第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本小児理学療法学会 一般演題ポスター
小児P04

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-SN-04-2] 肢体不自由児の地域小学校就学支援における実態調査

廣瀬賢明, 久保田珠美, 野田智美, 那須賢一 (大分療育センター)

Keywords:肢体不自由児, 地域小学校就学, アンケート調査

【はじめに,目的】

近年,障がいのある児童の就学については,合理的配慮の提供が推進されている。平成26年度の文部科学省による報告では,地域小学校へ通う肢体不自由のある児童の在籍者数は,肢体不自由特別支援学級886人,通常学級383人であり,年々増加傾向にあるとされる。今回,地域小学校に通う肢体不自由児の環境調整や今後の支援体制を再考するため,就学準備や学校設備の環境調整等の実態調査を行い,現状と課題について検討する。

【方法】

対象は,当センターに通院し,地域小学校に就学した経験をもつ肢体不自由児の保護者の内,調査の同意が得られた30名(男性15名,女性15名,平均年齢13.2±4.12歳)にアンケート調査を実施した。調査内容は,1)就学前準備,2)施設改修等の環境調整,3)訪問支援事業での支援内容とした。対象児の疾患内訳は,脳性まひ25名,先天性多発性奇形症候群1名,脊髄性筋萎縮症1名,二分脊椎2名,脳症後遺症1名。移動手段は,①独歩18名,②杖又は歩行器歩行7名,③車いす又は電動車いす自走3名,④車いす介助2名。尚,①を独歩群18名,②・③・④を合わせて杖・車いす群12名として分析した。

【結果】

1)就学前準備は,杖・車いす群の方が独歩群に対し,開始時期が早かった(χ2検定,p<0.05)が,学校との連絡調整の回数は両群間に差は認めず,2回以上が87%であった。2)施設改修等の環境調整は,66.7%(独歩群9名,杖・車いす群11名)で行われ,杖・車いす群の方が有意に高かった(χ2検定,p<0.05)。独歩群の内容(複数回答)は,手すりの設置7名,洋式トイレへの変更4名等であった。杖・車いす群では,段差解消7名,トイレにベッド等の設置5名,机・椅子の改良4名,階段昇降機の導入3名等,多様であった。3)理学療法士が学校へ訪問した事例は,50.0%(独歩群6名,杖・車いす群9名)であり,杖・車いす群で多かった(χ2検定,p<0.05)。介入内容(複数回答)は,運動機能状況の説明と関わり方8名,学習面の配慮9名,ADL動作の配慮8名,体育の参加方法6名,階段等の対応8名,トイレスペースの確認と配慮7名であった。また,訪問支援事業未利用の15名中7名(独歩群6名,杖・車いす群1名)も,学習面の配慮事項,体育の参加方法等の助言を求めていた。

【結論】

肢体不自由児の地域小学校への就学準備において,学校との連絡調整や施設改修等は保護者主体で行われることも少なくない。今回のアンケート調査より,設備面だけでなく,専門的な立場からの運動機能に合わせた関わりや学習場面での配慮等,子どもの特性を理解してもらう援助が必要とされていることが分かる。地域小学校への就学にあたっては,相談時期,施設面・学習面での対応等を予測,把握し,保護者や教育機関と情報共有することでスムーズな就学支援を提供できると考える。また,今回は移動手段別に検討を行ったが,認知面との関係性も十分に加味して進めていく必要がある。