[P-MT-30-2] 若年者と高齢者の三次元的な肩甲骨の動きの変化の比較
Keywords:肩甲骨, 三次元動作解析, 加齢
【はじめに,目的】
肩関節疾患は,運動時だけでなく安静時にも疼痛を生じさせ,さらに関節可動域制限などの症状により日常生活活動における上肢動作に多大な支障をもたらす。Inmanらは通常の肩甲骨の運動からの逸脱は肩関節の機能障害と関連すると報告している。高齢者は,肩関節に特異的な障害を有していなくても不良姿勢などにより肩関節外転に伴う肩甲骨の正常な動きが得られていない可能性がある。疾患肩と健常肩の肩甲骨の動きを三次元的に比較した先行研究は散見されるが,若年者と高齢者における三次元的な肩甲骨の動きの変化を比較した研究はこれまでに行われていない。そこで本研究は,加齢による肩関節外転運動における三次元的な肩甲骨の動きへの影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,若年男性21名,高齢男性17名。課題動作は,立位での肩関節外転運動とした。三次元動作分析装置を用いて,肩甲骨の三次元的な運動学的計測を実施した。分析方法は,2試行の平均値を代表値とした。若年者と高齢者における肩甲骨の動きの比較として,右肩関節において年齢と肩甲骨の動きを二要因とした条件間の比較には二元配置分散分析反復測定法を行った。各肩関節外転角度における若年者と高齢者の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
前傾角度において年齢に主効果を認めず,肩関節外転角度条件において主効果が認められた。次に,上方回旋角度では年齢に主効果を認め,肩関節外転角度条件でも主効果を認めた。内旋角度では,年齢に主効果を認めたが,肩関節外転角度条件においては主効果を認めなかった。対応のないt検定の結果より,肩甲骨の前傾角度においては,全ての角度で有意差を認めなかった。次に,上方回旋角度では30°以降の各角度で有意差を認めた。内旋角度では,全ての角度にて有意差を認めた。
【結論】
高齢者は,肩関節外転運動に伴い若年者に比べ肩甲骨の上方回旋角度と外旋角度が減少していた。これは,先行研究での肩関節疾患者と同様の傾向であり,加齢による特異的な三次元的変化を示した。Ludewigらは肩甲骨の上方回旋の動きには内旋角度の減少が必要であることを報告している。本研究において若年者と高齢者の肩甲骨上方回旋に有意差がみられる肩関節外転が小さい角度以降では,肩甲骨の内旋が高齢者で若年者よりも有意に増加しているため,肩甲骨の上方回旋角度が高齢者で減少したと考えられる。このことは高齢者では肩関節を外転させるために必要となる正常な肩甲骨の三次元的な動きが得られなくなっていることを示している。高齢者では,不良姿勢などにより肩甲骨が正常アライメントではない状態から肩甲骨の上方回旋が開始し,さらには肩甲骨の内旋角度に変化がなく,上方回旋も減少した状態で上腕骨の挙上を行うなど,加齢による肩甲骨の三次元的な動きへの影響が明らかとなった。
肩関節疾患は,運動時だけでなく安静時にも疼痛を生じさせ,さらに関節可動域制限などの症状により日常生活活動における上肢動作に多大な支障をもたらす。Inmanらは通常の肩甲骨の運動からの逸脱は肩関節の機能障害と関連すると報告している。高齢者は,肩関節に特異的な障害を有していなくても不良姿勢などにより肩関節外転に伴う肩甲骨の正常な動きが得られていない可能性がある。疾患肩と健常肩の肩甲骨の動きを三次元的に比較した先行研究は散見されるが,若年者と高齢者における三次元的な肩甲骨の動きの変化を比較した研究はこれまでに行われていない。そこで本研究は,加齢による肩関節外転運動における三次元的な肩甲骨の動きへの影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,若年男性21名,高齢男性17名。課題動作は,立位での肩関節外転運動とした。三次元動作分析装置を用いて,肩甲骨の三次元的な運動学的計測を実施した。分析方法は,2試行の平均値を代表値とした。若年者と高齢者における肩甲骨の動きの比較として,右肩関節において年齢と肩甲骨の動きを二要因とした条件間の比較には二元配置分散分析反復測定法を行った。各肩関節外転角度における若年者と高齢者の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
前傾角度において年齢に主効果を認めず,肩関節外転角度条件において主効果が認められた。次に,上方回旋角度では年齢に主効果を認め,肩関節外転角度条件でも主効果を認めた。内旋角度では,年齢に主効果を認めたが,肩関節外転角度条件においては主効果を認めなかった。対応のないt検定の結果より,肩甲骨の前傾角度においては,全ての角度で有意差を認めなかった。次に,上方回旋角度では30°以降の各角度で有意差を認めた。内旋角度では,全ての角度にて有意差を認めた。
【結論】
高齢者は,肩関節外転運動に伴い若年者に比べ肩甲骨の上方回旋角度と外旋角度が減少していた。これは,先行研究での肩関節疾患者と同様の傾向であり,加齢による特異的な三次元的変化を示した。Ludewigらは肩甲骨の上方回旋の動きには内旋角度の減少が必要であることを報告している。本研究において若年者と高齢者の肩甲骨上方回旋に有意差がみられる肩関節外転が小さい角度以降では,肩甲骨の内旋が高齢者で若年者よりも有意に増加しているため,肩甲骨の上方回旋角度が高齢者で減少したと考えられる。このことは高齢者では肩関節を外転させるために必要となる正常な肩甲骨の三次元的な動きが得られなくなっていることを示している。高齢者では,不良姿勢などにより肩甲骨が正常アライメントではない状態から肩甲骨の上方回旋が開始し,さらには肩甲骨の内旋角度に変化がなく,上方回旋も減少した状態で上腕骨の挙上を行うなど,加齢による肩甲骨の三次元的な動きへの影響が明らかとなった。