第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P28

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-28-5] 多職種連携による環境整備は転倒を減少させる

回復期脳卒中患者における検討

木村鷹介1,2, 猪股紗織1, 森田泰裕1, 木村理恵1, 平野努2, 筧智裕2, 山田実2, 梅村悟1, 濱中康治1, 田中尚喜1, 川合美穂子1, 室生祥1 (1.JCHO東京新宿メディカルセンター, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科)

キーワード:環境整備, 転倒予防, 脳卒中

【はじめに,目的】脳卒中患者の転倒発生率は高く,入院患者では20~48%と報告されている。転倒は骨折などの重篤な傷害を招く恐れがあるため,その予防対策が重要である。脳卒中患者における転倒予防対策の一つに生活環境の整備が挙げられ,これには多職種が連携して行うことが望ましいと考えられている。しかし,回復期脳卒中患者を対象として,具体的な方法を示した上で多職種連携による環境整備の効果を検証した報告は少ない。そこで本研究は,回復期脳卒中患者における病棟内歩行自立者の転倒予防対策として,多職種連携による環境整備が有効であるかを検証した。


【方法】デザインは後ろ向きコホート研究とした。対象は2012年7月から2015年10月までに当院回復期病棟に入棟していた脳卒中患者113例とした(平均年齢65.9±12.4歳,男性69.9%)。包含基準は,入棟時に病棟内歩行が自立しておらず,退院までに自立した者とした。このうち,2013年9月以降に歩行が自立した60例(平均年齢66.9±12.2歳,男性66.7%)に対して多職種連携による環境整備を行った。具体的には,①床頭台,②洗面台,③ロッカー,④自動販売機,⑤冷蔵庫,⑥洗濯機を使用する動作,⑦ベッド周辺の環境の7項目について理学療法士,作業療法士が転倒の危険性を評価した。そして,その結果を看護師と情報共有し,各患者の病棟生活における活動に合わせて環境整備を行った。調査項目は,歩行自立日から退院日までの転倒発生の有無,歩行自立日から転倒発生までの日数,年齢,Timed Up and Go test(以下TUG),Berg Balance Scale(以下BBS),Functional Independence Measureの認知項目合計点(以下c-FIM),内服(睡眠剤,向精神薬,抗てんかん薬)の有無とした。このうち,日数以外の項目は先行研究を参考に2値化した。統計解析としては,従属変数に転倒発生を,説明変数に環境整備の有無を,さらに調整変数にχ2検定にてp<0.1であった変数を投入したcox比例ハザード分析を行った(強制投入法)。統計ソフトはSPSS ver22.0を用いた。有意水準は5%とした。


【結果】全対象者における転倒率は14.7%(16/113名)であった。そのうち,多職種連携による環境整備を行った者は8.3%(5/60名),それ以外の者は20.8%(11/53名)であった。χ2検定においてp<0.1であった項目は年齢,TUG,BBSであった。これらの変数で調整したcox比例ハザード分析の結果,環境整備の有無は転倒発生に対する有意な関連要因であり,調整済みハザード比は0.34(95%信頼区間:0.12-0.99)であった。


【結論】転倒発生を従属変数としたcox比例ハザード分析の結果,立位バランス能力や歩行能力などの諸因子で調整しても,多職種連携による環境整備は有意な項目となり,転倒発生を約1/3に抑制していた。したがって,回復期脳卒中患者における病棟内歩行自立者の転倒予防対策として,多職種連携による環境整備は有効であると考えた。