分を除外した部分,下肢痛の部位は殿筋部・大腿部・下腿部・足部を含むものと定義した。SVAは第7頚椎椎体中央より下ろした垂線から仙骨後方隅角までの距離,TKは第4胸椎下縁と第12胸椎下縁のなす角,LLは第1腰椎上縁と第1仙椎上縁のなす角,SSは仙骨上面の傾斜と水平線とのなす角,PTは大腿骨頭中心と仙骨上縁中心を結ぶ線と垂線のなす角,PIはSSとPTの和と定義されている。次に,下肢MMT4-5の症例を正常群(36例),下肢MMT3以下を含む症例を低下群(27例)に分類し,脊柱矢状面アライメントと腰痛・下肢痛VASについて群間比較した。統計学的検討はt検定を用い有意水準は5%とした。

【結果】

LLは正常群が36.2±14.4°,低下群は26.9±13.8°であり両群間に有意差を認め,低下群は基準値である33.8~73.4°を逸脱し腰椎の前弯が減少していた。SSは正常群が28.8±9.5°,低下群は23.0±9.1°であり低下群において有意に仙骨が後傾していた。PTは,正常群が21.4±10.1°,低下群は27.1±10.8°であり両群間に有意差を認め,両群共に基準値である3.4~20.6°を逸脱し,低下群はより骨盤が後傾していた。SVA,TK,PI,腰痛・下肢痛VASは有意差を認めなかった。

【結論】

MMT低下群は正常群に比べ,腰椎前弯は減少,骨盤が後傾していた。これらのアライメント異常の発生要因としては,腰部骨盤周囲筋力の低下により腰椎前弯のカーブを保持できず骨盤が後傾していることが考えられ,さらに神経症状の増悪に関与している可能性がある。昨今,腰椎疾患に対する背筋強化や腹部深部筋強化が提唱されており,その効果の検証がなされつつある。今後,腰椎前弯を保持することで症状の悪化は防げるのか,さらに運動療法でアライメントを維持することができるのか検討してゆきたい。