第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P24

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-24-5] 脳卒中患者における退院時の歩行速度と退院後の生活空間との関係

―Life Space Assessmentを用いて―

土山裕之, 荒木美由紀, 田中靖華, 高尾和孝 (医療法人社団浅ノ川金沢脳神経外科病院)

キーワード:脳卒中, LSA, 歩行速度

【はじめに,目的】

Life Space Assessment(以下LSA)は,生活の空間的な広がりにおける移動を評価する指標である。しかし,脳卒中患者に対する調査は十分とはいえない。今回,退院時の歩行速度が退院後の身体活動とどのように関連するかを住居内から町外まで5分割し検討したので報告する。


【方法】

対象は,当院回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中患者で,2014年9月から2015年2月の間に歩行自立・監視にて自宅退院となった18名とした。男女の内訳は,男性12名,女性6名で平均年齢は,65.7±11.8歳であった。Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)の内訳は,3が1名,4が1名,5が6名,6が10名であった。補装具の使用は,杖・装具のみであった。退院1ヵ月後に電話にてLSAの聞き取り調査を行った。また,退院時の歩行能力として10m快適歩行速度,10m最大歩行速度を評価した。それぞれ歩行速度の平均値を境界値として高速群と低速群の2群に分けた。統計処理は,10m快適歩行速度,10m最大歩行速度それぞれ各項目(レベル1住居内,レベル2居住空間のごく近くの空間,レベル3自宅近隣,レベル4町内,レベル5町外)ごとに高速群LSAと低速群LSAの違いについてそれぞれMann-WhitneyのU検定を利用し有意水準5%とした。統計処理には,IBM社製SPSS ver.22を用いた。


【結果】

10m快適歩行速度において,レベル2(高速群LSA:12.6±4.1点,低速群LSA:8.6±3.4点),レベル3(高速群LSA:15.2±4.7点,低速群LSA:6.7±3.6点),レベル4(高速群LSA:16.9±7.1点,低速群LSA:8.4±4.7点)で高速群と低速群のLSAの間にそれぞれ有意差が見られたが,レベル1(高速群LSA:8.0±0.0点,低速群LSA:7.3±1.0点)とレベル5(高速群LSA:8.3±7.1点,低速群LSA:8.4±4.7点)では,高速群と低速群のLSAの間に有意な差は見られなかった。10m最大歩行速度においても同様にレベル2(高速群LSA:13.9±2.7点,低速群LSA:7.2±2.3点),レベル3(高速群LSA:15.8±3.4点,低速群LSA:6.0±3.0点),レベル4(高速群LSA:17.8±6.4点,低速群LSA:7.6±3.7点)で高速群と低速群のLSAの間にそれぞれ有意差が見られたが,レベル1(高速群LSA:8.0±0.0点,低速群LSA:7.3±1.0点)とレベル5(高速群LSA:10.6±13.3点,低速群LSA:1.1±3.3点)では,高速群と低速群のLSAの間に有意な差は,見られなかった。


【結論】

10m歩行時間は,評価時間やコストが低く,臨床上優れた評価指標である。今回の調査にて居住空間のごく近くの空間から町内において歩行能力が関連している結果となった。しかし,居住内や町外においては,関連が見られなかった。このことは,退院時の10m歩行時間が居室外から町内での活動予測としては,指標となりうるが居室内や町外などの活動範囲では,指標になりにくいことを示唆しており,活動予測として考慮すべき点と考えられる。