第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P08

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-08-4] 肺切除を受ける患者の術前フレイル度が術後身体機能に及ぼす影響

山田耕平1, 市ノ瀬有佐1, 横山茂樹2, 桑嶋博史1, 多田善則1, 塩田和輝1, 管原崇1, 玉木久美子1, 木曽靖彦1, 本田とおる3, 小野恭裕3 (1.香川県立中央病院リハビリテーション部, 2.京都橘大学健康科学部理学療法学科, 3.香川県立中央病院リハビリテーション科)

Keywords:周術期, 基本チェックリスト, フレイル

【はじめに,目的】

近年の医療技術の進歩や周術期管理体制の向上に伴い,フレイルを伴った高齢者に対する外科手術件数は増加している。フレイルとは,加齢に伴い身体の予備力が低下し,身体機能障害に陥りやすい状態と定義され,術後の肺合併症やQOLの低下に関連するとされている。フレイルの指標として,本邦では介護予防リスクの評価表である基本チェックリスト(Kihon Check List:KCL)が用いられる。しかし肺切除術の術前に,フレイル度の評価としてKCLを用いた報告は少なく,KCLと周術期の身体機能との関連性は不明である。

今回,肺がんのため肺切除を受ける患者に対して,KCLを用いたフレイル度の術前評価を行い,フレイルの有無が術前後の身体機能にどのような影響を与えるか明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は2015年7月1日から10月1日までの期間に,当院で肺葉切除または肺部分切除を受けた60歳以上の患者16例(男性11例,女性5例,年齢72.9±7.4歳)とした。他の疾患の治療が優先された者,術後に理学療法が実施できなかった者は除外した。

外来来院時に術前指導を行い,自己記入によりKCLを評価した。KCLで7点以下を非フレイル群(11例),8点以上をフレイル群(5例)の2群に分けた。年齢,BMI,切除部位,術後経過については診療録より後方視的に調査した。入院中の術前後に6分間歩行距離(6MWD,m),握力(kg),膝伸展筋力体重比(WBI,kgf/kg)を計測した。各測定値について,フレイルの群間と術前後を2要因とした2元配置分散分析を行った。さらに2群間および術前後の比較にはt検定を用いた。統計解析にはSPSS(ver22)を用い,有意水準は5%とした。


【結果】

WBIでは,フレイルの群間のみに主効果を認めたものの,交互作用はみられなかった。術後はフレイル群が非フレイル群よりも有意に低い傾向にあった(非フレイル群vsフレイル群 術前;0.56±0.16 vs 0.41±0.11,術後;0.52±0.10 vs 0.35±0.10)。6MWDでは,フレイルの群間および術前後に主効果がみられたが,交互作用は認めなかった。群間では,フレイル群が非フレイル群よりも術前および術後に有意に低値を示しており(術前;493.4±64.4 vs 386.4±49.8,術後;318.8±40.4 vs 443.7±78.4),術前後の比較でも,術後はいずれの群も有意に低下していた。


【結論】

WBIは,術後のみフレイル群で非フレイル群より低下していたが,6MWDでは,フレイル群は非フレイル群より術前後のいずれも低値を示していた。つまりフレイル群では,術前に下肢筋力の低下はなかったものの運動耐容能が低下しており,術後は周術期の影響により筋出力も低下し,運動耐容能にも影響を与えたことが推察される。今回,術前評価としてKCLを活用することにより,術前より運動耐容能の改善を目指す運動指導を行うべき対象者をスクリーニングできるとともに,周術期に筋力維持を目的とした指導を導入する必要性が示唆された。