[P-SN-05-5] 脳性麻痺者における前方及び後方支持型歩行器使用時のエネルギー効率と運動機能の関連性の検討
キーワード:脳性麻痺, エネルギー消費量, 歩行器
【はじめに,目的】
歩行の安定性を与えるために提供される歩行器には,前方支持型歩行器(以下:前方型)と後方支持型歩行器(以下:後方型)があるが,脳性麻痺リハビリテーションガイドラインでは,脳性麻痺(以下:CP)児者は後方型の方が歩行中の体幹や下肢の伸展を高め,エネルギー消費量を減ずるとして推奨されている。しかし先行研究では12歳以下のCP児にとって後方型が効果があるとされているが,青年期以降では検証されているものは見つけられなかった。そこで本研究では,二次障害が進行し運動機能面でも低下しやすい青年期以降を対象として前方型と後方型それぞれの使用時の歩行のエネルギー消費量を比較し,粗大運動能力との関係を明らかにしたいと考えた。
【方法】
対象は12歳以上のCP者5名とした(男性3名,女性2名 年齢29.8±5.2歳 粗大運動機能分類システム(以下:GMFCS)IIIlevel)。呼気ガス分析装置(COSMED社製K4b2)を用いて,前方型及び後方型使用時の6分間歩行及び前後4分間の安静状態における各種呼気ガス指標を計測した。なお,計測前には,前方型及び後方型での歩行練習期間を設けた。また,歩行姿勢をビデオカメラで撮影し,画像解析ソフト(ImageJ)にて,初期接地(以下:IC),荷重応答期(以下:LR),立脚中期(以下:MSt),立脚後期(以下:TSt)における体幹,股関節,膝関節,足関節の屈曲角度を算出した。運動機能の評価として粗大運動能力尺度(以下:GMFM)を評価した。統計学的手法には,呼気ガス指標とGMFMの関連性にはspearmanの順位相関係数を用い,各歩行周期における関節角度の比較にはWillcoxon符号付順位和検定を用いた。なお,危険率は5%未満とした。
【結果】
GMFMの四つ這い・膝立ち項目と後方型使用時のVO2/kgの相関は相関係数r=-0.949,寄与率r2=0.901で,有意な負の相関(P<0.05)を認めた。前方型と後方型使用時の各歩行周期の各関節角度を比較した結果,後方型使用時のIC,LR,MSt,TStの股関節屈曲角度,MStの体幹屈曲角度が有意に少なかった(P<0.05)。
【結論】
後方型においてGMFMの四つ這い・膝立ち機能が良好なほど歩行時のエネルギー消費量が少なく,効率的な運動であった。歩行姿勢においても後方型使用時の方が体幹,股関節の伸展を高める傾向にあり先行研究と一致した。GMFMの四つ這い・膝立ち項目は下肢の運動を伴う姿勢変換・移動課題が多いため,歩行時のエネルギー効率と強い関連性を持つことが示唆された。このことから青年期以降のCP者においては四つ這い・膝立ち能力を評価・治療していくことが歩行のエネルギー効率を評価・改善していく上で重要であることが示唆された。今回は5名のみの結果となったが,今後は症例数を増やし検討していきたい。
歩行の安定性を与えるために提供される歩行器には,前方支持型歩行器(以下:前方型)と後方支持型歩行器(以下:後方型)があるが,脳性麻痺リハビリテーションガイドラインでは,脳性麻痺(以下:CP)児者は後方型の方が歩行中の体幹や下肢の伸展を高め,エネルギー消費量を減ずるとして推奨されている。しかし先行研究では12歳以下のCP児にとって後方型が効果があるとされているが,青年期以降では検証されているものは見つけられなかった。そこで本研究では,二次障害が進行し運動機能面でも低下しやすい青年期以降を対象として前方型と後方型それぞれの使用時の歩行のエネルギー消費量を比較し,粗大運動能力との関係を明らかにしたいと考えた。
【方法】
対象は12歳以上のCP者5名とした(男性3名,女性2名 年齢29.8±5.2歳 粗大運動機能分類システム(以下:GMFCS)IIIlevel)。呼気ガス分析装置(COSMED社製K4b2)を用いて,前方型及び後方型使用時の6分間歩行及び前後4分間の安静状態における各種呼気ガス指標を計測した。なお,計測前には,前方型及び後方型での歩行練習期間を設けた。また,歩行姿勢をビデオカメラで撮影し,画像解析ソフト(ImageJ)にて,初期接地(以下:IC),荷重応答期(以下:LR),立脚中期(以下:MSt),立脚後期(以下:TSt)における体幹,股関節,膝関節,足関節の屈曲角度を算出した。運動機能の評価として粗大運動能力尺度(以下:GMFM)を評価した。統計学的手法には,呼気ガス指標とGMFMの関連性にはspearmanの順位相関係数を用い,各歩行周期における関節角度の比較にはWillcoxon符号付順位和検定を用いた。なお,危険率は5%未満とした。
【結果】
GMFMの四つ這い・膝立ち項目と後方型使用時のVO2/kgの相関は相関係数r=-0.949,寄与率r2=0.901で,有意な負の相関(P<0.05)を認めた。前方型と後方型使用時の各歩行周期の各関節角度を比較した結果,後方型使用時のIC,LR,MSt,TStの股関節屈曲角度,MStの体幹屈曲角度が有意に少なかった(P<0.05)。
【結論】
後方型においてGMFMの四つ這い・膝立ち機能が良好なほど歩行時のエネルギー消費量が少なく,効率的な運動であった。歩行姿勢においても後方型使用時の方が体幹,股関節の伸展を高める傾向にあり先行研究と一致した。GMFMの四つ這い・膝立ち項目は下肢の運動を伴う姿勢変換・移動課題が多いため,歩行時のエネルギー効率と強い関連性を持つことが示唆された。このことから青年期以降のCP者においては四つ這い・膝立ち能力を評価・治療していくことが歩行のエネルギー効率を評価・改善していく上で重要であることが示唆された。今回は5名のみの結果となったが,今後は症例数を増やし検討していきたい。