第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P20

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-20-4] 脳卒中片麻痺患者に対する長下肢装具(Gait Solution足継手の有無)使用の効果検証

東智里1, 岩瀬弘明1,2, 村上貴士1 (1.社会福祉法人京都博愛会京都博愛会病院, 2.京都橘大学健康科学部理学療法学科)

Keywords:脳卒中, 長下肢装具, Gait Solution

【はじめに】脳血管疾患患者に長下肢装具(Knee Ankle Foot Orthosis:KAFO)を使用し,早期から立位,歩行練習を行うことは脳卒中ガイドライン2015で推奨されている。当院でも麻痺側下肢で身体を支持することができない患者を対象に,KAFOを導入して立位や歩行練習を行ってきた。近年,油圧制動足継手付底屈制動(Gait Solution:GS)長下肢装具を使用した歩行練習が,健常歩行相に近時する下肢の筋活動を誘発することが報告されている。当院でも2012年以降,KAFOにGSを導入(足継手:外側GS継手,内側タブルクレンザック継手)してきた。本研究の目的は,発症からKAFO作成までの期間と体幹・下肢機能との関連を明らかにし,足継手にGSを導入した効果の検証を行うことである。

【方法】研究デザインは後方視的観察研究で,2009年4月から2015年10月の期間に当院に入院していた脳血管疾患患者のうち,KAFOを作成した46名(男性18名,女性28名)を解析対象とした。平均年齢は73.9歳であった。調査項目は,①年齢,②性別,③疾患名,④発症からKAFO完成までの期間とした。またKAFO完成時とリハビリテーション終了時にBrunnstrom Recovery Stage(BRS)およびStroke Impairment Assessment Set(SIAS)を評価し,その変化量を算出した。統計解析は,発症からKAFO完成までの期間とSIASの下位項目である体幹機能,運動機能の中から下肢近位(股),下肢近位(膝),下肢遠位(足)の各項目の変化量との関係について,年齢と性別,KAFO完成時の下肢BRSを制御変数とした偏相関分析を用いて検討した。次に,GS継手の有無による効果を検討するため,被験者間因子をGS継手の有無とし,被験者内変数を偏相関分析で有意な相関が認められた項目として,年齢と性別,KAFO完成時の下肢BRSを共変量とした分割プロット共分散分析を行った。

【結果】対象疾患の内訳は,脳出血17例,脳梗塞26例,クモ膜下出血1例,硬膜下血腫2例であった。発症からKAFO完成までの期間は平均59.5日であった。KAFO完成時のBRSはstageIが19例,stageIIは19例,stageIIIは8例であった。SIASの下位項目のうち体幹機能(KAFO完成時/リハビリテーション終了時)は1.4/2.9,下肢近位(股)は0.4/1.4,下肢近位(膝)は0.4/1.4,下肢遠位(足)は0.1/0.5であった。偏相関分析の結果,発症からKAFO完成までの期間と有意な相関が認められたのは,体幹機能(r=-0.38,p=0.01)のみであり,下肢機能とは有意な相関を認めなかった。また,共分散分析の結果,GS継手なし群と比較して,GS継手群の方が体幹機能に有意(p=0.01)な改善が認められた。

【結論】今回の検証により,発症から早期にKAFOを導入してリハビリテーションを行うことで,体幹機能の改善に繋がる可能性が示された。また,KAFOの足継手にGSを導入することで,体幹機能がより改善することが示唆された。