[P-NV-27-2] 急性期脳卒中患者を対象とした歩行自立判断のためのSeated Side Tapping testの有用性について
キーワード:歩行自立度, 体幹機能, 急性期脳卒中
【はじめに,目的】
急性期脳卒中患者において,日々変化する歩行状態を把握することは臨床上非常に重要であり,歩行自立度の判断には客観的な評価が必須である。臨床では立位姿勢で実施するTimed Up &Go test(TUG)や片脚立位時間などが歩行自立度の判定に用いられることが多い。脳卒中患者の運動機能を評価する場合,立位でのテストには,転倒の危険があり安全に評価することができないことが多いため,座位で運動機能を安全に測定できるSeated Side Tapping test(以下SST)を岩田らは開発し,その有用性を示している。今回我々はSSTに着目し急性期脳卒中患者の歩行自立度判定に有効か検討し若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は当院で入院治療を行った脳卒中患者46名である。この対象者46名を,屋内歩行自立群27名(男性24名,女性3名,平均年齢74.07±4.97歳),屋内歩行監視群19名(男性11名,女性8名,平均年齢71.96±8.38歳)に分類した。調査項目として膝関節伸展筋力,10m最速歩行時間(以下歩行時間),TUG,SST,Berg Balance scale(以下BBS),Functional Assessment for Control of Trunk(以下FACT)を測定した。SSTの測定方法は背もたれのない座面高さ41cmの椅子に着座させ,両上肢を側方拳上させた状態で指尖から10cm遠方かつ72cm高さに目標物を設置し,交互に10回たたく所要時間を計測した。屋内歩行自立群,屋内歩行監視群の2群間の統計学的検定には,Mann_WhitneyのU検定を用いた。相関関係はSpearmanの順位相関係数を用い,多重共線性を考慮するために各項目間の相関関係についても検証した。SSTの規定因子を調べるためSSTを従属変数,SSTと有意な相関関係を認めた項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。
【結果】
SSTは屋内歩行自立群10.00±2.45秒,屋内監視群13.93±2.72秒で両群間に有意差を認めた(p<0.01)。SSTとの相関関係では,TUG(r=0.68,p<0.01),歩行時間(r=0.72,p<0.01),BBS(r=0.65,p<0.01)と有意な相関関係を認めた。また,重回帰分析により独立変数として採択された変数はTUG(決定係数0.74)であった。
【結論】
本研究において,屋内歩行自立群は屋内歩行監視群と比較して,SSTの値が有意に低値を示し,測定時間は平均10秒であった。また,重回帰分析よりSSTの影響因子としてTUGが採択された。SSTは座位での体幹機能評価として開発されたものであるが,立位での動的バランス機能を反映するTUGが採択されたことから,立位でのパフォーマンスと関連する可能性が示唆された。これより立位テストが困難な急性期脳卒中患者に対し,安全な運動機能評価としてSSTは有用なものであると考える。また,屋内自立群でSSTの判断基準が示され,目安として10秒以下で屋内歩行自立が可能になることがわかり,SSTの評価方法は急性期脳卒中患者において歩行自立度を判断する評価基準となりうる可能性が示唆された。
急性期脳卒中患者において,日々変化する歩行状態を把握することは臨床上非常に重要であり,歩行自立度の判断には客観的な評価が必須である。臨床では立位姿勢で実施するTimed Up &Go test(TUG)や片脚立位時間などが歩行自立度の判定に用いられることが多い。脳卒中患者の運動機能を評価する場合,立位でのテストには,転倒の危険があり安全に評価することができないことが多いため,座位で運動機能を安全に測定できるSeated Side Tapping test(以下SST)を岩田らは開発し,その有用性を示している。今回我々はSSTに着目し急性期脳卒中患者の歩行自立度判定に有効か検討し若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は当院で入院治療を行った脳卒中患者46名である。この対象者46名を,屋内歩行自立群27名(男性24名,女性3名,平均年齢74.07±4.97歳),屋内歩行監視群19名(男性11名,女性8名,平均年齢71.96±8.38歳)に分類した。調査項目として膝関節伸展筋力,10m最速歩行時間(以下歩行時間),TUG,SST,Berg Balance scale(以下BBS),Functional Assessment for Control of Trunk(以下FACT)を測定した。SSTの測定方法は背もたれのない座面高さ41cmの椅子に着座させ,両上肢を側方拳上させた状態で指尖から10cm遠方かつ72cm高さに目標物を設置し,交互に10回たたく所要時間を計測した。屋内歩行自立群,屋内歩行監視群の2群間の統計学的検定には,Mann_WhitneyのU検定を用いた。相関関係はSpearmanの順位相関係数を用い,多重共線性を考慮するために各項目間の相関関係についても検証した。SSTの規定因子を調べるためSSTを従属変数,SSTと有意な相関関係を認めた項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。
【結果】
SSTは屋内歩行自立群10.00±2.45秒,屋内監視群13.93±2.72秒で両群間に有意差を認めた(p<0.01)。SSTとの相関関係では,TUG(r=0.68,p<0.01),歩行時間(r=0.72,p<0.01),BBS(r=0.65,p<0.01)と有意な相関関係を認めた。また,重回帰分析により独立変数として採択された変数はTUG(決定係数0.74)であった。
【結論】
本研究において,屋内歩行自立群は屋内歩行監視群と比較して,SSTの値が有意に低値を示し,測定時間は平均10秒であった。また,重回帰分析よりSSTの影響因子としてTUGが採択された。SSTは座位での体幹機能評価として開発されたものであるが,立位での動的バランス機能を反映するTUGが採択されたことから,立位でのパフォーマンスと関連する可能性が示唆された。これより立位テストが困難な急性期脳卒中患者に対し,安全な運動機能評価としてSSTは有用なものであると考える。また,屋内自立群でSSTの判断基準が示され,目安として10秒以下で屋内歩行自立が可能になることがわかり,SSTの評価方法は急性期脳卒中患者において歩行自立度を判断する評価基準となりうる可能性が示唆された。