第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P11

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-11-1] 肺炎後廃用症候群に対する理学療法介入効果に影響を及ぼす要因に関する検討

置田諒1, 石橋雄介1, 西田宗幹1, 林久恵2 (1.秋津鴻池病院リハビリテーション部, 2.星城大学リハビリテーション学部)

Keywords:肺炎, ADL, 歩行自立度

【はじめに,目的】

厚生労働省発表資料によれば,肺炎は平成26年の本邦の死因順位において第3位であり,森本らは市中肺炎患者の約7割が65歳以上の高齢者であると報告している。高齢者では死亡率の上昇や肺炎後廃用症候群による身体機能の低下が問題となっている。また,肺炎後廃用症候群によるADLの低下は,安静臥床期間や肺炎重症度等との関連があると報告されている。そこで本研究では,肺炎後廃用症候群に対する理学療法(PT)介入効果を検証するための調査を実施し,ADLの向上に影響を与える要因に関する検討を行なった。

【方法】

対象は平成24年1月から平成26年12月までの期間に当院一般棟に入院し,肺炎後廃用症候群に対してPTを実施した患者とし,追跡期間中の死亡例及び調査項目欠損例は除外した。調査項目は,年齢,性別,安静臥床期間,入院からPT開始までの日数,入院前先,開始時Barthel Index(BI),終了時BI,発症前歩行自立度,入院時CRP,入院時白血球数,誤嚥の有無,精神症状の有無,認知症の有無,肺炎の既往の有無,心不全の既往の有無,脳卒中の既往の有無とし,PTカルテより後方視的に調査を行なった。データ分析は,開始時と終了時BIをMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。次に,ADL改善に影響する要因について,BIの改善を認めた患者を改善群,BIの変化を認めなかった患者を維持群に分類し,χ2検定を用いて2群間での調査項目を比較した。有意差を認めた項目について,クラメールの連関係数を用いて相関を確認した後,2項ロジスティック回帰分析を用いて解析を行なった。いずれも有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象は83名(平均年齢は84.1±10.2歳,男性31名,女性52名)であった。全体での開始時BIは18.9±26.7点,終了時BIは25.4±31.2点で,PTの介入前後で有意に改善を認めた(p<0.01)。改善群(51名)と維持群(32名)の比較では,性別(p=0.03),開始時BI(p<0.01),安静臥床期間(p=0.02),入院前先(p<0.01),発症前歩行自立度(p<0.01),誤嚥の有無(p<0.01),認知症の有無(p<0.01)に有意差を認めた。このうち,クラメールの連関係数が0.5以上の相関を認めた開始時BI,入院前先を除いた項目をロジスティック回帰分析の独立変数として選択した。その結果,発症前歩行自立度に有意差を認めた(p=0.03,オッズ比:4.2,95%信頼区間:1.2-15.2)。

【結論】

肺炎後廃用症候群の患者に対しPTを実施することで,ADLの改善が期待できることが確認できた。また,高齢肺炎後患者は,発症前の歩行自立度がADLの改善に影響する可能性が示唆され,PTの介入にあたり,発症前のADLを把握することの重要性が考えられた。