第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P05

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-05-4] 体幹回旋柔軟性測定法の開発

―機能的残気量増加による肺気腫モデルを設定して―

竹内誠貴1, 石川良太1, 宇井秀斗1, 遠藤沙紀1, 工藤卓人1, 小山千賀穂1, 佐藤榛花1, 鈴木里沙子1, 藤田拓1, 森岡奏子1, 渡辺麻美1, 久保晃2, 石坂正大2 (1.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科学部生, 2.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:肺活量, 体幹回旋, 呼吸機能

【はじめに,目的】

肺気腫では肺の弾性が失われるとともに機能的残気量(以下FRC)が増大する。臨床では胸郭にとどまらず頚部から骨盤や股関節まで著しく柔軟性が低下している肺気腫症例を経験するが,的確に評価できる測定法が見当たらない。そこで本研究の目的は,FRC増加による肺気腫モデルを設定して体幹回旋柔軟性の低下に及ぼす影響を2種類の測定方法より検討することである。

【方法】

対象は,健常成人80名(男性47名,女性33名)で,年齢は20.2±1.9歳(平均±SD)。

日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が制定したROM-T(以下R-T)に準じた体幹回旋可動域と九藤ら1)によるWing-Testを改訂した変法(以下W-T変法)の2種類で回旋可動域を測定した。

R-Tでは,体幹回旋に伴う肩甲帯による代償を制御するため,両肩関節伸展肘関節屈曲し,肘関節前と胸部背面に棒を通した。股・膝関節は90°屈曲位の座位とし,膝窩はベッドの縁に,足底は床面に接地させ,測定時に棒が背面から離れないように留意した。

W-Tでは,両上肢を最大挙上した背臥位姿勢にて片側の股・膝関節屈曲90度位とし,検者が両肩甲骨を固定する。その後,挙上した下肢を対側方向へ移動し,体幹回旋および股関節内転最終域での膝関節内側と床間の距離を測定するが,我々はその変法として,体幹回旋および股関節内転最終域での床面と大腿の角度を測定した。基本軸は床面と垂直な線,移動軸は大腿骨とした。

FRCはコントロール(安静呼気位)と4条件を設定した。ノーズクリップを装着し,シリンダーにマウスピースをつけ正確に安静呼気位+500ml,+1000ml,+1500ml,+2000mlとし,静かにシリンダー内の空気を流入させFRCを増加させた。順序は被験者毎に無作為とした。この肺気腫モデルで上記のR-TとW-T変法の測定を左右別々に行った。

分析は左右回旋方向とFRC条件を2要因とした反復測定分散分析を実施し,有意水準は5%とした。

【結果】

R-Tではコントロールで約40°,+2000ml条件で約35°と低下し,FRCのみに有意な主効果を認めた(p<0.01)。W-T変法ではコントロールで約65°,+2000ml条件で約57°と低下,右への回旋角度が大きく,FRC,回旋方向ともに有意な主効果を認め(p<0.01),交互作用にも有意差が認められた(p<0.05)。

【結論】

W-T変法は骨盤や股関節の水平面上の動きも反映するためR-Tより測定される可動域が大きく,臨床で経験する胸郭にとどまらない柔軟性の低下をとらえる可能性があると解釈できる。また,回旋可動域に有意な左右差が検出され,胸腰部,骨盤,股関節の運動連鎖が関与した可能性が推察される。さらに交互作用に有意差が認められたことから,FRC増加の程度が増すと左右差もより顕著になる傾向の存在が示唆され,W-T変法による測定は有意義な評価として位置付け可能と考えられる。今後はスパイロメーターによる評価結果と併せてさらに分析を進める必要がある。