第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P20

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-20-5] 脳卒中片麻痺症例の短下肢装具作製の適応基準に影響する因子

松原岳洋, 今田健 (社会福祉法人こうほうえん錦海リハビリテーション病院リハビリテーション技術部)

Keywords:脳卒中片麻痺症例, 短下肢装具, 適応基準

【はじめに,目的】

脳卒中診療ガイドライン2009では,内反尖足がある脳卒中片麻痺症例には短下肢装具を使用することが推奨されている。これまでに脳卒中片麻痺症例に対して,短下肢装具を作製する機会があり,短下肢装具の日常生活動作の自立に向けて有効であると感じていた。森中らは,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)と片麻痺歩行時の立脚期異常サインから下肢装具類とその適応基準を作成しているが,短下肢装具作製の適応基準については明確にされていない。そこで,当院回復期リハビリテーション病棟における短下肢装具作製の適応基準を調査することを目的とした。

【方法】

対象は2014年1月から2014年12月の間に当院に入院した脳卒中片麻痺症例133例であった。複数回入院した症例,入院時のFunctional Independence Measure(以下,FIM)の歩行が6点以上の症例,退院時のFIMの移乗車椅子,移乗トイレがどちらも1点の症例,入院時の下肢BRSがstageVIの症例を除外した51例であった。その内,装具作製群が19例,非作製群が32例であった。調査項目は内反尖足の有無,反張膝の有無,膝折れの有無,BRS,Functional Ambulation Categories(以下,FAC),FIM(下衣更衣,移乗車椅子,移乗トイレ,移乗浴槽,歩行,階段)であった。統計処理は装具作製群,非作製群を従属変数,調査項目を独立変数とし,Mann-WhitneyのU検定を用いた。次に装具作製群,非作製群を従属変数,Mann-WhitneyのU検定において両群間に有意差を認めた項目を独立変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】

装具作製群と非作製群を比較し,有意差が認められた項目は,内反尖足,反張膝,膝折れ,入院時BRS,退院時BRS,入院時FAC,入院時FIM(移乗車椅子,移乗浴槽,歩行)であった。多重ロジスティック回帰分析を行った結果,オッズ比は退院時BRSで3.39,入院時FIMの移乗トイレで0.16,入院時FIMの移乗浴槽で6.84,反張膝で0.01,膝折れで0.01であり,すべての項目において有意差は認められなかった。

【結論】

短下肢装具作製の適応基準を見出すことは出来なかったが,短下肢装具作製の有効性を見出すことが出来た。装具作製群は内反尖足,反張膝,膝折れのいずれかを認めることが多く,入院時のBRS,FAC,FIM(移乗車椅子,移乗浴槽,歩行),退院時のBRSに関しても非作製群と比較し,有意に低値を示すことがわかった。装具によって立脚相の足関節と膝関節の動きを制御できると報告されており,退院時のFAC,FIM(移乗車椅子,移乗浴槽,歩行)の改善に繋がったと考えられた。また,BRSの項目に関して装具作製群では入院時,退院時ともに低値を示し,改善されていないことが考えられた。国際義肢装具連盟でエビデンスレベルBが得られたのは「継ぎ手つきAFOは歩行速度とケイデンスを改善する」という内容であり,短下肢装具の使用によってBRSは改善しないことが考えられた。