第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P04

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-04-5] 頚髄損傷後に生じた無気肺に対するMI-Eの導入とチーム医療

北村健人1, 岩田晋2, 泉田誠3, 柴田淳3, 山下裕1, 岡嵜誉1 (1.春日井市民病院リハビリテーション技術室, 2.春日井市民病院呼吸器内科, 3.春日井市民病院整形外科)

Keywords:頚髄損傷, 無気肺, チームアプローチ

【はじめに,目的】

Mechanical Insufflation-Exsufflation(MI-E)は,主に機能的な咳が行えない・拘束性換気障害のある患者に適応される気道粘液除去装置である。今回,頚髄損傷を受傷後,無気肺を発症し治療に難渋した症例を経験した。脊髄損傷におけるMI-E導入の報告が少ない中,Bronchofiverscopy(BFS)での吸痰と併用する形でMI-Eを導入した。また,多職種とチーム医療を展開することで無気肺の改善を得たため報告する。

【方法】

患者情報:70代男性。病前ADLは自立。頸髄損傷(C2~7)・頸椎骨折を受傷した。

理学療法評価:第6病日よりPT介入開始となった。意識レベルはJCS1-Iであり意思疎通は可能であった。機能障害レベルはASIA機能障害尺度B,Zancolli分類C5Aであった。呼吸状態は自発呼吸可能なものの,胸郭の動きは全体的に低下しており聴診でも肺胞呼吸音が左右で減弱していた。呼吸数は20回/min,SPO2は95%(経鼻2L)であった。喀痰量は多く粘性も高い状態であり,咳嗽力は弱く自己喀痰は不可能であった。自力体交は不可能であり,G-up座位は著明な起立性低血圧に加え,強い頚部痛の出現にて困難な状態であった。

経過:第2病日に椎弓形成術(C3~6)・除圧術(C2~7)を施行しハローベスト着用となった。第3病日に誤嚥性肺炎を発症した。第6病日より去痰不全防止を目的にG-upより離床を検討したが,困難であった。そのため体位ドレナージを中心に介入を継続したが,第8病日に左肺野に無気肺を発症した。SPO2は93%(マスク5L)となった。第11病日より呼吸器内科でのBFSによる吸痰が開始されたが,無気肺の改善は得られなかった。第19病日より隔日でBFSとMI-Eを併用した。リハビリでは徐々にG-upも再開し,病棟スタッフにも日中の体位ドレナージを依頼した。第25病日より痰の粘性・量が低下したためBFSは終了しMI-Eのみで管理が可能となった。SPO2も95%(室内気)となった。

【結果】

第35病日に無気肺の改善を認めた。車椅子への乗車が可能となった時点でMI-Eも終了とした。日中の離床時間の確保は継続した。

【結論】

無気肺改善後は日中の体交・離床・投薬治療を継続することで,MI-Eなしでも肺炎を発症することなく第172病日に転院に至った。本症例の治療では,痰の管理が重要な点であったため,MI-Eの導入を試みた。しかし,本症例の喀痰は多量で粘性が高く,排痰効果はMI-E単独では不十分であった。そのためBFSと併用することで,排痰効果を促進し治療効果を高めたと考える。また,看護師には日中の体位ドレナージを依頼し,リハビリ以外の時間も無気肺の悪化予防に努めた。結果,チームアプローチにより治療効果を最大限に引き上げることができ,無気肺を改善することができたと考える。