第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P01

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-01-6] 挿管下人工呼吸器装着患者に対する専従理学療法士配置による集中的早期リハビリテーションの効果

西原浩真1, 岩田健太郎1, 前川利雄1, 井澤和大2, 小柳圭一1, 瀬尾龍太郎3, 朱祐珍3 (1.神戸市立医療センター中央市民病院リハビリテーション技術部, 2.神戸大学大学院保健学研究科, 3.神戸市立医療センター中央市民病院救急部)

キーワード:挿管下人工呼吸器管理, 早期リハビリテーション, 専従理学療法士

【はじめに,目的】Schweickert, et al.,(2009)は72時間以上の人工呼吸器管理を受ける患者群を対象としたRandomized Controlled Trialにて,早期理学療法及び作業療法が人工呼吸期間短縮,せん妄期間短縮,そして退院時activities of daily living(ADL)の向上に寄与すると報告している。本研究の目的は挿管下人工呼吸器装着患者に対する専従理学療法士(PT)の配置前後での集中的早期リハビリテーション(リハ)の効果について明らかにすることである。

【方法】対象は,当院Intensive Care Unit(ICU)において専従PT配置前である2013年5月から12月までの入室患者389例中リハ介入をした連続353例のうち,挿管下人工呼吸器管理が3日間以上の40例(非専従群,平均年齢66.4歳,死亡例・脳神経外科を除く)と配置後である2014年5月から12月までの入室患者541例中,リハ介入があった連続460例のうち,挿管下人工呼吸器管理が3日間以上の61例(専従群,平均年齢65.7歳,死亡例・脳神経外科を除く)である。

我々は,PT配置前後での鎮静剤3剤(プロポフォール,ミダゾラム,デクスメデトミジン)の総投与量,APACHEIIスコア,入室期間,リハ開始,離床及び抜管までの日数,人工呼吸器装着期間,肺合併症罹患率(ICU入室後,新たに出現した肺炎,人工呼吸器関連肺炎),Ventilator-free days(VFD),在院日数,歩行自立到達率,在宅復帰率を両群で比較検討した。

【結果】専従群と非専従群における鎮静剤総投与量は,プロポフォール(199.2±222.7 vs. 192.4±267.1 ml,p=0.79),ミダゾラム(119.8±203.2 vs. 79.3±50.7 ml,p=0.62),デクスメデトミジン(191.8±310.3 vs. 84.6±120.4 ml,p=0.19)で差はなかった。またAPACHEIIスコア(19.1±9.7 vs. 19.3±11.8日,p=0.93),入室期間(4.9±8.3 vs. 4.5±4.8日,p=0.46)においても差はなかった。専従群は非専従群に比し,リハ開始(1.4±1.8 vs. 2.4±1.9日,p=0.001)および離床開始(3.0±3.8 vs. 4.3±5.3日,p=0.004)までの日数,人工呼吸器装着期間(5.1±9.2 vs. 8.5±15.4日,p=0.04),VFD(19.6±7.0 vs. 12.5±8.6日,p<0.001),肺合併症罹患率(31.1% vs. 52.5%,p=0.03),歩行自立到達率(39.3% vs. 20%,p=0.01),そして在院日数(27.0±24.6 vs. 33.8±28.6日,p<0.001)に差を認めた。

【結論】当院ICUにおいて,専従PT配置前後での鎮静剤3剤の総投与量,APACHEIIスコア,入室期間に差はなかった。しかし,専従PT導入後は,頻度は増加し,リハ開始及び離床開始が早まった。その結果,患者の日中の覚醒と活動度は維持され,人工呼吸器装着期間は短縮,VFDは延長,肺合併症罹患率は低下した。また,退院時の歩行自立到達率は高く,在院日数も短縮した。以上より,挿管下人工呼吸器管理が3日間以上継続した重症な患者に対する専従PT配置による集中的早期リハの効果はあるものと考えられた。