第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P39

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-39-5] 大腿骨近位部骨折術後患者に対する電気刺激併用筋力強化法の効果

骨折型が治療効果に与える影響

藤森由貴, 唄大輔, 亀口祐貴, 徳田光紀 (社会医療法人平成記念病院リハビリテーション課)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 電気刺激併用筋力強化法, 骨折型

【はじめに,目的】

大腿骨近位部骨折術後の歩行能力獲得には,年齢,骨折型,認知症の有無,膝伸展筋力などが影響し,特に膝伸展筋力と密接な関係があるとされている。また,大腿骨近位部骨折術後患者の早期歩行能力獲得には,電気刺激を併用した膝伸展筋力強化法が有効であると報告されている。しかし,先行研究では骨折型に分類して治療効果を比較した報告は皆無である。そこで,本研究は大腿骨近位部骨折術後患者を対象に電気刺激併用筋力強化法(Method of Electrical Stimulation for Muscle Strength:MEMS)を実施し,骨折型によって術後の筋力や動作獲得日数に差が生じるか検討することを目的とした。

【方法】

対象は当院にて大腿骨近位部骨折と診断された14例(大腿骨頸部骨折7例および大腿骨転子部骨折7例)とした。術式は大腿骨頸部骨折に対して人工骨頭置換術,大腿骨転子部骨折に対してガンマネイル固定術が選択された。MEMSは電気刺激治療器(ESPURGE,伊藤超短波社製)で患側の大腿四頭筋に対して二相性非対称性パルス波,パルス幅300μs,周波数80pps,強度は運動レベルの耐えうる最大強度,ON:OFF=5:7秒に設定して術後翌日から毎日20分間実施した。評価はハンドヘルドダイナモメーター(μtas F-1,ANIMA社)で膝伸展筋力(患健側比を算出)と日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOAスコア)を術後1,3,5日目,1,2,3,4週目に測定し,下肢伸展挙上の獲得,歩行器歩行自立までに要した日数を記録した。統計解析には,各評価項目を測定日ごとに骨折型別で比較するため,対応のないt検定を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

膝伸展筋力は大腿骨頸部骨折(43.8±10.2,53.2±15.0,61.9±19.0,73.2±15.7,76.3±8.4,77.2±8.8,79.5±6.3),大腿骨転子部骨折(25.2±8.7,41.7±14.2,49.0±12.2,47.0±11.3,57.3±8.6,60.5±6.8,68.7±6.9)となり,術後1日目と1,2,3,4週目において有意に大腿骨頸部骨折が高値を示した。JOAスコアは大腿骨頸部骨折(14.9±3.1,30.6±9.4,35.4±10.0,39.1±10.0,46.9±7.3,53.9±9.1,59.7±10.2)と大腿骨転子部骨折(14.4±5.2,20.7±8.1,27.7±8.6,31.0±7.7,39.1±9.0,45.3±9.8,52.6±11.6)において有意な差を認めなかった。また,各動作(下肢伸展挙上,歩行器歩行)の自立までに要した日数も大腿骨頸部骨折(4.6±5.3,9.6±4.7)と大腿骨転子部骨折(7.7±5.3,11.6±4.0)において有意な差を認めなかった。

【結論】

大腿骨近位部骨折術後患者に対しMEMSを実施し骨折型別に比較した結果,術後1か月の間において大腿骨頸部骨折の方が大腿骨転子部骨折より筋力は早期に改善したがJOAスコアや各動作能力獲得には差が生じなかった。本研究により大腿骨近位部骨折術後患者では骨折型がMEMSの筋力改善効果に影響を与えることが示唆された。今後は差異をもたらす要因の検討や,骨折型別に応じた効果的な方法の検討が課題である。