第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P06

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-06-4] 重度脳卒中患者に対する高頻度歩行練習が日常生活動作能力に与える影響

病棟でのトイレ実施の有無に着目して

瀧慎伍1, 猪村剛史2, 佐藤優子1, 今田直樹1, 藤井辰義3, 川 哲二3, 沖修一3, 荒木攻3 (1.荒木脳神経外科病院リハビリテーション部, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究院, 3.荒木脳神経外科病院診療部)

Keywords:重症脳卒中患者, 下肢筋肉量, 活動

【はじめに】

近年,75歳以上の高齢者が急増するとされる2025年に向け地域包括ケアシステムの構築が急務であり,住み慣れた地域で自分らしい生活を送るため,入院リハビリテーションより活動・参加に焦点を当てた介入が求められている。臨床現場において,実用歩行獲得が困難な重度脳卒中患者に対し,廃用症候群の予防や歩行以外の動作能力への波及を目的に下肢装具を用いた装具療法が行われている。しかし,その効果に関する具体的なデータを示す報告は極めて少ない。そこで,本研究では重度脳卒中患者への歩行練習が下肢筋肉量に及ぼす影響を検討するとともに,病棟でのトイレ実施の有無に着目し,下肢筋肉量の変化が病棟でのトイレ実施の有無という活動に及ぼす影響について検討した。


【対象と方法】

平成26年4月1日から平成27年3月31日の期間に,当院回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)に入棟した脳卒中患者の内,入棟時の主となる移動手段が車椅子であった71名を対象とした。退院時の移動手段によって,実用的に歩行が自立した者(自立群,31名)と非自立の者(非自立群40名)に分けた。さらに,非自立群を,歩行練習の頻度が週1回以下であった者(非自立低頻度群,21名)と毎日であった者(非自立高頻度群19名)に分けた。3群における基本属性(年齢,性別,診断名,入棟時および退院時FIM運動項目合計点,FIM移乗項目),提供単位数,下肢筋肉量,病棟でのトイレ実施の有無を比較した。下肢筋肉量は,体成分分析装置InBody S10(株式会社 インボディ・ジャパン)を使用し,入棟時および退院時の麻痺側,非麻痺側筋肉量を測定した。


【結果】

入棟時FIM運動項目合計点および移乗項目,退院時FIM運動項目合計点および移乗項目共に,非自立低頻度群や非自立高頻度群と比較して,自立群で有意に高かったが,非自立低頻度群と非自立高頻度群の間には有意差を認めなかった。提供単位数は3群間で有意な差は認めなかった。麻痺側下肢筋肉量において,入棟時には非自立低頻度群と非自立高頻度群の間に有意差を認めなかったが,退院時には非自立低頻度群で有意に低値であった。病棟でのトイレ実施者は非自立低頻度群と比較して非自立高頻度群で有意に多かった。


【考察】

結果より,下肢装具を使用し積極的な歩行練習を行った非自立高頻度群は,非自立低頻度群と比較し,麻痺側下肢筋肉量が維持されており,重度脳卒中患者において高頻度の歩行練習は麻痺側下肢筋肉量に影響を与える可能性が示された。また,入院時および退院時FIM移乗項目において非自立低頻度群と非自立高頻度群の間には有意差を認めなかったにもかかわらず,病棟でのトイレ実施者は,非自立低頻度群と比較し非自立高頻度群で有意に多く,麻痺側下肢筋肉量の維持は日常生活動作につながる可能性が示された。よって,下肢装具による高頻度の歩行練習は活動に向けたアプローチとしても有用であると考えられる。