第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P20

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-20-3] 長下肢装具を作製した回復期重度脳卒中片麻痺患者の歩行と自宅復帰可否に影響する因子の検討

新堀晃史, 長野文彦 (熊本リハビリテーション病院)

Keywords:脳卒中片麻痺, 歩行, 自宅復帰

【はじめに,目的】

長下肢装具(KAFO)を作製した脳卒中片麻痺患者の歩行と自宅退院に影響を与える因子についての報告は少ない。今回,回復期リハ病棟に入院しKAFOを作製した重度脳卒中片麻痺患者に対し,入院後比較的早期の評価項目を基に,退院時の歩行と自宅復帰可否に影響する因子について検討した。

【方法】

平成21年4月から平成27年3月(6年間)に回復期リハ病棟を退院した脳卒中片麻痺患者のうち,KAFOを作製した167名を対象(年齢70.0±11.9歳,男性91名,女性76名,発症~入院までの日数21.1±11.5日,平均在院日数154.0±29.5日,発症~装具処方までの日数34.1±18.5日,入院時FIM57.3±28.5,退院時の自立歩行率49.7%,自宅復帰率71.9%)とした。急性期病院への転院,発症後60日以上経過後の入院,在院日数60日以内の者は除外した。

調査項目は,年齢,性別,診断名,既往歴,治療,麻痺側,発症~入院までの日数,在院日数,発症~装具処方までの日数,Br.Stage(上肢,手指,下肢),入院時運動FIM,入院時認知FIM,入院時FIM,入院時歩行レベル,病前歩行レベル,アルブミン値,家族構成,家族協力,リハビリ意欲,意識障害,高次脳機能障害,半側空間無視,高齢者日常生活自立度,認知症高齢者生活自立度,合併症(整形疾患,心臓疾患,呼吸器疾患)をカルテより抽出した。統計学的解析にはSPSSを用い,解析方法は,すべての調査項目を独立変数,歩行および自宅復帰可否を従属変数とするロジスティック回帰分析を実施した(有意水準1%または5%未満)。

【結果】

歩行可否に影響する因子は,年齢(オッズ比0.974)が選択された(モデルχ2検定p<0.05,判別的中率58.3%)。また,自宅復帰可否に影響する因子は,病前歩行レベル(2.434),家族協力(0.122),認知症高齢者生活自立度(1.493),発症~入院までの日数(0.896),入院時運動FIM(1.099),発症~装具処方までの日数(1.085)が選択された(モデルχ2検定p<0.01,判別的中率87.7%)。

【結論】

退院時の歩行可否には年齢が影響したが,判別的中率は低く精度は不十分であると考えられ,歩行能力の予測にはより詳細な身体機能の評価を加える必要があると考えられた。自宅復帰可否に対する判別的中率は高く,予測精度は高いと考えられた。早期のKAFO処方が自宅復帰に影響していることを示唆しており,入院時運動FIMをはじめとした身体評価のみで予後を判断するのではなく,病前歩行レベルを把握し家族協力が得られるような働きかけを行っていくことが重要であると考えられる。また,リハの阻害因子となる認知症に加え,発症から入院までの日数を考慮するなど,単独ではなく複数の因子を組み合わせて判断する必要がある。