第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P29

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-29-1] 急性期脳血管疾患患者の等尺性膝伸展筋力測定値の測定意義

最上谷拓磨1, 大森圭貢2, 佐々木祥太郎1, 赤尾圭吾1, 熊切博美1, 多田実加1, 堅田紘頌3, 石山大介4, 小山真吾3, 畑中康志3, 大宮一人1 (1.聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院リハビリテーション部, 2.聖マリアンナ医科大学整形外科学講座, 3.聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部, 4.川崎市立多摩病院リハビリテーション科)

キーワード:脳血管疾患, 下肢筋力, 信頼性

【はじめに,目的】膝伸展筋力値は脳血管疾患患者の動作能力と関連しており,慢性期脳血管疾患患者においては等尺性膝伸展筋力値の信頼性も報告されている。しかし,急性期脳血管疾患患者に関する報告は少ない。これは,脳血管疾患発症後の急性期領域では,原疾患に随伴する身体機能の変化が大きく,等尺性膝伸展筋力値の信頼性が明らかにされていないことが主たる要因と考えられる。よって本研究の目的は,急性期脳血管疾患患者の等尺性膝伸展筋力値の測定意義を検討することである。

【方法】対象は平成27年2月から6月に脳梗塞または脳出血により理学療法を実施し,Glasgow Coma ScaleがE4V5M6で,悪性新生物や運動器疾患を有さず,循環動態が安定した者で,理学療法室での理学療法開始時から3日間の等尺性膝伸展筋力値の測定が可能であった者15名とした。測定方法はKatohらの先行研究を参考にし,訓練台に腰掛け,両手は体幹両脇の台上につき,膝関節90度屈曲位でHHD(アニマ社製μTasF100)とベルトを用いて測定した。測定の回数は1日2回(最初に1回の練習を行い,測定手順が正しく遂行されているのを確認の上で2回実施),測定期間は3日間とした。運動時間は約5秒間とし,最大努力による等尺性運動を30秒以上の間隔をあけて行った。統計学的手法は,正規性の検定にKolmogorov-Smirnov検定を用いた。相対信頼性の検討には級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)を用いICC(1,1)を算出した。絶対信頼性の検討にはBland Altman分析を用い,加算誤差と比例誤差の有無を検討した。また,誤差範囲の推定に最小可検変化量を算出した。統計ソフトはSPSS ver12.0を使用した。

【結果】Kolmogorov-Smirnov検定の結果,測定値は正規分布していることが確認された。等尺性膝伸展筋力値(Δ=最大値と最小値の差)は健側が1日目27.5±12.6(Δ2.4±1.9),2日目28.8±12.5(Δ1.2±0.8),3日目30.8±11.8(Δ1.5±0.9)。患側が1日目26.5±14.1(Δ1.8±1.2),2日目27.7±12.8(Δ1.9±1.3)3日目29.0±11.9(Δ2.1±2.0)であった。ICC(1.1)は健,患側共に1,2,3日目の全てで0.98-0.99と優秀であった。Bland Altman分析ではプロットが負の方向に多く,2回目の測定で高値を示す傾向にあったが,加算誤差,比例誤差は認めず,絶対信頼性を有した。最小可検変化量(kgf)は1,2,3日目の順に健側で5.01,2.92,3.29,患側で3.92,4.24,4.80でありおおよそ5.0kgf以下の変化は誤差の範囲内であることが明らかになった。

【結論】急性期脳血管疾患患者においても相対・絶対信頼性が得られたことから等尺性膝伸展筋力値の測定意義が明らかとなった。また等尺性膝伸展筋力値は2回目の測定で高い値が生じやすく,最小可検変化量(5.0kgf)を超える差が生じる場合には再測定などの配慮が必要と考えられる。