第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P11

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-11-2] 急性期肺炎患者におけるCS30による歩行自立度の検討

武村裕之, 守川恵助, 稲葉匠吾, 下田隼太, 岡田誠 (松阪市民病院リハビリテーション室)

Keywords:CS30, 退院時歩行自立度, 急性期肺炎患者

【はじめに,目的】入院患者において歩行の自立は,入院中の生活機能や退院後のQOLに関わる重要な因子であり,退院時の歩行自立が可能か否かを早期からスクリーニングすることは重要である。高齢者においては肺炎後の身体機能低下は著しく,入院を機に在宅生活の維持が困難となり,転機先が変更となる症例を多く経験する。30-sec chair stand test(以下CS-30)は高齢者の下肢筋力を簡便に評価する方法として汎用されているが急性期肺炎患者ではCS-30の結果が0回の者が多い。そこで本研究ではCS-30が0回の者と1回以上の者の歩行能力について検討した。

【方法】対象は平成26年9月から平成27年9月まで当院に入院加療を要し,離床,ADL向上目的に理学療法介入があり,データ欠損のない肺炎患者31例(男性:17名,女性14名,平均年齢81.2±6.7歳,平均治療期間23.6±19.9日)とした。除外基準は重度の認知症など以下に示す調査項目が測定不可能であった症例,死亡退院を有する場合とした。調査項目は,診療録より後方視的に収集した。測定項目は,基本情報として年齢,性別,Body Mass Index(以下BMI),採血データとして入院時のCRP,WBC,Cr,eGFR,栄養状態を入院時のAlb,GNRI,退院時の歩行能力はFunctional Independence Measure(以下:FIM)とした。入院時のCS-30が0回群(15人)と1回以上群(16人)に分類し,以上の調査項目を比較検討した。さらに,歩行自立基準をFIM6点以上とし0回群と1回以上群の歩行自立率を求め比較を行った。統計学的解析方法は,各調査項目の群間比較に対応のないt検定,Mann-Whitney U検定,χ2検定を用いた。なお,統計処理はstat Mate ver4.01を用い,危険率5%未満を有意水準とした。

【結果】年齢(0回群:82.9±6.33歳,1回以上群:79.3±6.39歳,p<0.001)は0回群の方が有意に高かった。BMI(0回群:18.3±3.6,1回以上群:21.3±3.5,p<0.001)は1回以上群の方が有意に高かった。GNRI(0回群:76.3±9.1,1回以上群:85.4±10.3,p<0.05)は1回以上群の方が有意に高かった。FIM(0回群3.0±1.5点,1回以上群6.4±0.9点,p<0.001)は1回以上群の方が有意に高かった。歩行自立率(0回群0%,1回以上群68.8%,p<0.001)一回以上群の方が有意に高かった。その他の項目には有意差は認めなかった。

【結論】本研究の結果からはFIMにおいて0回群と1回以上群の間に有意差を認め,歩行自立率においても同様の結果を得た。我々の先行研究では歩行自立にはCS-30の結果が8.5回以上必要とされており,急性期肺炎患者において入院時のCS-30が0回の者は退院時の歩行自立は困難である可能性が示唆された。筋肉量は80歳にはピーク時の30%~40%減少するといわれ,また,低栄養の高齢者では,骨格筋の筋肉量や筋力の低下を認めやすいとされている。本研究の結果からも下肢筋力には年齢や栄養状態が関連していることが示唆された。