[P-RS-11-3] 表面筋電図学的解析を用いた嚥下関連筋の機能評価
―嚥下筋の協調性に着目して評価した誤嚥患者の特性―
Keywords:誤嚥, 協調性, 相対的喉頭位置
【はじめに,目的】肺炎は日本人の死亡原因の第3位であり,今後さらに増加する可能性が考えられる。また,65歳以上の高齢者のうち肺炎罹患者の70%が誤嚥によるものであると報告されている。誤嚥に対する機能評価として表面筋電図学的解析を用いた検討は多くなされているが,嚥下全体の筋活動を量的な指標によって検討されているものが多い。嚥下は舌骨上筋と舌骨下筋の協調作用が重要である。今回は,両筋の協調性について検討し誤嚥を呈す嚥下の問題点を精査することを目的とした。
【方法】嚥下筋活動と協調性の観点から表面筋電図学的解析,および相対的喉頭位置を計測した。対象は,基礎疾患を有さない高齢者で誤嚥性肺炎の診断を受けている高齢者12名(以下,誤嚥群)と食事が自立し安全に摂食活動が行える健常者13名(以下,健常群)とした。表面筋電図学的解析の被験筋は,嚥下機能の活動性を反映する顎二腹筋,甲状舌骨筋とし,MWSTに準じた課題とした。測定項目は,嚥下時に発生する各筋の筋電積分値と嚥下時間とした。筋電積分値は,嚥下で発生する全体の積分値から単位時間当たりに換算して算出した。嚥下時間は,顎二腹筋と甲状舌骨筋の活動を個別に測定した。顎二腹筋においてはA:咽頭運動~筋活動開始時,B:筋活動全体の時間,C:筋活動終了時~咽頭運動終了時とした。甲状舌骨筋も同様の時間尺度でA'B'C'とした。両筋の協調性を評価する為に嚥下運動で発生する筋活動開始時間の誤差(甲状舌骨筋A'-顎二腹筋A:以下①)を算出し協調的な連動性を検討した。相対的喉頭位置については頸部最大伸展位にし,オトガイと喉頭隆起上端の距離と喉頭隆起と胸骨上縁間の距離を設定した。統計的手法として,両群の単位時間当たりの積分値,各筋の時間(A,B,C,A',B',C',①),相対的喉頭位置の差についてMann-Whitney検定を実施した。
【結果】両群における単位時間当たり積分値には差を認めなかった。誤嚥群における甲状舌骨筋Aと筋活動開始時間の誤差①の時間は,健常群と比較して有意に低値を示した。また,相対的喉頭位置は誤嚥群が有意に高値を示し誤嚥群の喉頭が下制していることが示された。
【結論】顎二腹筋と甲状舌骨筋の収縮の協調性の問題が表面化された。健常群では顎二腹筋と甲状舌骨筋の活動性には連動性が認められるが,誤嚥群では甲状舌骨筋の収縮が早い段階で認められ,顎二腹筋と共に活動する同時収縮を示した。誤嚥群と健常群との間に生じた構造的特長として,相対的喉頭位置の下制が挙げられる。この構造変化が直接的な因子になっていることが考えられる。単位時間当たりの積分値には差を認めないことから嚥下筋の活動性の問題ではなく,下制された喉頭を拳上する際の仕事量の増加が制限因子になっているものと考えられた。誤嚥群では,関連筋の活動性ではなく咽頭運動を調整する顎二腹筋と甲状舌骨筋の協調性が制限因子になるものと推察された。
【方法】嚥下筋活動と協調性の観点から表面筋電図学的解析,および相対的喉頭位置を計測した。対象は,基礎疾患を有さない高齢者で誤嚥性肺炎の診断を受けている高齢者12名(以下,誤嚥群)と食事が自立し安全に摂食活動が行える健常者13名(以下,健常群)とした。表面筋電図学的解析の被験筋は,嚥下機能の活動性を反映する顎二腹筋,甲状舌骨筋とし,MWSTに準じた課題とした。測定項目は,嚥下時に発生する各筋の筋電積分値と嚥下時間とした。筋電積分値は,嚥下で発生する全体の積分値から単位時間当たりに換算して算出した。嚥下時間は,顎二腹筋と甲状舌骨筋の活動を個別に測定した。顎二腹筋においてはA:咽頭運動~筋活動開始時,B:筋活動全体の時間,C:筋活動終了時~咽頭運動終了時とした。甲状舌骨筋も同様の時間尺度でA'B'C'とした。両筋の協調性を評価する為に嚥下運動で発生する筋活動開始時間の誤差(甲状舌骨筋A'-顎二腹筋A:以下①)を算出し協調的な連動性を検討した。相対的喉頭位置については頸部最大伸展位にし,オトガイと喉頭隆起上端の距離と喉頭隆起と胸骨上縁間の距離を設定した。統計的手法として,両群の単位時間当たりの積分値,各筋の時間(A,B,C,A',B',C',①),相対的喉頭位置の差についてMann-Whitney検定を実施した。
【結果】両群における単位時間当たり積分値には差を認めなかった。誤嚥群における甲状舌骨筋Aと筋活動開始時間の誤差①の時間は,健常群と比較して有意に低値を示した。また,相対的喉頭位置は誤嚥群が有意に高値を示し誤嚥群の喉頭が下制していることが示された。
【結論】顎二腹筋と甲状舌骨筋の収縮の協調性の問題が表面化された。健常群では顎二腹筋と甲状舌骨筋の活動性には連動性が認められるが,誤嚥群では甲状舌骨筋の収縮が早い段階で認められ,顎二腹筋と共に活動する同時収縮を示した。誤嚥群と健常群との間に生じた構造的特長として,相対的喉頭位置の下制が挙げられる。この構造変化が直接的な因子になっていることが考えられる。単位時間当たりの積分値には差を認めないことから嚥下筋の活動性の問題ではなく,下制された喉頭を拳上する際の仕事量の増加が制限因子になっているものと考えられた。誤嚥群では,関連筋の活動性ではなく咽頭運動を調整する顎二腹筋と甲状舌骨筋の協調性が制限因子になるものと推察された。