第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P07

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-RS-07-2] 早期理学療法介入を含めた多職種による包括的アプローチにてADLを維持できた敗血症の2例

碓井孝治1, 藤吉健史1, 伊藤正憲2, 菅原浩之3, 渡辺和英4, 橋本優5, 廣田幸次郎5 (1.市立砺波総合病院総合リハビリテーションセンター, 2.市立砺波総合病院臨床工学科, 3.市立砺波総合病院外科, 4.市立砺波総合病院大腸肛門科, 5.市立砺波総合病院集中治療・災害医療部)

Keywords:敗血症, 早期介入, ADL

【はじめに,目的】汎発性腹膜炎から敗血症性ショックおよび多臓器障害(以下,MODS)を併発した重症例では,たとえ救命できても日常生活活動(以下,ADL)の低下を来す場合が多い。術直後からのリハビリテーションは人工呼吸器からの離脱やADLの低下を軽減すると期待されるが,その報告は少ない。今回,敗血症やMODSを併発しながらも術直後から理学療法を開始し,独歩で退院に至った2例を経験したので報告する。

【方法】症例1)60歳代女性。入院2日前から上腹部痛が出現。近医を受診したが症状軽快せず,翌日当院に紹介入院となった(第1病日)。癒着性イレウスとして保存的に加療されていたが,第2病日にショックとなり,絞扼性イレウス疑いで緊急手術が行われた。発症から手術までは39時間,APACHEIIスコアは23点(予測死亡率59%)であった。術後,人工呼吸管理下にエンドトキシン吸着療法(以下,PMX-DHP)や播種性血管内凝固症候群(以下,DIC)の治療が行われた。症例2)80歳代女性。腹痛と嘔吐が出現し,近医で施行したCTにてS状結腸の穿孔が疑われ,当院に紹介・搬送となった(第1病日)。同日,緊急に開腹ドレナージ,人工肛門造設術(ハルトマン手術)が施行された。発症から手術までは14時間,APACHEIIスコアは15点(予測死亡率34%)であった。術後は敗血症性ショックからMODS(循環不全,呼吸不全,腎不全,DIC)を併発し,PMX-DHPや持続血液浄化療法等が施行された。

【結果】経過;2例とも術直後から理学療法を開始した。症例1)介入時,軽鎮静下に指示動作可能。第3病日には循環動態が安定し,人工呼吸器からのweaningを進めた。この間,理学療法としてポジショニング,排痰および四肢運動を実施。第4病日に抜管,第5病日から歩行を開始した。順調に術前相応のADLに達し,第21病日に自宅退院となった。症例2)第2病日にせん妄を併発。自発呼吸を温存しつつ第8病日に抜管。それまではポジショニングと四肢運動を実施。抜管前から高熱が続き,第10病日には骨盤腔内に膿瘍形成を認めたが,抗菌薬にて保存的に加療。一方,せん妄のために投薬・抑制管理が行われていたが,積極的な理学療法を行い,離床を進めた。第59病日,術前相応のADLに回復し退院となった。

【結論】今回の2例はともに重症合併症を併発したが,病態・病状に応じて人工呼吸中の覚醒トライアルによる意識レベルの評価や理学療法の提供など早期介入を行った。加えて症例2ではせん妄を合併したが,昼夜リズムを是正し,更なるせん妄の悪化を予防するために日中積極的に離床を促したことは有用であったと考える。原疾患に加え重篤な合併症を併発しても,治療と並行しての早期理学療法介入と可能な限りの早期離床は,元のADLに回復させる可能性があり,今回はそのことを認識できた2例であった。