第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP05

2016年5月28日(土) 10:30 〜 11:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-05-2] 実業団女子ハンドボール選手の着地時の運動学的特性

シュート方向による比較

樋口武史1 (1.光仁会木島病院, 2.金城大学大学院リハビリテーション学研究科, 3.金城大学社会福祉学部, 4.金城大学医療健康学部理学療法学科)

キーワード:ACL, 着地動作, 下肢関節運動

【はじめに,目的】

ハンドボール競技はフィジカルコンタクトの激しいスポーツであり,前十字靭帯(ACL)損傷発生率が高い。中でも非接触型ACL損傷はシュート後の着地動作時に多く発生しており,着地動作時の運動学的特性がACL損傷に関連していることが考えられる。競技中はシュートする方向によって着地時の運動学的特性が変化することが予測されるが,シュート方向の違いによって着地時の下肢関節角度がどのように変化するか検討したものは見当たらない。本研究では,実業団女子ハンドボール選手を対象とし,シュート方向の違いが着地時の下肢関節の運動に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は実業団ハンドボールチームに所属する女性選手15名(年齢24.4±2.4歳,右利き14名,左利き1名)であった。動作解析には3次元動作解析装置と床反力計用いた。運動課題として,ゴールより12mの位置から3歩ステップを踏み,9mラインにて非投球足で踏み切りジャンプ-シュートをし,8mの位置に設置された床反力計の上に非投球足で着地した。シュートする方向は利き手側45°(D条件),中央(C条件),非利き手側45°(N条件)の3条件とした。数回の練習の後,各条件2回ずつ施行した。計測区間は,ジャンプ後非投球側の踵マーカーの最高位時点から爪先が接地するまでの着地準備相と,爪先の接地時刻から床反力が最大となるまでの緩衝相の2相に分け,各相の股関節,膝関節,足関節の運動範囲を求めた。統計学的検討として,正規性が認められれば多重比較検定としてTukey検定,正規性が認められなければScheffe検定を用い,垂直方向の最大床反力,2相における各関節の運動範囲を3条件間で比較した。すべて5%水準にて有意判定を行った。

【結果】

着地準備相では,N条件でのシュートはD条件に比べて,股関節屈曲(p<0.0001),足関節背屈(p<0.05)方向への運動範囲が有意に小さかった。緩衝相では,N条件はD条件に比べて,足関節背屈(p<0.01)が大きく,膝関節内反(p<0.001)方向への運動範囲が小さかった。さらに,C条件と比べても,N条件では膝関節内反(p<0.001)方向への運動範囲が小さかった。

【結論】

本結果から,D条件と比べて,N条件では着地準備相で股関節屈曲,足関節背屈方向への運動が小さく,緩衝相で足関節背屈方向への運動が大きい結果となった。この結果から,N条件では爪先接地までの間に緩衝準備の動作制御を取りづらく,最大床反力を迎える緩衝相になって足関節優位の制御が起こる特性が確認された。本結果では最大床反力に差は認められなかったが,足関節は股関節,膝関節による緩衝を補助するものであり,N条件はD条件よりも緩衝作用が弱いものと推察される。また,緩衝相において,N条件は膝内反方向への運動が他2条件よりも小さかったことから,非利き手側からのシュートは膝関節に負担の大きい方向であることが示唆された。