[P-RS-12-5] 重症COPD通院困難患者に対し職場復帰を目指した治療展開
COPMにより治療を立案し,SF-36v2にてQOLを追跡した一症例
キーワード:慢性閉塞性肺疾患, QOL, 症例報告
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の診断基準であり病態を表す気流制限は,生活の質(以下QOL)や予後を反映する評価とは必ずしも一致しない。今回,COPDの呼吸障害に対する理学療法(以下PT)の効果を検討する目的で,職業動作のパフォーマンスとQOLを追跡評価し治療を展開したので考察を加え報告する。
【方法】
カナダ作業遂行測定(以下COPM)により目標と治療戦略を立案し,修正MRC息切れスケール(以下mMRC),Updated BODE index,胸郭拡張差,6分間歩行距離,PCI,COPD assessment test(以下CAT),MOS36-Item Short-Form Health Survey(以下SF-36v2™)にて効果判定を行った。症例は50歳代前半男性。BMI22.4kg/m2。独居。職業ラーメン屋店員。喫煙歴約35年。6年前COPD重症度III期と診断。徐々に症状増悪しX年より在宅酸素療法(安静時O21L,労作時O22L)を開始。X+1年9月,重症度IV期に進行,当院PT目的にて入院し1ヶ月の治療を実施。身体機能面とQOLの改善が得られた。退院前にNPPV導入。週1回の外来PTを実施し職場復帰を果たした。その後の追跡にて,各評価測定値の悪化と外来通院継続困難が原因となり,X+2年8月NPPV再教育及びPT目的のため,約3週間の再入院となった。本発表は再入院時を初期評価,退院時を最終評価とした。
外来通院期間は仕事や家事のため通院が不定期となり,来院時に運動負荷をかけないコンディショニングが中心とならざるを得ない状態であった。しかし入院期間中は,これらの治療に加えNPPVを併用したトレッドミル歩行の高負荷運動療法を実施できた。また自宅での家事動作や職場での姿勢・動作に特化した動作学習も実施できた。
【結果】
初期評価→最終評価で記載。COPM(遂行度/満足度)①呼吸困難を減らす(1→7/1→9)②自分より年上の方に負けないように歩く(1→7/1→5)③咳,痰を減らす(3→10/3→10),平均スコア1.7→8.0/1.7→8.0。mMRC Grade3→2.Updated BODE index12→8点。胸郭拡張差(腋窩-剣状突起-第10肋骨)2.0→2.0-3.0→4.0-4.0→5.0cm。6分間歩行距離205→327 m。PCI 0.41→0.29 beats/m。CAT30→22点。SF-36v2™下位尺度得点は身体機能25→50,身体日常役割機能25→37.5,体の痛み22→31,全体的健康感20→25,活力37.5→56.3,社会生活機能25→37.5,精神日常役割機能25→41.7,心の健康30→55と全ての項目において改善がみられた。退院後,週1回の外来PTを再開し,再職場復帰を果たした。
【結論】
本症例は,家事・仕事による時間・体力的制約により外来通院が困難となり,入院加療が必要となった。通院に体力を消費しない分,入院中では運動負荷をはじめ外来とは異なる治療を展開した。COPD患者の背景は多様であり,治療も画一的ではない。COPMにより個別性を重視した目標設定と治療展開を行い,ラーメン屋で行う動作特性を考えたパフォーマンスの改善を検討できた。不可逆性であり進行性であるCOPDの病態について残存機能に着目し,個別性を重視した治療展開がQOL維持・向上には必要であると考える。
慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の診断基準であり病態を表す気流制限は,生活の質(以下QOL)や予後を反映する評価とは必ずしも一致しない。今回,COPDの呼吸障害に対する理学療法(以下PT)の効果を検討する目的で,職業動作のパフォーマンスとQOLを追跡評価し治療を展開したので考察を加え報告する。
【方法】
カナダ作業遂行測定(以下COPM)により目標と治療戦略を立案し,修正MRC息切れスケール(以下mMRC),Updated BODE index,胸郭拡張差,6分間歩行距離,PCI,COPD assessment test(以下CAT),MOS36-Item Short-Form Health Survey(以下SF-36v2™)にて効果判定を行った。症例は50歳代前半男性。BMI22.4kg/m2。独居。職業ラーメン屋店員。喫煙歴約35年。6年前COPD重症度III期と診断。徐々に症状増悪しX年より在宅酸素療法(安静時O21L,労作時O22L)を開始。X+1年9月,重症度IV期に進行,当院PT目的にて入院し1ヶ月の治療を実施。身体機能面とQOLの改善が得られた。退院前にNPPV導入。週1回の外来PTを実施し職場復帰を果たした。その後の追跡にて,各評価測定値の悪化と外来通院継続困難が原因となり,X+2年8月NPPV再教育及びPT目的のため,約3週間の再入院となった。本発表は再入院時を初期評価,退院時を最終評価とした。
外来通院期間は仕事や家事のため通院が不定期となり,来院時に運動負荷をかけないコンディショニングが中心とならざるを得ない状態であった。しかし入院期間中は,これらの治療に加えNPPVを併用したトレッドミル歩行の高負荷運動療法を実施できた。また自宅での家事動作や職場での姿勢・動作に特化した動作学習も実施できた。
【結果】
初期評価→最終評価で記載。COPM(遂行度/満足度)①呼吸困難を減らす(1→7/1→9)②自分より年上の方に負けないように歩く(1→7/1→5)③咳,痰を減らす(3→10/3→10),平均スコア1.7→8.0/1.7→8.0。mMRC Grade3→2.Updated BODE index12→8点。胸郭拡張差(腋窩-剣状突起-第10肋骨)2.0→2.0-3.0→4.0-4.0→5.0cm。6分間歩行距離205→327 m。PCI 0.41→0.29 beats/m。CAT30→22点。SF-36v2™下位尺度得点は身体機能25→50,身体日常役割機能25→37.5,体の痛み22→31,全体的健康感20→25,活力37.5→56.3,社会生活機能25→37.5,精神日常役割機能25→41.7,心の健康30→55と全ての項目において改善がみられた。退院後,週1回の外来PTを再開し,再職場復帰を果たした。
【結論】
本症例は,家事・仕事による時間・体力的制約により外来通院が困難となり,入院加療が必要となった。通院に体力を消費しない分,入院中では運動負荷をはじめ外来とは異なる治療を展開した。COPD患者の背景は多様であり,治療も画一的ではない。COPMにより個別性を重視した目標設定と治療展開を行い,ラーメン屋で行う動作特性を考えたパフォーマンスの改善を検討できた。不可逆性であり進行性であるCOPDの病態について残存機能に着目し,個別性を重視した治療展開がQOL維持・向上には必要であると考える。