第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本小児理学療法学会 一般演題ポスター
小児P04

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-SN-04-3] 神奈川県立特別支援学校における知的障害教育部門への理学療法士の関わり

島田蕗1, 小玉美津子2, 篠宮光子3, 本杉直子4, 鶴見隆正5 (1.神奈川県立鎌倉養護学校, 2.神奈川県立麻生養護学校, 3.神奈川県立金沢養護学校, 4.神奈川県立中原養護学校, 5.湘南医療大学理学療法学専攻)

キーワード:特別支援学校, 知的障害, 協働

【はじめに,目的】神奈川県立特別支援学校には2015年現在,8名の理学療法士(以下PT)が肢体不自由教育部門・知的障害教育部門が併設されている学校に勤務している。知的障害教育部門の中には運動発達の遅れ,運動の不得意さ,姿勢保持の苦手さ等を持つ児童生徒が多数在籍しているが,身体・運動機能面について医療,療育機関でフォローされている児童生徒は少ない。加えて,発達性協調運動障害や筋緊張が低い等の背景があるものの,教員の視点は「やる気がない」と気持ちの問題が課題となり,身体・運動機能面への課題に着目されにくい状況がある。そこで知的障害教育部門の児童生徒の運動特性やその背景を的確に把握し,実態に応じた支援を行うため,PTと教員との協働について検討を重ね,3校の特別支援学校において実践できたので,以下に報告する。


【方法】2014年4月より年3回,計6回知的障害教育部門へのPTの関わりについて協議,支援方法の情報共有を行った。それらをもとに各校の実態に応じ,教員との協働に取り組んだ。


【結果】A校高等部にて,「姿勢について」の授業をPTが行った。①必要に応じて姿勢調整できる意識を持つこと,②姿勢が社会的なメッセージを持つことを理解し,良い姿勢の意義を知ることを目的に,「様々な椅子に座る」「滑らない椅子を自分で作る」「人の姿勢を見て感じたことを話し合う」等を実施した。授業ではクラス共通の目標を設定し,生徒が積極的に取り組み自己理解を促すことができ,担当教員も姿勢保持の難しさの背景と環境調整の必要性の理解を図れた。

B校小学部にて,担任による運動発達チェックリストの実施と,PTが授業「朝の運動」に参加することを提案した。運動発達チェックリストから読み取れる児童の運動特性と,授業の目的を担当教員とPTで情報共有しながら授業内容を考えた。PTと教員の視点の共有化により,学習指導要領における体育科と自立活動の内容と個々の発達段階を結び付けた指導内容の実践に繋がった。

C校高等部にて,PTと体育教員により新体力テストと任意で作成した運動テストを実施した。結果より,「ストレッチグループ」「姿勢グループ」「バランスグループ」「フットワークグループ」に分け,毎朝30分行われる「からだ作り」の授業で週1回,各グループに応じた運動を担当教員とPTで実践している。テスト結果より課題となる運動について個々に分析し,支援がなされている。

【結論】知的障害教育部門にも,身体・運動面についての支援を必要とする児童生徒が在籍している。特別支援学校に勤務するPTと教員の協働による視点の共有化により,身体・運動機能の実態やその背景を的確に把握し,個々に応じたきめ細かい支援の手がかりとなった。これらの実践をもとに,知的障害教育部門における身体・運動アセスメント表の検討・作成を進めている。