[P-RS-12-3] COPDにおける下腿三頭筋の筋萎縮と運動耐容能・閉塞性障害との関連性およびトレーニング効果の検証
キーワード:COPD, 骨格筋, 電気刺激
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)において,併存症としての骨格筋機能障害が身体活動量や予後に影響を及ぼすことが知られている。身体活動量の低下により,抗重力活動が低下し,姿勢保持に必要な抗重力筋の筋力低下が発生することが予想される。COPDに発生する骨格筋障害について,大腿四頭筋の筋萎縮や筋力低下については数多くの報告がみられるが,重要な姿勢保持筋である下腿三頭筋(GAS)についての報告はあまりみられない。またGASは大きな出力を発揮する筋であり,トレーニングには強い負荷が必要な為,COPDでは強化に難渋することが多い。
本研究の目的は,COPD症例のGASの筋萎縮と運動耐容能ならびに閉塞性障害の関連性を分析すること,またGASの随意的なトレーニングと電気刺激を用いたトレーニング(B-SES)を比較し,トレーニング効果を検証することとした。
【方法】
リハビリテーション目的で6週間入院した,症状が安定しているCOPD患者20名(男性19名,女性1名,年齢67.1±12.2歳,GOLD stage II~IV)とした。入院直後に,超音波診断装置による大腿直筋(RF)およびGASの筋厚,1秒率(FEV1.0%),6分間歩行距離(6MWD)を測定し,各対象者の身長で補正したRFおよびGASの筋厚とFEV1.0%ならびに6MWDの相関関係をピアソンの積率相関係数を用いて分析した。GASのトレーニング効果を検証するために,随意的なトレーニングとして,ゴムチューブを用いたresistance training,calf raise,自転車エルゴメーターをプログラムに含む群(CON群)と20分間の大腿・下腿に対する電気刺激トレーニングをプログラムに含む群(B-SES群)をランダムに設定し,5回/週,4週間のトレーニングを実施し,分散分析ならびにBonferroni多重比較検定を用いて両トレーニングによる筋肥大効果の違いを分析した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
RF,GASの筋厚はともにFEV1.0%ならびに6MWDと有意な相関を認めた(p<0.05)。相関係数は,RF-FEV1.0%間0.57,GAS-FEV1.0%間0.60,RF-6MWD間0.43,GAS-6MWD間0.55であった。GAS筋厚に関するトレーニング効果は,CON群では変化を認めなかったのに対し,B-SES群では+9.6%の有意な筋肥大を認めた。
【結論】
RF,GASともに閉塞性障害と運動耐容能に関連性を認めたが,相関係数を比較すると,GASの方が各指標との関連性がやや強いことが示唆された。COPDでは低酸素血症により遅筋線維を優位に減少させるといわれている。GASはヒラメ筋に代表されるように遅筋線維の割合が高いとされており,病態との関連性が強いことが予想され,本結果をもたらしたことが示唆される。以上より,COPDでは大腿だけでなく,下腿の骨格筋の萎縮も病態や運動耐容能と強い関連性があり評価の必要性が高い。一方では強化が難しい部位でもあり,電気刺激などを用いた効果的なトレーニングの実施が必要である。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)において,併存症としての骨格筋機能障害が身体活動量や予後に影響を及ぼすことが知られている。身体活動量の低下により,抗重力活動が低下し,姿勢保持に必要な抗重力筋の筋力低下が発生することが予想される。COPDに発生する骨格筋障害について,大腿四頭筋の筋萎縮や筋力低下については数多くの報告がみられるが,重要な姿勢保持筋である下腿三頭筋(GAS)についての報告はあまりみられない。またGASは大きな出力を発揮する筋であり,トレーニングには強い負荷が必要な為,COPDでは強化に難渋することが多い。
本研究の目的は,COPD症例のGASの筋萎縮と運動耐容能ならびに閉塞性障害の関連性を分析すること,またGASの随意的なトレーニングと電気刺激を用いたトレーニング(B-SES)を比較し,トレーニング効果を検証することとした。
【方法】
リハビリテーション目的で6週間入院した,症状が安定しているCOPD患者20名(男性19名,女性1名,年齢67.1±12.2歳,GOLD stage II~IV)とした。入院直後に,超音波診断装置による大腿直筋(RF)およびGASの筋厚,1秒率(FEV1.0%),6分間歩行距離(6MWD)を測定し,各対象者の身長で補正したRFおよびGASの筋厚とFEV1.0%ならびに6MWDの相関関係をピアソンの積率相関係数を用いて分析した。GASのトレーニング効果を検証するために,随意的なトレーニングとして,ゴムチューブを用いたresistance training,calf raise,自転車エルゴメーターをプログラムに含む群(CON群)と20分間の大腿・下腿に対する電気刺激トレーニングをプログラムに含む群(B-SES群)をランダムに設定し,5回/週,4週間のトレーニングを実施し,分散分析ならびにBonferroni多重比較検定を用いて両トレーニングによる筋肥大効果の違いを分析した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
RF,GASの筋厚はともにFEV1.0%ならびに6MWDと有意な相関を認めた(p<0.05)。相関係数は,RF-FEV1.0%間0.57,GAS-FEV1.0%間0.60,RF-6MWD間0.43,GAS-6MWD間0.55であった。GAS筋厚に関するトレーニング効果は,CON群では変化を認めなかったのに対し,B-SES群では+9.6%の有意な筋肥大を認めた。
【結論】
RF,GASともに閉塞性障害と運動耐容能に関連性を認めたが,相関係数を比較すると,GASの方が各指標との関連性がやや強いことが示唆された。COPDでは低酸素血症により遅筋線維を優位に減少させるといわれている。GASはヒラメ筋に代表されるように遅筋線維の割合が高いとされており,病態との関連性が強いことが予想され,本結果をもたらしたことが示唆される。以上より,COPDでは大腿だけでなく,下腿の骨格筋の萎縮も病態や運動耐容能と強い関連性があり評価の必要性が高い。一方では強化が難しい部位でもあり,電気刺激などを用いた効果的なトレーニングの実施が必要である。