[P-NV-29-3] 地域在住高齢者に対するフィードバックの方法の違いが片脚立位バランスに与える影響
Keywords:運動学習, 片脚立位, ビデオフィードバック
【はじめに,目的】
運動学習にはフィードバック(FB)情報が重要であり,視覚的FBがバランス学習に重要であるとされている。冷水ら(2011)は,健常成人のバランス学習においてビデオ映像によるFB付加が効果的であると報告している。しかし,FBの方法の違いがバランス学習に与える影響について高齢者を対象とした報告は少ない。そこで本研究は健常成人と地域在住高齢者を対象にFBの方法の違いが片脚立位時の重心動揺に与える影響について検討した。
【方法】
対象は地域在住高齢者21名(男性10名,女性11名,平均年齢73.5±4.3歳),健常成人21名(男性10名,女性11名,平均年齢21.4±0.7歳)とし,7名ずつ無作為にコントロール群(CR群),鏡フィードバック群(鏡群),ビデオフィードバック群(ビデオ群)の3群に割り当てた。課題は利き足での10秒間の開眼片脚静止立位保持とした。測定は重心動揺計zebris(インターリハ社製)上で前方の指標を注視し行った。研究手順はpre test(pre)を実施し,練習を2回行った後post test(post)を実施した。また学習保持効果をみるため翌日にretention test(retention)を実施した。鏡群は正面に全身鏡を設置し,自身の姿勢を見ながら課題遂行した。ビデオ群は2回の練習を正面から一眼レフカメラ(canon社)にて動画撮影し,それをパソコン上に表示して休憩中に閲覧した。CR群はFBを行わずに課題遂行した。各試行間には5分間の休憩を挟んだ。
計測項目から総軌跡長,外周面積を採用し,preとpostおよびretentionに対して,高齢者と成人,群による効果を二元配置分散分析にて比較した。群間ではpreからpost,postからretentionの変化量を比較した。多重比較検定にはTukey-kramer法を用いた。有意水準は危険率5%とした。
【結果】
各FBによる効果では,高齢者のビデオ群において,総軌跡長ではpreと比較してretentionが有意に減少(423.8cm→352.6cm),外周面積ではpreと比較してpostおよびretentionが有意に減少した(283.1cm2→160.4cm2,157.4cm2)。また高齢者のCR群において,外周面積ではpostと比較してretentionで有意に増大した(226.9cm2→399.5cm2)。高齢者の鏡群,若年者では有意な差は認められなかった。群間比較では,pre-post変化量では成人,高齢者の総軌跡長および外周面積で有意な差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から,高齢者のバランス学習には鏡FBよりビデオFB付加が効果的であることが示唆された。ビデオ群は課題試行後にビデオFB付加を行ったことにより,誤差学習が促進されたと考えられる。鏡群においては視覚情報に依存し内在的FBによる学習を阻害すること,また同時FBは二重課題となり高齢者にとって課題難易度が高くなることが考えられ,バランス学習には効果的でないことが示唆された。
今後,バランス障害等を有した患者に対する効果を検証していくことで臨床上有用なバランス学習における介入手段への発展に繋がると考える。
運動学習にはフィードバック(FB)情報が重要であり,視覚的FBがバランス学習に重要であるとされている。冷水ら(2011)は,健常成人のバランス学習においてビデオ映像によるFB付加が効果的であると報告している。しかし,FBの方法の違いがバランス学習に与える影響について高齢者を対象とした報告は少ない。そこで本研究は健常成人と地域在住高齢者を対象にFBの方法の違いが片脚立位時の重心動揺に与える影響について検討した。
【方法】
対象は地域在住高齢者21名(男性10名,女性11名,平均年齢73.5±4.3歳),健常成人21名(男性10名,女性11名,平均年齢21.4±0.7歳)とし,7名ずつ無作為にコントロール群(CR群),鏡フィードバック群(鏡群),ビデオフィードバック群(ビデオ群)の3群に割り当てた。課題は利き足での10秒間の開眼片脚静止立位保持とした。測定は重心動揺計zebris(インターリハ社製)上で前方の指標を注視し行った。研究手順はpre test(pre)を実施し,練習を2回行った後post test(post)を実施した。また学習保持効果をみるため翌日にretention test(retention)を実施した。鏡群は正面に全身鏡を設置し,自身の姿勢を見ながら課題遂行した。ビデオ群は2回の練習を正面から一眼レフカメラ(canon社)にて動画撮影し,それをパソコン上に表示して休憩中に閲覧した。CR群はFBを行わずに課題遂行した。各試行間には5分間の休憩を挟んだ。
計測項目から総軌跡長,外周面積を採用し,preとpostおよびretentionに対して,高齢者と成人,群による効果を二元配置分散分析にて比較した。群間ではpreからpost,postからretentionの変化量を比較した。多重比較検定にはTukey-kramer法を用いた。有意水準は危険率5%とした。
【結果】
各FBによる効果では,高齢者のビデオ群において,総軌跡長ではpreと比較してretentionが有意に減少(423.8cm→352.6cm),外周面積ではpreと比較してpostおよびretentionが有意に減少した(283.1cm2→160.4cm2,157.4cm2)。また高齢者のCR群において,外周面積ではpostと比較してretentionで有意に増大した(226.9cm2→399.5cm2)。高齢者の鏡群,若年者では有意な差は認められなかった。群間比較では,pre-post変化量では成人,高齢者の総軌跡長および外周面積で有意な差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から,高齢者のバランス学習には鏡FBよりビデオFB付加が効果的であることが示唆された。ビデオ群は課題試行後にビデオFB付加を行ったことにより,誤差学習が促進されたと考えられる。鏡群においては視覚情報に依存し内在的FBによる学習を阻害すること,また同時FBは二重課題となり高齢者にとって課題難易度が高くなることが考えられ,バランス学習には効果的でないことが示唆された。
今後,バランス障害等を有した患者に対する効果を検証していくことで臨床上有用なバランス学習における介入手段への発展に繋がると考える。