第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P24

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-24-3] 一回復期リハビリテーション病棟での年次比較による運動・認知項目の入院時FIM得点とFIM利得の関係

平田貴大1, 嶋津誠一郎1, 石黒祥太郎1, 内山靖2 (1.社会医療法人愛生会上飯田リハビリテーション病院リハビリテーション科, 2.名古屋大学大学院医学系研究科理学療法学講座)

Keywords:脳卒中, FIM利得, 年次比較

【はじめに,目的】

近年リハビリテーション病棟の質的整備が進み,各病棟の特色を生かした理学療法の提供が求められる。そのため当院でもスタッフの増員,病床数の増加に加え臨床での指導体制の強化などの業務改善を行ってきた。そこで今回当院における過去と現在のアウトカムを比較し,そこから得られる傾向や今後の課題について検討する。




【方法】

平成25年4月1日~平成26年3月31日までの1年間に当院に主疾患が脳血管疾患として入院され,Functional Independence Measure(機能的自立度評価法:以下FIM)データが揃った202名を対象とした。また平成19年4月1日~平成20年3月31日の1年間に当院に主疾患が脳血管疾患として入院され,FIMデータが揃った173名をコントロール群とした。コントロール群の入院時FIM得点とFIM利得(退院時FIM得点から入院時FIM得点を引いたもの)の散布図より近似曲線を算出し,入院時FIM得点から予測できるFIM利得の期待値とし,対象者の実際に得られたFIM利得を比較した。さらに,熊本脳卒中地域連携ネットワークの重症度分類を用いて,入院時FIM得点を低得点層,中得点層,高得点層の3つに分類し,各分類のFIM利得を対象群とコントロール群とで比較した。


【結果】

実際のFIM利得が期待値を上回ったのは対象群では全体の64%であった。FIMの項目別では移動動作項目において他の項目よりFIM利得が高い結果を示した。さらに層別では,FIM利得において入院時FIMが低い層ほど,FIM利得は高くなるという傾向を示した。次に入院時FIM得点の低得点層を抽出しFIMの各項目別でFIM利得を比較すると,移乗,移動,社会的認知の項目において対象群のFIM利得が有意に向上しており,特に歩行動作,階段昇降ではコントロール群を大きく上回る結果となった。また2つの群の調査年では,患者総数に大きな変化はないものの,一人あたりの取得単位数においてコントロール群よりも対象群が1.6倍大きくなっていた。




【結論】

宮井らは治療時間が長いほど,ADL向上や在院日数の短縮といった良好な結果が得られると報告しており,当院でもリハビリスタッフが増員したことで1人あたりの理学療法時間を拡大し,移乗・移動といったADL上の動作に直結するFIMの項目が向上したと思われる。それに加え,後藤はFIMの社会的認知項目内の問題解決は治療期間や治療の量が関与すると報告しており,社会的認知は移動動作を始めとするFIMの運動項目には相互に陽性的な影響を与えたものと推察された。