[P-NV-25-3] 脳卒中片麻痺者の歩行自立に影響する運動機能とその基準
キーワード:脳卒中, 歩行, カットオフ値
【はじめに,目的】
本研究の目的は,脳卒中片麻痺者の歩行自立に影響する運動機能について明らかにすることである。さらに,カットオフ値についても検討し,歩行自立の臨床判断および理学療法プログラムの活用に寄与することとした。
【方法】
回復期病院9施設の多施設共同研究にて実施した。対象は一側大脳半球に病巣を有する脳卒中片麻痺者で,小脳や脳幹の病変による明らかな失調症状を生じているもの,原疾患に対する治療により安静度が制限されているもの,検査の実施が困難な著しい高次脳機能障害や認知症を伴うもの,重度の骨関節疾患や下肢の痛み,視力障害により歩行制限のあるもの,2回以上の発作を生じたものは除外した。収集された症例数は193名(男性120名,女性73名,年齢66.8±14.8歳,発症からの日数104.5±79.1日,右麻痺93名,左麻痺100名)。横断研究にて実施し,検査項目は,FIM(Functional Impairment Measure)の歩行自立度,臨床的体幹機能検査(FACT:Functional Assessment for Control of Trunk),SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)の上肢(近位・遠位),下肢(近位股関節・近位膝関節・遠位),体幹機能(腹筋力・垂直性),非麻痺側機能(大腿四頭筋筋力),BRS(Brunnstrom Recovery Stage)。統計処理はSPSS ver22 for Windowsを使用した。多重共線性の問題を避けるため事前に独立変数間で相関変数を求め,歩行自立度を従属変数としたステップワイズ多重ロジスティック回帰分析を行った。歩行自立度はFIMの歩行能力で1~5点を非自立群,6,7点を自立群とした。さらにロジスティック回帰分析によって選択された因子は,ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を用いて,曲線下面積(AUC:Area Under the Curve)にて適合性を判定し,歩行自立・非自立を判別するカットオフ値を検討した。カットオフ値はYouden indexを使用した。
【結果】
独立変数間で0.8以上の高い相関の項目を考慮した結果,SIAS上肢(遠位),下肢(近位股関節・遠位),体幹(腹筋力・垂直性),非麻痺側機能,BRS下肢,FACTを多重ロジスティック解析の独立変数とした。ロジスティック解析分析ではオッズ比1.97(95%CI:1.37-2.83)で「BRS下肢」,1.43(95%CI:0.95-2.15)で「SIAS体幹腹筋力」,1.21(95%CI:1.10-1.33)で「体幹機能:FACT」が有意な変数として採択された。さらに歩行自立のカットオフ値は「BRS下肢」stageV,「SIAS体幹腹筋力」3点,「体幹機能:FACT」14点となった。
【結論】
多施設共同研究にて,脳卒中片麻痺者に対して歩行自立に関係する因子を多重ロジスティック解析にて検討した。運動機能において「BRS下肢」,「SIAS体幹腹筋力」,「体幹機能:FACT」が有意な変数として採択され,それぞれのカットオフ値が,「BRS下肢」stageV,「体幹腹筋力」3点,「体幹機能:FACT」14点となった。
本研究の目的は,脳卒中片麻痺者の歩行自立に影響する運動機能について明らかにすることである。さらに,カットオフ値についても検討し,歩行自立の臨床判断および理学療法プログラムの活用に寄与することとした。
【方法】
回復期病院9施設の多施設共同研究にて実施した。対象は一側大脳半球に病巣を有する脳卒中片麻痺者で,小脳や脳幹の病変による明らかな失調症状を生じているもの,原疾患に対する治療により安静度が制限されているもの,検査の実施が困難な著しい高次脳機能障害や認知症を伴うもの,重度の骨関節疾患や下肢の痛み,視力障害により歩行制限のあるもの,2回以上の発作を生じたものは除外した。収集された症例数は193名(男性120名,女性73名,年齢66.8±14.8歳,発症からの日数104.5±79.1日,右麻痺93名,左麻痺100名)。横断研究にて実施し,検査項目は,FIM(Functional Impairment Measure)の歩行自立度,臨床的体幹機能検査(FACT:Functional Assessment for Control of Trunk),SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)の上肢(近位・遠位),下肢(近位股関節・近位膝関節・遠位),体幹機能(腹筋力・垂直性),非麻痺側機能(大腿四頭筋筋力),BRS(Brunnstrom Recovery Stage)。統計処理はSPSS ver22 for Windowsを使用した。多重共線性の問題を避けるため事前に独立変数間で相関変数を求め,歩行自立度を従属変数としたステップワイズ多重ロジスティック回帰分析を行った。歩行自立度はFIMの歩行能力で1~5点を非自立群,6,7点を自立群とした。さらにロジスティック回帰分析によって選択された因子は,ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を用いて,曲線下面積(AUC:Area Under the Curve)にて適合性を判定し,歩行自立・非自立を判別するカットオフ値を検討した。カットオフ値はYouden indexを使用した。
【結果】
独立変数間で0.8以上の高い相関の項目を考慮した結果,SIAS上肢(遠位),下肢(近位股関節・遠位),体幹(腹筋力・垂直性),非麻痺側機能,BRS下肢,FACTを多重ロジスティック解析の独立変数とした。ロジスティック解析分析ではオッズ比1.97(95%CI:1.37-2.83)で「BRS下肢」,1.43(95%CI:0.95-2.15)で「SIAS体幹腹筋力」,1.21(95%CI:1.10-1.33)で「体幹機能:FACT」が有意な変数として採択された。さらに歩行自立のカットオフ値は「BRS下肢」stageV,「SIAS体幹腹筋力」3点,「体幹機能:FACT」14点となった。
【結論】
多施設共同研究にて,脳卒中片麻痺者に対して歩行自立に関係する因子を多重ロジスティック解析にて検討した。運動機能において「BRS下肢」,「SIAS体幹腹筋力」,「体幹機能:FACT」が有意な変数として採択され,それぞれのカットオフ値が,「BRS下肢」stageV,「体幹腹筋力」3点,「体幹機能:FACT」14点となった。