第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P21

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-NV-21-4] 小脳性運動失調患者におけるScale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)と動作能力との関連性

石野洋祐, 武田祐貴, 平野雄一, 武田真理子, 石川啓太, 土門遼次, 齋藤篤生, 大塚琴美, 瀧麻里那, 釘本充, 杉山俊一 (特定医療法人柏葉脳神経外科病院)

Keywords:SARA, 小脳性運動失調, 動作能力

【はじめに,目的】

近年,小脳性運動失調の定量評価法としてScale for the Assessment and Rating of Ataxia(以下,SARA)が用いられ,既に信頼性が示されている。これまでにSARAはInternational Cooperative Ataxia Rating ScaleやBarthel Indexとの間に関連性が報告されているが,バランス機能や歩行能力に対しては少ない。そこで本研究の目的は,小脳性運動失調を呈する脳卒中患者に対してSARAの有用性を明らかにする為に,動作能力との関連性を検討することとした。

【方法】

対象は椎骨脳底動脈領域を責任病巣とする当院入院中の脳卒中患者とした。取り込み基準は四肢に明らかな運動麻痺を認めず,小脳性運動失調を呈する症例とした。除外基準は,重度意識障害や高次脳機能障害,認知症により従命困難な症例とした。小脳性運動失調の評価としてSARAを,バランス機能の評価としてBerg Balance Scale(以下,BBS)および重心動揺計(アニマ社製GRAVICORDER GS-10)を用いた開閉眼での総軌跡長,矩形面積を,歩行能力として10m Maximum Walking Speed(以下,10mMWS),Functional Ambulation Classification(以下,FAC)を,Activities of daily living(以下,ADL)能力としてmotor Functional Independence Measure(以下,mFIM)をそれぞれ用いた。統計学的分析は,SARAと各評価項目をピアソンの積率相関係数,およびスピアマンの順位相関係数を用いて検討した。解析はIBM SPSS Statistics Ver.22.0を用い,5%を有意水準とした。

【結果】

対象は24名(脳出血9名 脳梗塞15名 男性21名,女性3名,平均年齢70.8±10.1歳)で,発症から測定までの日数は平均31.0±25.4日,入院期間は61.3±41.0日であった。各評価項目の平均値は,SARA6.8±4.4点,BBS47.5±7.2点,開眼総軌跡長106.6±84.8cm,開眼矩形面積16.8±19.6cm2,閉眼総軌跡長150.5±94.7cm,閉眼矩形面積30.9±29.7cm2,10mMWS1.0±0.4m/s,FAC3.8±1.0,mFIM72.5±12.9点であった。SARAと各項目との相関係数はBBS(r=-0.59),開眼総軌跡長(r=0.58),開眼矩形面積(r=0.48),閉眼総軌跡長(r=0.49),閉眼矩形面積(r=0.53),10mMWS(r=-0.38),FAC(r=-0.55),mFIM(r=-0.62)であった。

【結論】

SARAとバランス機能,ADL能力との間で比較的強い相関が認められたことから,先行研究と同様にSARAと動作能力との間に関連性があることが示された。しかし10mMWSとの相関が低かったことは,小脳性運動失調が歩行の前進性に及ぼす影響は少ないことが考えられた。本研究の結果は,SARAがバランス機能やADL能力と関連があり,小脳性運動失調評価の一助となる可能性を示唆している。今後の課題として,本研究の対象はSARAの平均値が6.8点と軽症例が多く,重症例を含めた適応を検討する必要がある。