第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-01-5] Physical functional test for the ICUを用いたICU入室患者の身体機能と骨格筋量の変化

藤沢千春1,2, 玉木彰2, 生島秀樹1, 松岡弘典3 (1.神鋼記念病院リハビリテーションセンター, 2.兵庫医療大学大学院医療科学研究科, 3.神鋼記念病院呼吸器内科)

Keywords:ICU, 骨格筋量, 身体機能

【はじめに,目的】

集中治療室(Intensive care unit;ICU)入室患者の身体機能評価は早期離床や筋力低下予防を目的とした運動療法立案のためにも,その必要性は大きい。近年,信頼性と妥当性・安全性の高いICU管理中の身体機能評価方法が確立されている。しかし,ICU管理中は身体機能評価に加えて骨格筋量測定や筋力測定など包括的評価が運動療法や効果判定には必要である。本研究の目的はICU入室患者の身体機能と骨格筋量・筋力の変化を明らかにすることである。


【方法】

本研究では2015年6月から2015年10月に当院のICUに入室し,48時間以上の人工呼吸器管理が必要であった患者を対象とした。除外基準は人工呼吸器管理が48時間未満および脳卒中,四肢切断,脳腫瘍,外傷性脳損傷患者とした。評価プロトコルは入室時からICU入室5日以内に初期評価を,更にICU退室時と退院時にそれぞれ評価を実施した。対象者の身体機能評価には4-item physical functional test for the ICU(PFIT-s)を用いた。PFIT-s評価前にDe Jongthらの覚醒判定基準の3/5項目以上が実施できる場合にスコアリングを行い,2/5項目以下の場合のスコアリングは0点とした。ICU-acquired weaknessの評価としてMedical research council muscle test(MRC-sum score)と握力測定を実施した。ICU入室時と退室時の骨格筋量変化は脊柱起立筋のCross-sectional area(CSA)をコンピューター断像法で評価した。本研究の情報バイアスに対しては単盲検法を用いて対応した。単盲検法は本研究の対象者を認識していない理学療法士5名が各評価を実施した。欠測データに関してはMissing at randomと仮定して最小二乗法によるデータ補完を実施した。統計解析はSPSS ver. 21を使用して一元配置分散分析と対応のあるt検定を実施し,統計学的有意水準は5%に設定した。


【結果】

研究期間内に対象となった患者は51名であり,除外となった患者が44名であった。本研究対象者は7名となり,最終評価完遂例が6名であった。人工呼吸器管理の日数は15.67±18.1日,ICU管理日数は17.0±13.4日であった。PFIT-sはICU入室時1.8±2.02点,退室時2.62±2.31点,退院時5.57±3.21点であり,ICU入室時と退院時,退室時と退院時に有意差を認めた(P<0.05)。MRC-sum scoreと握力は左右共に全期間で有意差を認めなかった。CSA(Rt/Lt)は入室時175.14/172.83±22.07/15.44mm2から退室時153.96/149.52±14.76/21.49mm2で有意な低下を示した(Rt;P<0.05,効果量=1.02,1-β=0.96,95%信頼区間=1.69~40.68。Lt;P<0.05,効果量=0.98,1-β=0.95,95%信頼区間=1.06~35.29)。


【結論】

本研究の結果からICU入室から退室間に骨格筋量が大きく減少することから,ICU入室期間内に骨格筋量低下の予防を,退院までの期間内に筋力増強を目的とした筋力トレーニングをプログラムしていく必要性が考えられた。骨格筋量維持と筋力増強効果により身体機能を早期に改善できる可能性が考えられる。