第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P15

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-15-1] フットスイッチ式FES装置を併用した歩行練習が平地歩行へ与える即時的効果についての検討

伊藤優也1, 皆方伸1, 佐川貢一2, 木元裕介1, 佐藤雄一1 (1.秋田県立脳血管研究センター機能訓練部, 2.弘前大学理工学部)

Keywords:機能的電気刺激, 脳卒中片麻痺, 即時的効果

【はじめに,目的】

機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)は,脳卒中片麻痺患者の歩行能力を改善させる治療方法であるが,これまで,機器の操作性,装着性,外観などの問題により臨床場面では普及しなかった。しかし,近年では小型でありながら,操作性,装着性とも簡便で,性能の高い機器が開発され,臨床での治療及び歩行補助具としての有用性が再注目されている。近年,FESの歩行に与える効果に関する研究は散見されるが,FES実施中の変化を検討したものが多く,FESを外した直後の平地歩行における効果に関する報告は少ない。そこで,FESを併用して行う歩行練習が,脳卒中片麻痺患者のFESを外した直後の平地歩行へ与える効果に関して検討を行い,治療の一手段としての有用性を検討した。

【方法】

対象は,当院回復期病棟に入院し,10m以上の見守り歩行が可能な脳卒中片麻痺患者16名(男性13名,女性3名。59.2±14.1歳)とした。FESにはフットスイッチ式無線小型FES装置であるNESS L300™フットドロップシステム(以下NESS,Bioness社)を用いた。NESSは足底踵部の圧センサーへの足圧が刺激トリガーとなり,遊脚期に前脛骨筋に電気刺激を加え,足背屈運動を促す装置である。歩行練習にNESSを併用する群(NESS群:9名)と,併用しない群(コントロール群:7名)の2群に割り付けた。方法は,両群共に30mの平地歩行練習を実施し,その前後での10m快適歩行における歩行速度,歩行周期の変動係数(Coefficient of Variation以下,CV)の即時的変化を求めた。CVの算出に関して,小型三軸加速度センサー(Freescale Semiconductor,MMA7260Q)を非麻痺側下肢の足尖に取り付け,歩行周期時間を測定した後,連続する10周期から平均値と標準偏差を求め,標準偏差を平均値で除した値の百分率から算出した。統計処理は,両群における介入前後の歩行速度,CVの比較をwilcoxonの符号付順位検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

介入前の両群の歩行速度及びCVには有意差を認めなかった。NESS群の歩行速度は,介入前31.2±13.1m/s,介入後33.8±14.4m/sで,CVは,介入前6.5±5.0%,介入後4.4±2.1%であり,介入前後でCVにのみ有意差を認めた。コントロール群の歩行速度は,介入前38.8±14.7%,介入後39.9±14.1%で,CVは,介入前4.8±4.4%,介入後3.4±2.1%であり,歩行速度,CV共に有意差を認めなかった。

【結論】

今回の結果では,NESS群のCVのみ有意な改善を示したが,コントロール群では有意差は認めなかった。CVは歩行リズムのばらつきを示し,歩行安定性を構成する要素とされ,自立度や転倒にも関連すると報告されている。よって,NESSの併用が歩行リズムを即時的に改善させ,安定性の向上及び転倒リスクを軽減させる可能性があることが示唆された。本研究から,NESSを併用した歩行練習は歩行安定性を高める治療介入の一手段として有用であると考える。