[P-MT-29-4] 腰椎椎間板ヘルニア摘出術後の腰椎伸展可動性に影響する因子
~術後3ヶ月時の検討~
Keywords:腰椎椎間板ヘルニア, 術後, 腰椎伸展可動性
【はじめに,目的】
腰椎椎間板ヘルニア(LDH)摘出術後において,術後の症状改善,再発予防の観点から,腰椎伸展可動性が重要であると考える。我々は腰椎伸展可動性改善を重視した運動療法が有効性を確認している(石田ら,2014)。しかし,術後2ヶ月時にも腰椎伸展可動性が低下しているとの報告(Mannion,2005)がある。
そこで,LDH摘出術後一定期間を経た患者は,どのような要因によって腰椎伸展可動性が影響を受けるか知ることを目的として研究を行った。
【方法】
対象は,LDH摘出術を実施し,術後3ヶ月まで経過観察を行えた53例(35.3±7.1歳,男27例,女26例)とした。検討項目は,入院時の基礎情報として,年齢,性別,BMI,罹病期間,仕事(重労働,デスクワーク,その他),喫煙の有無とした。術後3ヶ月のデータとして,VAS(腰痛・下肢痛・しびれの程度),股関節柔軟性(SLR角,Thomas test,Ely test,股内外旋ROM),腰椎可動性,心理社会的因子(BS-POP),疾患特異的QOL(ODI),職場復帰の有無とした。SLR角,股内外旋ROMは左右で低い方の値を採用した。腰椎可動性の評価は,簡便で信頼性・妥当性が検証されている梅野ら(2011)の方法を用いた。測定肢位は足を肩幅に開いた自然立位とし,両PSISを結ぶ中点から上10cm,下5cmに印をつけた。両手を組ませ,体幹最大伸展させた際の印を結ぶ距離(メジャーにて1mm単位で測定)を腰椎伸展可動性とした。対象者の術後理学療法は術翌日から開始し,物理療法,体幹・下肢のストレッチ・筋力強化,ADL指導を段階的に実施し,退院後も継続するように指導した。入院期間は10~14日であり,軟性コルセットを医師の指示の下,術後1~2ヶ月装着した。
統計解析は,ステップワイズ法による重回帰分析を適用し,従属変数を術後3ヶ月時の腰椎伸展可動性,独立変数をその他の項目とした。有意水準は5%とした。
【結果】
重回帰分析の結果,SLR角(標準偏回帰係数0.36),ODI「座ること」(0.31)が選択された(ともにp<0.05,R2=0.21)。SLR角の測定では神経症状を認めた例は存在しなかった。術後3ヶ月時に痛みのため1時間以上座っていられない例は11例(20.8%)存在した。
【結論】
術後3ヶ月の腰椎伸展可動性が良好な例は,SLR角およびODI「座ること」も良好であった。体幹前傾姿勢を呈したLDH症例は,腰椎・股関節可動性制限があるとの報告(遠藤,2008)がある。術前の疼痛回避姿勢により,術後3ヶ月時にもハムストリングスの柔軟性および腰椎伸展可動性の低下も残存している可能性を考えた。また,LDH術後は腰椎伸展制限に伴い腰椎前弯が減少するとの報告(Mannion,2005)から,腰椎伸展可動性と姿勢が影響し,腰椎後弯位の不良座位姿勢により長時間の座位保持が困難となったと推測する。
LDH術後の腰椎伸展可動性にはハムストリングスの柔軟性と座位の困難感が影響することを考慮し,ハムストリングスのストレッチや生理的前弯位での座位保持指導を強化すべきである。
腰椎椎間板ヘルニア(LDH)摘出術後において,術後の症状改善,再発予防の観点から,腰椎伸展可動性が重要であると考える。我々は腰椎伸展可動性改善を重視した運動療法が有効性を確認している(石田ら,2014)。しかし,術後2ヶ月時にも腰椎伸展可動性が低下しているとの報告(Mannion,2005)がある。
そこで,LDH摘出術後一定期間を経た患者は,どのような要因によって腰椎伸展可動性が影響を受けるか知ることを目的として研究を行った。
【方法】
対象は,LDH摘出術を実施し,術後3ヶ月まで経過観察を行えた53例(35.3±7.1歳,男27例,女26例)とした。検討項目は,入院時の基礎情報として,年齢,性別,BMI,罹病期間,仕事(重労働,デスクワーク,その他),喫煙の有無とした。術後3ヶ月のデータとして,VAS(腰痛・下肢痛・しびれの程度),股関節柔軟性(SLR角,Thomas test,Ely test,股内外旋ROM),腰椎可動性,心理社会的因子(BS-POP),疾患特異的QOL(ODI),職場復帰の有無とした。SLR角,股内外旋ROMは左右で低い方の値を採用した。腰椎可動性の評価は,簡便で信頼性・妥当性が検証されている梅野ら(2011)の方法を用いた。測定肢位は足を肩幅に開いた自然立位とし,両PSISを結ぶ中点から上10cm,下5cmに印をつけた。両手を組ませ,体幹最大伸展させた際の印を結ぶ距離(メジャーにて1mm単位で測定)を腰椎伸展可動性とした。対象者の術後理学療法は術翌日から開始し,物理療法,体幹・下肢のストレッチ・筋力強化,ADL指導を段階的に実施し,退院後も継続するように指導した。入院期間は10~14日であり,軟性コルセットを医師の指示の下,術後1~2ヶ月装着した。
統計解析は,ステップワイズ法による重回帰分析を適用し,従属変数を術後3ヶ月時の腰椎伸展可動性,独立変数をその他の項目とした。有意水準は5%とした。
【結果】
重回帰分析の結果,SLR角(標準偏回帰係数0.36),ODI「座ること」(0.31)が選択された(ともにp<0.05,R2=0.21)。SLR角の測定では神経症状を認めた例は存在しなかった。術後3ヶ月時に痛みのため1時間以上座っていられない例は11例(20.8%)存在した。
【結論】
術後3ヶ月の腰椎伸展可動性が良好な例は,SLR角およびODI「座ること」も良好であった。体幹前傾姿勢を呈したLDH症例は,腰椎・股関節可動性制限があるとの報告(遠藤,2008)がある。術前の疼痛回避姿勢により,術後3ヶ月時にもハムストリングスの柔軟性および腰椎伸展可動性の低下も残存している可能性を考えた。また,LDH術後は腰椎伸展制限に伴い腰椎前弯が減少するとの報告(Mannion,2005)から,腰椎伸展可動性と姿勢が影響し,腰椎後弯位の不良座位姿勢により長時間の座位保持が困難となったと推測する。
LDH術後の腰椎伸展可動性にはハムストリングスの柔軟性と座位の困難感が影響することを考慮し,ハムストリングスのストレッチや生理的前弯位での座位保持指導を強化すべきである。