第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P07

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-07-3] 被殻出血患者における歩行自立群と歩行介助群の発症時脳画像所見の特徴

池田亜未 (金沢赤十字病院リハビリテーション科)

キーワード:被殻出血, CT画像, 歩行自立度

【はじめに,目的】

被殻出血患者が脳出血患者に占める割合は35%から50%と報告されており,理学療法士が関わる機会も多い。理学療法では歩行能力の回復が重要な課題であり,歩行自立の可否に関連する脳画像上の特徴を知ることは有益である。本研究の目的は,被殻出血患者における歩行自立群(自立群)と歩行介助群(介助群)の発症時脳画像所見の特徴を明らかにすることである。

【方法】

対象は2006年6月から2015年10月までに当院回復期リハビリテーション病棟を退院した被殻出血患者13名(年齢63.2±14.7歳,男性8名)で,全例病前の独歩が自立していた。退院時のFunctional Independence Measureにおける移動項目で6~7点を自立群(5名),1~5点を介助群(8名)とした。出血側(右/左)は自立群2/3,介助群6/2で,血腫除去術は自立群で1例,介助群で4例実施された。調査は診療録と発症時CT画像を使用し,後方視的に実施した。脳画像の定量的測定は,松果体レベルで実施し,内包後脚前端から出血部位前端までの距離を計測し,内包後脚の全長で除した値(出血部位前端値),内包後脚前端から出血部位後端までの距離を,内包後脚の全長で除した値(出血部位後端値)を求めた。さらに内包後脚の出血体積を内包後脚の体積を除した値(出血体積割合)も求めた。松果体レベルでEvans indexを算出した。定性評価としては松果体レベルとその他のレベルで損傷されている部位をすべて同定した。退院時に残存した障害名を列挙した。結果は対応のないt検定,マン・ホイットニーのU検定,カイ二乗検定で2群間の比較を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

年齢が自立群51.4±4.2,介助群70.6±14.0歳と介助群で有意に高く,Evans indexは自立群0.25±0.02,介助群0.27±0.04で有意差はなかった。Brunnstrom recovery stage(Brs)上肢が自立群5,介助群2と介助群で有意に低く,Brs下肢は自立群5,介助群4で有意差はなかった。出血部位前端値は自立群0.43±0.23,介助群0.17±0.14で,介助群で有意に低かった。出血部位後端値は自立群0.66±0.22,介助群0.75±0.28で有意差はなかった。出血体積割合は自立群0.11±0.05,介助群0.52±0.19で有意差を認めた。定性評価では有意差はなかった。退院時に残存した障害は,介助群で平衡機能障害,半側空間無視,注意障害,記憶障害,嚥下障害が有意に多かった。

【結論】

介助群では加齢による身体機能の低下が歩行に悪影響を与えたと考えるが,脳萎縮の程度を示すEvans indexには差がなかった。介助群の脳画像上の特徴として,内包後脚における出血が前方に位置していること,出血部位後端値に差がないこと,出血体積割合が大きいことが明らかとなった。介助群では下肢の随意性に差がなかった。これは血腫の圧迫により皮質脊髄路の損傷を適切に評価できなかった可能性がある。介助群では多彩な高次脳機能障害を呈しており,歩行自立を阻害した一因と考える。