第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P29

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-29-2] 非重症くも膜下出血の術後早期における大腿外側部筋厚値の変化

古本太希1, 佐藤紀1, 出口憲市1, 安井苑子2, 谷佳子3, 里見淳一郎4, 永廣信治4, 加藤真介1 (1.徳島大学病院リハビリテーション部, 2.徳島大学医科栄養学科疾患治療栄養学, 3.徳島大学病院栄養部, 4.徳島大学病院脳卒中センター)

Keywords:非重症くも膜下出血, 脳血管攣縮, 下肢筋萎縮

<はじめに,目的>

くも膜下出血(以下,SAH)術後の早期リハビリは,脳卒中ガイドライン2015にて重症度を考慮することが推奨されており,近年高齢の破裂動脈瘤の予後不良が問題視され,この因子として重症度,脳血管攣縮(VS)の合併,長期臥床などが報告されている。このため,非重症SAHでは術後早期から厳格な離床基準により,VSの管理的治療と併用して廃用症候群の予防が重要となるが,この時期における筋萎縮の発生状況は不明確である。そこで本研究では,非重症SAH術後早期より大腿部の筋厚測定し,周術期における筋萎縮の変化を検討した。

<方法>

対象は,2014年1月~2015年5月までに動脈瘤による非重症SAH(H&K gradeI~III)で,開頭クリッピング術またはコイル塞栓術を施行した12例とした。術後リハビリは,離床参加基準および中止基準に準じて医師の指示の下で実施した。大腿部筋厚は,術後翌日から3日目を初期評価(pre),1週(1W)および2週(2W)で測定し,超音波診断装置(HITACHI Noblus)にて8MHzのプローブを使用し,安静背臥位にて上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結んだ線の60%遠位点から3cm外側点で外側広筋と中間広筋を合わせた筋厚を連続2回測定して平均値を算出した。また,足関節固定装具を用いて股関節再現性を高める筋厚測定方法(ICC:0.98)で計測した。各時期の摂取タンパク質,摂取エネルギー,炎症所見,頭痛,血清アルブミン値および術後から離床開始までの日数をカルテ記録より抽出した。統計解析は各時期の比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いて算出し,有意水準は5%未満とした。

<結果>

術後から離床開始までの日数は4.3±2.5であり,CRPでは各時期において有意差を認めなかった。また,頭痛はpre,1Wおよび2Wでそれぞれ6.8±2.4,2.1±2.2,0.8±1.5,摂取タンパク質量が0.2±0.4,0.6±0.4,1.0±0.3g/IBW,摂取エネルギー量が7.2±6.0,17.3±8.9,26.1±8.8kcal/IBWであり,それぞれpreと1Wおよび1Wと2Wとの間に有意差を認めた(p<0.01)。筋厚値では,それぞれ2.8±1.0,2.6±1.0,2.5±1.0cmであり,preと1Wとの間のみ有意差を認めた(p<0.01)。

<結論>

本研究より,非重症SAH術後のより早期に大腿部の筋萎縮が生じることが示唆された。この要因としては,対象に血管内治療例もあり,術後の炎症サイトカイン上昇に伴う筋タンパク異化亢進の影響は少なく,SAH術後に残存する頭痛に伴う食欲不振にて摂取タンパク質およびエネルギー量の不足,術後の離床遅延に伴う不活動により大腿部筋萎縮が生じた可能性がある。このため,非重症SAH術後の早期リハビリでは頭蓋内圧の亢進症状などを考慮した厳格な基準下での早期離床により,症候性の脳血管攣縮の検出率を向上させることに加えて,特に高齢SAH患者では長期臥床に伴う廃用症候群の予防目的とした早期離床訓練の重要性も示唆された。