第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P06

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-06-5] 回復期における脳卒中片麻痺患者に対する部分免荷装置を用いた床上歩行練習の効果

シングルケースデザインによる検討

松本浩希, 湊哲至, 木本真史 (彩都リハビリテーション病院)

Keywords:部分免荷装置, 床上歩行練習, 脳卒中

【はじめに,目的】

部分免荷装置を用いたトレッドミル歩行練習(Body weight-supported treadmill training:以下BWSTT)は,より正常に近い歩行様式で行える課題志向型の歩行練習方法として先行研究で報告されている。しかし,トレッドミルのハンドレールを支えにしてBWSTTを行う場合,上肢や体幹部の動きを制限してしまうため歩行様式は特異的なものとなる。

一方,部分免荷装置を用いた床上歩行練習(Body weight-supported overground training:以下BWSOT)であれば,患者自身のペースで能動的に歩行練習が行えるため,上肢の振りや体幹運動も踏まえたより正常に近い歩行様式で歩行練習が実施できる。しかし,BWSOTの効果について検討されているものは少ない。

本症例はハンドレールの支え無しでBWSTTを行った際,動作が明らかに不安定となったため歩行練習方法としてBWSOTを選択した。本研究は,脳卒中片麻痺患者に対するBWSOTの効果について検討することを目的とした。

【方法】

本症例は初発で右皮質下出血と診断を受けた62歳の男性である。本症例に対し,Functional Ambulation Category(以下,FAC)が3となった発症後48日目から経過を追った。研究デザインは単一症例でのABABデザインとし,標準的運動療法介入期間をA期,BWSOT介入追加期間をB期とした。介入期間は各期ともそれぞれ10日間とした。BWSOTの介入は14回/10日,20分/回の頻度で実施した。評価項目は,上田式12段階片麻痺機能テスト(以下,上田式),臨床的体幹機能検査(以下,FACT),FAC,麻痺側最大荷重率,非麻痺側膝伸展筋力,10m歩行最大速度,歩幅とした。

上田式,FACT,FACについては経時的な変化を目視で判断し効果判定を行った。その他の項目については,中央分割法を用いて加減速線を引き,各期の勾配を算出し比較した。

【結果】

上田式,FACT,FACは経時的に改善を認めたが,BWSOT介入における特異的な改善は認めなかった。評価項目の各期における勾配を,A期,B期,第2A期,第2B期と経時的に記載する。麻痺側最大荷重率は2.26,1.53,0.20,0.08,非麻痺側膝伸展筋力は0.14,0.08,0.36,0.80,10m歩行最大速度は-0.44,-0.10,0.01,-0.02,歩幅は1.43,0.82,0.26,0.28であった。

【結論】

本症例においてBWSOTにより改善が得られたと推測される評価項目は,10m歩行最大速度,歩幅であり,BWSOTは介入後に歩行能力を改善させる可能性が示唆された。しかし,変化量としては大きなものではなかった。

最も改善する傾向を示したのはA期であった。これは,上田式において5から7へと機能回復が起こった時期であり,麻痺そのものが改善した影響が強かったためと考えられる。

本症例では歩容の変化までは調査できておらず,歩行様式が機能改善に影響を与えたかどうかまでは追究できていない。今後は,歩容やアライメントの変化も踏まえた調査,比較対象群を設けての効果判定を行う必要がある。