[P-MT-37-2] 大腿骨近位部骨折患者の端座位姿勢と歩行能力との関係
キーワード:大腿骨近位部骨折, 姿勢, 歩行
【目的】大腿骨近位部骨折術後の端座位での骨盤肢位と歩行能力の経時的な変化から,端座位姿勢が歩行能力に及ぼす影響を明確にすることにある。
【対象】同法人聖マリア病院で平成26年4月から翌年3月までに大腿骨近位部骨折に対し骨接合術を施行し,術翌日より全荷重が許可された症例の内,年齢65歳以上,受傷前独歩自立,HDS-Rが21点以上の症例21名。
【方法】診療録より1)年齢,2)入院期間,3)受傷から手術までの期間,4)術後PT期間を調査した。測定肢位はプラットホームに両膝窩部が接し,非骨折側膝関節屈曲90度,両足底接地,目線を水平位とした端座位とし,両上後腸骨棘(PSIS)を結ぶ線と床との平行線が成す角を骨盤傾斜角度,両PSISを結ぶ線と膝窩部が接するプラットホーム端の平行線が成す角を骨盤回旋角度とし評価した。PT時の歩行能力の経時的変化を調査するため13段階の独自のスケール(0不可,1平行棒介助,2平行棒監視,3平行棒自立,4歩行器介助,5歩行器監視,6歩行器自立,7杖介助,8杖監視,9杖自立,10独歩介助,11独歩監視,12独歩自立)で評価した。骨盤角度と歩行能力はリハ室でPT実施毎に測定した。次いで,対象患者の平均術後PT期間15.7±6.1日を指標とし術後16日以内に杖歩行に到達した群(到達群)10名と到達しなかった群(未到達群)11名の2群に分類した。この2群間で1)から4)と骨盤傾斜,回旋角度の初回角度と最終角度において比較検定を行った。検定はt検定もしくはMann-Whiteny検定を用いた。また,経時的な骨盤傾斜,回旋角度と歩行能力の関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検定した。統計ソフトはSPSSを用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】2群間の1)から4)は有意差を認めなかった。2群間の骨盤傾斜,回旋角度は初回では有意差を認めず,最終では骨盤傾斜角度(到達群1.3±0.7度,未到達群2.3±0.9度),回旋角度(0.5±1.2度,2.5±1.4度)と到達群が有意に小さかった(P<0.05)。骨盤肢位と歩行能力との相関係数は,到達群では骨盤傾斜角度と歩行能力(r=-0.64),回旋角度と歩行能力(r=-0.68),未到達群では骨盤傾斜角度と歩行能力(r=-0.47),回旋角度と歩行能力(r=-0.46)であった。
【考察】2群間における骨盤傾斜,回旋角度は初回で有意な差はなく,最終では到達群の方が有意に小さいことから到達群の骨盤肢位がより正中位へと近づいたことが考えられる。骨盤肢位と歩行能力の関係において到達群の方が未到達群より強い相関を認めた。これは骨盤肢位の正中化がアライメントや,重心偏位を改善させ歩行能力向上に影響したことが考えられる。つまり大腿骨近位部骨折術後において端座位での骨盤肢位の改善は歩行能力向上に関与することが示唆された。
【対象】同法人聖マリア病院で平成26年4月から翌年3月までに大腿骨近位部骨折に対し骨接合術を施行し,術翌日より全荷重が許可された症例の内,年齢65歳以上,受傷前独歩自立,HDS-Rが21点以上の症例21名。
【方法】診療録より1)年齢,2)入院期間,3)受傷から手術までの期間,4)術後PT期間を調査した。測定肢位はプラットホームに両膝窩部が接し,非骨折側膝関節屈曲90度,両足底接地,目線を水平位とした端座位とし,両上後腸骨棘(PSIS)を結ぶ線と床との平行線が成す角を骨盤傾斜角度,両PSISを結ぶ線と膝窩部が接するプラットホーム端の平行線が成す角を骨盤回旋角度とし評価した。PT時の歩行能力の経時的変化を調査するため13段階の独自のスケール(0不可,1平行棒介助,2平行棒監視,3平行棒自立,4歩行器介助,5歩行器監視,6歩行器自立,7杖介助,8杖監視,9杖自立,10独歩介助,11独歩監視,12独歩自立)で評価した。骨盤角度と歩行能力はリハ室でPT実施毎に測定した。次いで,対象患者の平均術後PT期間15.7±6.1日を指標とし術後16日以内に杖歩行に到達した群(到達群)10名と到達しなかった群(未到達群)11名の2群に分類した。この2群間で1)から4)と骨盤傾斜,回旋角度の初回角度と最終角度において比較検定を行った。検定はt検定もしくはMann-Whiteny検定を用いた。また,経時的な骨盤傾斜,回旋角度と歩行能力の関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検定した。統計ソフトはSPSSを用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】2群間の1)から4)は有意差を認めなかった。2群間の骨盤傾斜,回旋角度は初回では有意差を認めず,最終では骨盤傾斜角度(到達群1.3±0.7度,未到達群2.3±0.9度),回旋角度(0.5±1.2度,2.5±1.4度)と到達群が有意に小さかった(P<0.05)。骨盤肢位と歩行能力との相関係数は,到達群では骨盤傾斜角度と歩行能力(r=-0.64),回旋角度と歩行能力(r=-0.68),未到達群では骨盤傾斜角度と歩行能力(r=-0.47),回旋角度と歩行能力(r=-0.46)であった。
【考察】2群間における骨盤傾斜,回旋角度は初回で有意な差はなく,最終では到達群の方が有意に小さいことから到達群の骨盤肢位がより正中位へと近づいたことが考えられる。骨盤肢位と歩行能力の関係において到達群の方が未到達群より強い相関を認めた。これは骨盤肢位の正中化がアライメントや,重心偏位を改善させ歩行能力向上に影響したことが考えられる。つまり大腿骨近位部骨折術後において端座位での骨盤肢位の改善は歩行能力向上に関与することが示唆された。