[P-SP-04-5] ハムストリングスの柔軟性がSit and reachテスト時の骨盤傾斜および脊柱可動性に与える影響
キーワード:ハムストリングス, 脊柱, 骨盤傾斜角
【はじめに,目的】
腰痛は日本人の約12%で罹患している(Yoshimura, 2014)。腰痛発生への関連因子として,ハムストリングス短縮(Adams,1999),骨盤傾斜の増加(Min,2013),腹筋群筋力低下(Nourbakhsh, 2002)などが挙げられている。一方腰痛患者を対象とした研究では,腰椎可動性の減少を示した報告はあるものの,ハムストリングス柔軟性や骨盤傾斜角度との関連性はまだ調べられていない。本研究は,ハムストリングス柔軟性の違いがSit and reachテスト時における骨盤傾斜および脊柱可動性へ与える影響を検討した。
【方法】
対象は,腰背部および下肢に整形外科的・神経学的疾患のない健常若年男性30名(年齢21.8±2.0歳,身長172.5±5.3cm)とした。ハムストリングス柔軟性はStraight leg raise(SLR)で調べ,被験者をLow SLR群(LS群)とHigh SLR群(HS群)に分けた。Sit and reachテストは,長座体前屈測定器(TOEILIGHT製)を用いて最大到達距離を測定した。胸椎・腰椎可動性と骨盤傾斜は,反射マーカーを第1胸椎棘突起(Th1),第1腰椎棘突起(L1),第1仙椎棘突起(S1),上前腸骨棘(ASIS),上後腸骨棘(PSIS)に貼付し(Vismarara,2010),デジタルカメラ(OLYMPUSμ-7020)で開始肢位と最大前屈位を撮影後,解析ソフトウェアImage J(NIH製)にて各角度を計測した。胸椎角はTh1-L1とL1-S1,腰椎角はL1-S1とASIS-PSIS,骨盤傾斜をASIS-PSISと水平線のそれぞれ成す角と定義し,開始肢位と最大前屈位での変化量を算出した。統計処理にはLeveneの検定を用い,胸椎・腰椎角および骨盤傾斜変化量の群間差を検討した。有意水準はp<0.05とした。
【結果】
SLR値は,LS群57.9±3.6°,HS群80.9±7.0°と両群間で差を認めた(p<0.001)。Sit and reachテスト時の腰椎角変化量は,LS群8.5±2.9°,HS群17.5±6.0°,骨盤傾斜変化量については,LS群11.9±4.4°,HS群20.2±4.2°と,HS群で有意に増大していた(ともにp<0.001)。胸椎角変化量については,LS群26.9±16.0°,HS群20.7±5.9°と差は認められなかった(p=0.168)。
【結論】
本研究結果より,ハムストリングス柔軟性とSit and reachテスト時における腰椎角および骨盤傾斜変化量で関係性が示された。一方で,胸椎角においては関係性を認めなかった。前屈動作時の脊柱可動性や骨盤傾斜評価の際には,ハムストリングス柔軟性に影響を受ける可能性を示唆する結果であった。
腰痛は日本人の約12%で罹患している(Yoshimura, 2014)。腰痛発生への関連因子として,ハムストリングス短縮(Adams,1999),骨盤傾斜の増加(Min,2013),腹筋群筋力低下(Nourbakhsh, 2002)などが挙げられている。一方腰痛患者を対象とした研究では,腰椎可動性の減少を示した報告はあるものの,ハムストリングス柔軟性や骨盤傾斜角度との関連性はまだ調べられていない。本研究は,ハムストリングス柔軟性の違いがSit and reachテスト時における骨盤傾斜および脊柱可動性へ与える影響を検討した。
【方法】
対象は,腰背部および下肢に整形外科的・神経学的疾患のない健常若年男性30名(年齢21.8±2.0歳,身長172.5±5.3cm)とした。ハムストリングス柔軟性はStraight leg raise(SLR)で調べ,被験者をLow SLR群(LS群)とHigh SLR群(HS群)に分けた。Sit and reachテストは,長座体前屈測定器(TOEILIGHT製)を用いて最大到達距離を測定した。胸椎・腰椎可動性と骨盤傾斜は,反射マーカーを第1胸椎棘突起(Th1),第1腰椎棘突起(L1),第1仙椎棘突起(S1),上前腸骨棘(ASIS),上後腸骨棘(PSIS)に貼付し(Vismarara,2010),デジタルカメラ(OLYMPUSμ-7020)で開始肢位と最大前屈位を撮影後,解析ソフトウェアImage J(NIH製)にて各角度を計測した。胸椎角はTh1-L1とL1-S1,腰椎角はL1-S1とASIS-PSIS,骨盤傾斜をASIS-PSISと水平線のそれぞれ成す角と定義し,開始肢位と最大前屈位での変化量を算出した。統計処理にはLeveneの検定を用い,胸椎・腰椎角および骨盤傾斜変化量の群間差を検討した。有意水準はp<0.05とした。
【結果】
SLR値は,LS群57.9±3.6°,HS群80.9±7.0°と両群間で差を認めた(p<0.001)。Sit and reachテスト時の腰椎角変化量は,LS群8.5±2.9°,HS群17.5±6.0°,骨盤傾斜変化量については,LS群11.9±4.4°,HS群20.2±4.2°と,HS群で有意に増大していた(ともにp<0.001)。胸椎角変化量については,LS群26.9±16.0°,HS群20.7±5.9°と差は認められなかった(p=0.168)。
【結論】
本研究結果より,ハムストリングス柔軟性とSit and reachテスト時における腰椎角および骨盤傾斜変化量で関係性が示された。一方で,胸椎角においては関係性を認めなかった。前屈動作時の脊柱可動性や骨盤傾斜評価の際には,ハムストリングス柔軟性に影響を受ける可能性を示唆する結果であった。