[P-NV-25-1] 脳卒中後遺症者における位置覚の経時的変化に影響を及ぼす要因の検討
キーワード:脳卒中, 位置覚, 経時的変化
【はじめに,目的】
脳卒中者の臨床場面において,麻痺側上肢を忘れるということを多々経験する。脳卒中者の位置覚は経時的変化に伴い誤差が生じることに関して,50回本学会にて報告した。しかし,誤差に影響を及ぼす要因に関しては,明らかとなっていない。そこで本研究では,位置覚の経時的変化に影響を及ぼす要因との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,回復期病院入院中の脳卒中片麻痺者20名(男性15名:女性5名,平均年齢64.7±10.3歳,左片麻痺14名:右片麻痺6名)とした。位置覚の経時的変化は,閉眼の背臥位において,麻痺側肘関節を30°に角度設定し,非麻痺側肘関節で模倣させる方法を用いた。開始時より,3分毎,計9分間,各3回ずつ試行し,デジタルゴニオメータで非麻痺側(模倣側)と麻痺側(角度設定側)間の誤差を誤差角度として算出した。各測定項目は,Stroke Impairment Assessment Set(SIAS),Brunnstrom recovery stage(Br.s.),触覚検査,振動覚検査,二点識別覚検査,母指さがし試験,Trail-Making-Test-PartA(TMT-A),Jikei Assessment Scale for Motor Impairment in Daily Living(JASMID)をそれぞれ測定した。脳卒中者の誤差角度の変化と各測定項目との関係性については,従属変数を誤差角度の変化(9分後の誤差角度-開始時の誤差角度),独立変数を各測定項目とし,重回帰分析を用いた。また,誤差角度の変化と各測定項目における相関関係は,Spearmanの順位相関係数を用いた。統計学的解析はSPSS ver.21を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
設定角度30°において,誤差角度の変化を従属変数,11項目を独立変数とした重回帰分析の結果では,影響を与える要因として,母指さがし試験(β=0.95,p<. 01),発症日日数(β=0.92,p<. 01),JASMID使用頻度(β=0.91,p<. 05),Br.s.上肢(β=-0.74,p<. 05),TMT-A(β=-0.74,p<. 05)が選択された(調整済みR2=0.41)。誤差角度の変化と相関関係を認めた項目は,発症日日数(rs>0.5,p<.05),母指さがし試験であった(rs>0.5,p<.05)。
【結論】
今回対象とした脳卒中後遺症者では,位置覚の経時的変化に影響を及ぼす要因として,母指さがし試験,発症日日数,JASMID使用頻度,Br.s.上肢,TMT-Aが選択された。位置覚は筋,腱,皮膚,関節受容器など感覚情報が統合され,位置感覚として認識されるといわれている。本研究において,その他の感覚検査との関連性が示されなかった結果より,位置覚の経時的変化は,固有感覚が重要であることが示唆された。理学療法学研究の意義として,本研究は脳卒中者における位置覚の経時的変化に影響を及ぼす要因を明らかにしたことで,深部感覚に関する評価・治療,麻痺側上肢のポジショニングなどに貢献しうるものである。
脳卒中者の臨床場面において,麻痺側上肢を忘れるということを多々経験する。脳卒中者の位置覚は経時的変化に伴い誤差が生じることに関して,50回本学会にて報告した。しかし,誤差に影響を及ぼす要因に関しては,明らかとなっていない。そこで本研究では,位置覚の経時的変化に影響を及ぼす要因との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,回復期病院入院中の脳卒中片麻痺者20名(男性15名:女性5名,平均年齢64.7±10.3歳,左片麻痺14名:右片麻痺6名)とした。位置覚の経時的変化は,閉眼の背臥位において,麻痺側肘関節を30°に角度設定し,非麻痺側肘関節で模倣させる方法を用いた。開始時より,3分毎,計9分間,各3回ずつ試行し,デジタルゴニオメータで非麻痺側(模倣側)と麻痺側(角度設定側)間の誤差を誤差角度として算出した。各測定項目は,Stroke Impairment Assessment Set(SIAS),Brunnstrom recovery stage(Br.s.),触覚検査,振動覚検査,二点識別覚検査,母指さがし試験,Trail-Making-Test-PartA(TMT-A),Jikei Assessment Scale for Motor Impairment in Daily Living(JASMID)をそれぞれ測定した。脳卒中者の誤差角度の変化と各測定項目との関係性については,従属変数を誤差角度の変化(9分後の誤差角度-開始時の誤差角度),独立変数を各測定項目とし,重回帰分析を用いた。また,誤差角度の変化と各測定項目における相関関係は,Spearmanの順位相関係数を用いた。統計学的解析はSPSS ver.21を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
設定角度30°において,誤差角度の変化を従属変数,11項目を独立変数とした重回帰分析の結果では,影響を与える要因として,母指さがし試験(β=0.95,p<
【結論】
今回対象とした脳卒中後遺症者では,位置覚の経時的変化に影響を及ぼす要因として,母指さがし試験,発症日日数,JASMID使用頻度,Br.s.上肢,TMT-Aが選択された。位置覚は筋,腱,皮膚,関節受容器など感覚情報が統合され,位置感覚として認識されるといわれている。本研究において,その他の感覚検査との関連性が示されなかった結果より,位置覚の経時的変化は,固有感覚が重要であることが示唆された。理学療法学研究の意義として,本研究は脳卒中者における位置覚の経時的変化に影響を及ぼす要因を明らかにしたことで,深部感覚に関する評価・治療,麻痺側上肢のポジショニングなどに貢献しうるものである。