[P-SP-06-4] ACL再損傷症例における基本的動作課題時の骨盤動態について
予防的側面から
キーワード:ACL再損傷, 骨盤動態, 姿勢制御
【はじめに,目的】
ACL術後のスポーツ復帰には筋力測定やパフォーマンステストが指標とされることが多いが,近年では姿勢制御における体幹のコントロールが注目されている。
ACL損傷危険率は180°の切り替え動作時における,体幹外側偏倚と膝関節最大外転角度と相関があり(馬越,2014),体幹の不安定性と膝関節の傷害との関係も三次元動作解析によって解明されてきている。
今回は,ACL再損傷に至った患者の筋力と姿勢制御課題における骨盤の動態について考察し,スポーツ復帰において筋力測定やパフォーマンステストだけではなく,姿勢制御能力の重要性を再認識したため報告する。
【方法】
術後5ヵ月半をA期(大腿四頭筋筋力健側比67%),6ヵ月半をB期(大腿四頭筋筋力健側比95%以上)とした。評価項目は大腿四頭筋・ハムストリングの筋力測定(等張性筋力測定装置はBIODEX,等尺性筋力測定装置はBTE社製総合筋力評価システムPRUIMUS RS)。姿勢制御課題として骨盤の矢状面上での制御が主となる「スクワット課題」,骨盤の3平面上での制御が必要となる「エアプレーン課題」における骨盤動態を三次元動作解析機(VICON社製3次元動作解析装置VICON。反射マーカーはPlug-in-gaitに則って両側の上前腸骨棘,上後腸骨棘,大腿骨と上前腸骨棘を結ぶ線の遠位3分の1,膝関節・脛骨・外果・踵・第二中足骨頭の16か所に取り付けた。計測周波数は120Hz,CCDカメラは5mの4方に7台設置)にて分析した。
以上より,ACL再損傷に至った患者の大腿四頭筋の筋力改善前・後における姿勢制御課題中の骨盤動態を比較検討した。
【結果】
A期(大腿四頭筋筋力健側比67%)では,「スクワット課題」において患側の骨盤の下制・後方回旋の代償動作がみられた。「エアプレーン課題」では骨盤の前傾不足・前額面での微細な動揺がみられた。B期(大腿四頭筋筋力健側比95%以上)では,「スクワット課題」おいて骨盤の偏倚は消失した。「エアプレーン課題」では骨盤の前傾不足・前額面での微細な動揺は残存していた。
【結論】
スクワット課題」ではA期において前額面・水平面上での代償動作がみられたが,大腿四頭筋筋力の健側比が95%以上となったB期においては,「スクワット課題」の代償動作が消失した。
「エアプレーン課題」では大腿四頭筋の筋力が改善したB期においてもA期と同様に骨盤の前傾不足・前額面上での微細な同様が残存しており,筋力改善のみでは3平面上で骨盤を制御することが困難であった。
術後7ヵ月後に段階的に競技復帰となったが,ディフェンス時の左側への切り替え動作時に再損傷に至った。
このことから,ACL再損傷と骨盤動揺性の関係性は明らかにできてはいない。しかし,基本的動作課題中に3平面上で骨盤をコントロールすることは再損傷の予防的観点から再考する必要があるといえる。
ACL術後のスポーツ復帰には筋力測定やパフォーマンステストが指標とされることが多いが,近年では姿勢制御における体幹のコントロールが注目されている。
ACL損傷危険率は180°の切り替え動作時における,体幹外側偏倚と膝関節最大外転角度と相関があり(馬越,2014),体幹の不安定性と膝関節の傷害との関係も三次元動作解析によって解明されてきている。
今回は,ACL再損傷に至った患者の筋力と姿勢制御課題における骨盤の動態について考察し,スポーツ復帰において筋力測定やパフォーマンステストだけではなく,姿勢制御能力の重要性を再認識したため報告する。
【方法】
術後5ヵ月半をA期(大腿四頭筋筋力健側比67%),6ヵ月半をB期(大腿四頭筋筋力健側比95%以上)とした。評価項目は大腿四頭筋・ハムストリングの筋力測定(等張性筋力測定装置はBIODEX,等尺性筋力測定装置はBTE社製総合筋力評価システムPRUIMUS RS)。姿勢制御課題として骨盤の矢状面上での制御が主となる「スクワット課題」,骨盤の3平面上での制御が必要となる「エアプレーン課題」における骨盤動態を三次元動作解析機(VICON社製3次元動作解析装置VICON。反射マーカーはPlug-in-gaitに則って両側の上前腸骨棘,上後腸骨棘,大腿骨と上前腸骨棘を結ぶ線の遠位3分の1,膝関節・脛骨・外果・踵・第二中足骨頭の16か所に取り付けた。計測周波数は120Hz,CCDカメラは5mの4方に7台設置)にて分析した。
以上より,ACL再損傷に至った患者の大腿四頭筋の筋力改善前・後における姿勢制御課題中の骨盤動態を比較検討した。
【結果】
A期(大腿四頭筋筋力健側比67%)では,「スクワット課題」において患側の骨盤の下制・後方回旋の代償動作がみられた。「エアプレーン課題」では骨盤の前傾不足・前額面での微細な動揺がみられた。B期(大腿四頭筋筋力健側比95%以上)では,「スクワット課題」おいて骨盤の偏倚は消失した。「エアプレーン課題」では骨盤の前傾不足・前額面での微細な動揺は残存していた。
【結論】
スクワット課題」ではA期において前額面・水平面上での代償動作がみられたが,大腿四頭筋筋力の健側比が95%以上となったB期においては,「スクワット課題」の代償動作が消失した。
「エアプレーン課題」では大腿四頭筋の筋力が改善したB期においてもA期と同様に骨盤の前傾不足・前額面上での微細な同様が残存しており,筋力改善のみでは3平面上で骨盤を制御することが困難であった。
術後7ヵ月後に段階的に競技復帰となったが,ディフェンス時の左側への切り替え動作時に再損傷に至った。
このことから,ACL再損傷と骨盤動揺性の関係性は明らかにできてはいない。しかし,基本的動作課題中に3平面上で骨盤をコントロールすることは再損傷の予防的観点から再考する必要があるといえる。