第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P31

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-31-5] 人工膝関節全置換術後患者における膝関節伸展機能不全改善までの日数とT字杖歩行能力との関係

山本諒1, 小原謙一2, 齋藤聖平1, 淵本哲夫1, 塚本浩司1, 安部真沙美1 (1.公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷リバーサイド病院, 2.川崎医療福祉大学リハビリテーション学科)

キーワード:人工膝関節全置換術, Extension-Lag, 歩行能力

【はじめに,目的】

人工膝関節全置換術(以下,TKA)後患者は,膝関節伸展機能不全(extesion-lag以下ext-lag)が頻発する。しかし,ext-lagがTKA後患者のT字杖歩行獲得との関係性を調査したものは,演者らが渉猟し得た範囲では見つからなかった。そこで,本研究はext-lag改善までの日数と術後T字杖歩行能力の関係を検討することを目的とした。




【方法】

対象は,平成27年6月~9月に当院でTKAを施行した32人のうち,除外基準に当てはまらず本研究参加への同意の得られた20人(男性4例,女性16例)平均年齢は73±8.5歳を対象とした。除外基準は退院時にT字杖を使用して自宅退院が不可能であった者,認知症,脳血管疾患を有する者とした。評価項目は,ext-lagの改善日,T字杖歩行自立基準到達までの日数とT字杖歩行自立までの日数とした。歩行能力に関する評価は,T字杖歩行自立基準到達日の最大努力下でのTimed up and go test(以下TUG)と10m歩行時間の評価を実施し,退院時にも同様の歩行に関する評価を実施した。ext-lagは,端座位にて他動で膝関節を伸展し,理学療法士が下腿からの上方への支えを外した際にその場で保持が可能か不可能かを評価した。歩行能力の評価について,TUGはMathiusの原法に準じて行った。10m歩行時間は,20m屋内平地直線歩行路(前5mを助走路)とし,最大努力歩行で3回施行し,10mに要する時間をデジタルストップウォッチで計測し,その平均を算出した。TUGと10m歩行時間に関しては,個人差の影響を軽減するために自立基準達成日と退院時の所要時間の差を自立基準達成日の所要時間で除算し,正規化した改善率を算出した。TKA後のT字杖自立基準は,当院で採用しているT字杖歩行連続80mを見守り下で行えることとした。ext-lagの改善までの日数と上記歩行能力評価項目との間の関係性の検討のために,統計学的解析にはSpearmanの相関係数を用い,危険率5%未満をもって有意とした。




【結果】

()内にext-lag改善までの日数と各歩行能力評価項目結果との相関係数を記す。ext-lag改善までの日数は自立基準到達日数(r=0.513,p<0.05)と正の相関を示し,10m歩行時間の改善率(r=-0.467,p<0.05)と負の相関を示した。また,自立基準達成日数はT字杖自立日数(r=0.523,p<0.05)と正の相関を示した。ext-lagの改善までの日数とTUGの改善率,T字杖自立までの日数は有意な相関は認められなかった。


【結論】

TKA術後患者のext-lag改善までの日数が術後の杖歩行獲得時期や歩行能力の改善にどのような影響があるかを検討した。その結果,ext-lagが早期に改善することは,術後早期の杖歩行獲得に影響し,退院時の10m歩行時間改善に影響を与えることが示唆された。つまり,術後の機能回復においてext-lagの改善は重要であり,杖歩行の獲得だけでなく,退院時の歩行能力を高める上でも重要な要素となり得ると考えられる。